
ヤンヤン誘拐事件 第13話 唯袁
燃える家。
タイラーはアクセルを踏んだ。上空を通過する公安のヘリ。南から急行するバハイ警察。
家の前で、男達に銃を向ける、黒いロングコートの集団を見て、アンサングは拳銃を抜いた。
「そんなにパンダ見たい?」
「あれ、東威公安ですか?」
「おうよ。突っ込め。いつでも撃てるようにしとけ」
タイラーは唾を飲み込み、車のライトを消し、速度を上げた。
男達が振り向いた。彼らが銃を構える前に、タイラーはハンドルを切っていた。
男達の目前で砂利を蹴散らして車が停まった。車から降りながら、アンサングは銃を向けた。
「エサーグ警察だ! 全員、止まれ! 唯袁、動くな!」
唯袁の後で男が一人銃を上げた。その胸を、アンサングは撃ち抜いた。防弾ベストが凹み、男は倒れ呻いた。
「ここ、エサーグだぞ。何してんだ、お前ら?」
唯袁はリボルバーを青年に向けたまま、答えない。アンサングの背後でタイラーがアサルトライフルを構え、警官隊のサイレンは近づく。ヘリの照明が唯袁達を真っ白に照らし出す。
アンサングは銃を唯袁の胸に向けた。
「一回下がったらどうだ? ヤンヤン見つけたら連絡してやるから」
「やけに弱気だな」
「ここでやってもいいけど。パンダ見たいだろ? 俺も見たいんだよ。人気だから」
唯袁はリボルバーを下ろした。アンサングも銃を下げた。すーっと、彼ら東威公安達は燃え盛る炎の影に消えていく。
「待ておらああ!」
ゲオルグが立ち上がった。肩を押えながら、影に消えた公安を追おうとした。
その襟首を掴み、足首を払う。
「ぐえ!」
転がる巨体の腹に膝を落とし、アンサングは銃を収めた。
「まあ落ち着け」
警官達が到着した。処刑寸前だったキリアンの男達は安堵のため息を漏らした。実際に漏らした者もいた。
「命拾いしたな。で、ヤンヤンはどこ?」
誰も答えなかった。アンサングを見つめる顔が、一つだけあった。東威人。青年。
「俺、知っています」
青年が立ち上がった。