
ヤンヤン誘拐事件 第18話 何とか
バカだったと、心の底から思う。こんなことになるとは思わなかった。
でも、綾が傷つく可能性は、分かっていた。キリアンやゲオルグのような連中とつるんでいて、いつか罰を受けるのは、誰よりも分かっていながら、無視し、自分に嘘をついていた。
シルバーン貴族を助ける為、なんてのはキリアンの言い訳でしかない。でも結果的に崔の言い訳にもなっていた。誘拐を企画したのはキリアン達で、人を殺したのは、東威の連中。でも、綾が撃たれたのは、全部、俺のせい。
「綾は、どうなりましたか?」
崔の問いに、看守は肩をすくめた。
「知らねーよ」
崔は独房の隅で跪いた。
大人になって初めて、祈った。
祈るという選択肢があることに気づいた。
誰かから奪う前に、せめて祈ってみれば良かった。
綾は祈ることすら出来ない。他に殺された人達も。ヤンヤンも、勿論。
たかがパンダで、こんなことになるとは、本当に思わなかった。いや、そうは言い切れない。何かが起こることは、やっぱり、分かっていた。
でも、これを何とか出来るなら、何でもするし、出来ると、心の底から思った。ここまで純粋な気持ちは、本当に初めてだった。懺悔とは、こういうことなんだと、理解した。
「どうか、お願いです…」
崔は額を床に擦り続けた。それに何かが返ってくることは一切なかった。世界は、急に、耐え難く静かで、不動だった。