
【新作】短編小説「残香」公開のお知らせ
あらすじ
感情を持った、
人型のパートナーAIが普及した近未来。
しかし、高校生の男子は、
拭えない不信感を持っていて……。
忘れられない記憶と、
葛藤を抱えている彼の選択を描いた、夏の短編です。
もし、お時間があれば、
冒頭をご覧いただけると幸いです。
(※私個人のサイトで全文ご覧いただけます。この記事では、冒頭だけを抜粋しています)
【ここからが冒頭です】
「残香」
一
俺は、溺れかけたことがある。だから、川なんか大嫌いだ。
ペンダントがなんとなく重たい気がして、俺は俯いた。
眼下にある真っ白な食卓に並んでいる朝食は、ライ麦パンのトーストや、低脂質のスクランブルエッグ、ミニトマトやブロッコリーなどの彩りサラダにヨーグルト。
栄養バランスは完璧なのだろうし、味に文句もなかった。
そんな朝食ではあるが、つくった本人である澪には必要がない。
なぜなら、澪はロボットだからだ。椅子は四人分あっても、俺以外は誰も座っていない。朝食を食べるのは、いつも一人きりだ。
静けさに満ちた広い部屋の中で、会話もないまま黙々と食べる。
横目でちらりと見ると、澪は立ったままこちらに視線を向けていた。
澪は水色の薄いカーディガンを羽織り、濃いネイビーのパンツを穿いていることに、今になって気づいた。
「どうかしましたか?」
「いや、なにも」
遠目から見れば人間と変わらない姿だが、この距離で顔を見ると、やはり人ではないことがよくわかる。
人工的なエラストマーの肌の下で、微弱な光が流れていく瞬間があって、表情の変化もどこかぎこちない。
昔はスマホというものがあったらしいが、それと同じように世界中に普及していったそうだ。
感情を持ったAIが搭載されているということで、人と変わらない会話をすることができる。
しかしAIに、心なんてあるのだろうか。普段はほとんど話しかけないから、澪とは最低限の会話しかない。
とはいえ、時代の波には逆らえない。
今は心を持っているらしいAIのロボットと、二人三脚で生きていかないといけない時代なのだ。
「賢太さん、早くしないと遅れてしまいますよ」
「わかってるって。ごちそうさまでした」
トーストの最後の一口を放り込んでから、澪にそう返した。
俺は目を合わせずに、金属製の扉をゆっくりと開けた。
広い道路の真ん中を、自動運転の車が通り過ぎていき、小さな水たまりを揺らした。
【ここまでが冒頭です】
読んでくださった、あなたへ
冒頭を読んでくださって、
ありがとうございました。
この短編は、突きつめた結果、
今までの作品とは雰囲気が違います。
過去作を好きになってくださった方には、
あまり合わないかもしれません。
普段より、暗めではあるのですが、
それでもよろしければ、お立ち寄りいただけると幸いです。
続きは、下記のサイトから、
すべてご覧いただけます。
お時間のあるときに、
どうぞお越しください。