メインコンテンツへスキップ
見出し画像

ヤンヤン誘拐事件 第18話 何とか

     
    バカだったと、心の底から思う。こんなことになるとは思わなかった。
    でも、綾が傷つく可能性は、分かっていた。キリアンやゲオルグのような連中とつるんでいて、いつか罰を受けるのは、誰よりも分かっていながら、無視し、自分に嘘をついていた。
    シルバーン貴族を助ける為、なんてのはキリアンの言い訳でしかない。でも結果的に崔の言い訳にもなっていた。誘拐を企画したのはキリアン達で、人を殺したのは、東威の連中。でも、綾が撃たれたのは、全部、俺のせい。
    「綾は、どうなりましたか?」
    崔の問いに、看守は肩をすくめた。
    「知らねーよ」
    崔は独房の隅で跪いた。
    大人になって初めて、祈った。
    祈るという選択肢があることに気づいた。
    誰かから奪う前に、せめて祈ってみれば良かった。
    綾は祈ることすら出来ない。他に殺された人達も。ヤンヤンも、勿論。
    たかがパンダで、こんなことになるとは、本当に思わなかった。いや、そうは言い切れない。何かが起こることは、やっぱり、分かっていた。
    でも、これを何とか出来るなら、何でもするし、出来ると、心の底から思った。ここまで純粋な気持ちは、本当に初めてだった。懺悔とは、こういうことなんだと、理解した。
    「どうか、お願いです…」
    崔は額を床に擦り続けた。それに何かが返ってくることは一切なかった。世界は、急に、耐え難く静かで、不動だった。


    第19話 全く

     登場人物・地図

    #小説 #創作大賞2026  #警察 #アクション #犯罪 #パンダ #エンタメ原作部門

     
     
    なかなか寝付けない方、どうぞご覧ください。映画とアートと呟きの毎日です。 県立高校→ニュージーランドで映画学と中国語専攻→カナダでカメラマンとしてワーホリ→就労ビザ→現在ニュージーランドで映画制作準備中。 https://karoriproduction.com/

    あなたへのおすすめ