中編小説「クリスマスの朝、私たちは雪解けを見る」のご紹介
あらすじ
クリスマス・ページェントを控えた高校生の女子が、付き合っている男子とかみ合わないことを感じていたある日、学校で入れ替わりの噂を耳にします。
運命の彼と入れ替わりたい。
そう思っていた彼女でしたが、思いもよらぬことが待ち受けていました。冬の中編です。
高校生の女子が主人公なので、書くのに苦労した覚えがあります。
拙い点もあるかと思いますが、冒頭をご覧いただけると嬉しいです。
(※この作品を含めて、私個人のサイトで全文ご覧いただけます。この記事では、冒頭だけを抜粋していますので、もしご興味を持っていただけましたら、どうぞお立ち寄りください)
【ここからが冒頭です】
「クリスマスの朝、私たちは雪解けを見る」
一
初めてのデートの帰りに、河川敷を二人で歩く。
映画を観に行ったあと、カフェでお茶をした帰り。
川瀬莉奈は先週から付き合い始めた彼、宮嶋とは歩幅が合わなくても、跳ねるように歩いていた。
今日のコーデは、淡色ブラウンのワントーン・チェック柄のワンピース。ロング丈で、秋の肌見せしない女性を演出したつもり。
でも宮嶋は完全にスルー。なんの変化にも気づいていないようだった。どういうこと?
向かい風で吐息が流れていき、まだコーヒーの香りがかすかに鼻をくすぐってくる。
「ねぇ、映画面白かったね。宮嶋はどうだった?」
映画を観に行くのは、莉奈から誘ってみた。
高校生からの人気沸騰中、そんな若手の俳優二人が主演で、男女が入れ替わるというストーリーの映画だった。
「……まぁまぁ。それなりに」
宮嶋はいつものことながら、そっけなかった。
莉奈から告白して付き合い始めたばかりだけれど、周りがお似合いだと囃し立てるものだから、空気を読んで合わせてくれただけなのかもしれない。
川の水面が傾いていく日の光を反射して、思わず目を閉じる。
この一方だけに流れる川みたいに、宮嶋も流れには逆らわないようにしているのが、だんだんとわかってきた。
宮嶋の伸びる影は、莉奈のそれよりはるかに長く、黄金色の落ち葉に弱い光を落としている。
莉奈は秋の深まりを感じ、さざ波のような寂しさが押し寄せてきた。
「十一月も、半分すぎちゃったかぁ」
「そうだな。文化祭も先週終わったし」
見上げると顔は相変わらず整っているけれど、表情は硬い。
水分(みくまり)川のせせらぎだけが聞こえてきて、莉奈はその沈黙をからげんきで破った。
「次はどこ行く? また映画でもいいし、水族館とかでもいいよね」
「俺はどこでもいい。川瀬に合わせる」
宮嶋はそっけなくても合わせてくれるし、遠回りになっても家の近くまで送ってくれる。
莉奈のためというよりは、彼氏としてそうした方がいいからだと思っているのだとしても、まだ別れたくはなかった。
気を引こうと、また話しかける。
「もし宮嶋と私の心だけが入れ替わったら、してみたいことってある?」
「え? 考えたことなかったな。さっき観た映画は、そういう話だったけど」
「そうそう、今日観た映画みたいに。私は思いきっきり走ってみたいけど、速すぎてびっくりしちゃいそう」
「俺は……特にない。ナンパされるのは勘弁、くらいか」
合わない目線は、どこを見ているのか。
宮嶋はやっぱり興味がないのだと思うと、聞こえないようにため息をついた。
よくナンパや告白をされてきた莉奈にとって、こんなにも脈がないと感じるのは初めてで、朝からどの服にしようかと悩んでいたことも、それを含めて心が弾んでいたことも、空回っていただけのように感じてきて、なんだかやるせないような、悔しいような気持ちに襲われる。
じんわりと目に浮かびそうになるものを遮るように、階段を上りきってから、莉奈は早足で宮嶋の前に出た。
「楽しかった~、今日はここでいいよ!」
「そうか? 川瀬がそう言うなら……」
「ありがと! また明日ね」
「おう、また明日」
そうして莉奈は、階段を上がった土手のすぐ傍にある源頭橋で、手を振って宮嶋と別れた。
橋を歩いていると、車道の向こうにあるもう片方の歩道で、見覚えのある誰かとすれ違った気がしたけれど、莉奈が気に留めることはなかった。
【ここまでが冒頭です】
読んでくださった皆様へ
冒頭をご覧いただき、ありがとうございました。
続きは以下のサイトから、すべてご覧いただけます。お時間のあるときに、どうぞお越しください。
【追記:2025年12月21日に新サイトへ移転したので、URLを差し替えました】
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