
連作短編小説「鈴の音が響くころ」のご紹介
あらすじ
夏休みに思い出の地へと戻った大学生の青年が、
鈴の音に導かれて、秘密基地にたどり着きます。
そして不思議な少女に出会い、
かつての小学生の頃の夢幻を見ながら、
忘れていた記憶を取り戻していく連作短編です。
初期の作品なので、
拙い点が目立つのですが、気に入っている作品です。
もしお時間があれば、
冒頭をご覧いただけると嬉しいです。
(※私個人のサイトで、全文ご覧いただけます。この記事では、冒頭だけを抜粋しています)
【ここからが冒頭です】
「鈴の音が響くころ」
一
木陰のブランコに座っている少女は、軽く揺らしながら地面に落ちている小石を蹴った。
蹴った石は何かにぶつかったのか跳ねて、軌道を変えて転がっていった。
転がった小石は少年の足元で止まり、気づいた彼は振り返って、辺りをきょろきょろと見渡している。
日向から木陰に入ってきた少年はブランコの方へ近づき、もう二人の目が合ってもおかしくない距離だった。
「──うわっ!び、びっくりした。ずっとそこにいたの?」
ようやく二人の目が合ったらしく、少年は目を見開いた。
彼女の長い前髪の間からのぞく瞳は、彼を見つめ返していた。
「かくれんぼしてたんだけど、この秘密基地に、あいつら以外の人がいるとは思わなくて。驚かせてごめん」
少年は手を差し伸べ、座り込んでいた彼女は指先を伸ばした。
「名前はなんていうの?」
名前を尋ねられた彼女は、考え込んでいるようだ。
しかし何かを思いついたのか、彼女は口を開いた。
「……シンヤ君、だよね?私の名前、当ててみてよ」
「えっ、そんなのわかるわけないだろ」
シンヤと呼ばれた少年は八の字の眉になり、彼女は長い黒髪を揺らしながら、顔を近づけてきた。
まつ毛の長さがわかるほどの距離に、シンヤは後ずさって頭をかいた。
「それじゃあ……レイネ」
当たるはずないよなと言って、シンヤは恥ずかしそうに頭をかき、彼女はその名前をつぶやいた。
「レイネ……」
彼女は頷いて、あっけに取られているシンヤの手を取り、引っ張っていった。
シンヤの背を押すように風が吹き、秘密基地にぶら下がっている風鈴が、チリンと鳴り響いた。
【ここまでが冒頭です】
読んでくださったあなたへ
冒頭をご覧いただき、
ありがとうございました。
幼かったあの頃が、楽しかった。
そんなあなたへ、特におすすめです。
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