
「完璧主義だった私が、“ほどよく続ける”を選んだ理由」
「ちゃんとやらなきゃ!」
そう思っていた頃の私は、いつもどこか疲れていました。
歯科衛生士として、正しい知識はあるつもりでいました。
だからこそ、「ちゃんとやること」が当たり前だと思っていました。
でもある時、その“当たり前”が、少しずつしんどくなっていったんです。
そんな私が変わったきっかけは、海外での生活でした。
仕事を辞めて心機一転、海外での生活は、想像していたよりもずっと自由で、そして不思議なものでした。
言葉は、やっぱり簡単には通じませんでした。でも、ジェスチャーで伝えたり、こちらの言葉をゆっくり待ってくれたり。
思っていたよりも、人は優しかったんです。
ただ、文化の違いには驚くこともありました。国によっては、特定の曜日が「崇拝の日」で、学校がお休みだったり。
そんな中で、今でも忘れられない出来事があります。コンビニに入ったときのことでした。店員さんは接客をしている様子もなく、入荷した商品を並べていました。
そこに、お客さんがお会計を済ませて、紙コップを持ってドリンクサーバーの前へ。でも、押したいボタンには「sold out」の張り紙。
店員さんに声をかけると、「今これやってるから、ちょっと待ってて。」そんなニュアンスのやり取りがあって、「他のでもいいじゃん?」といった空気に。
お客さんも少し首をかしげながら、別のドリンクを選んで、そのまま出ていきました。
その光景を見て、「あ、日本だったら絶対こんな対応しないな。」と思いました。同時に、「でも、これでも成り立つんだ。」とも思ったんです。
コンビニでの出来事だけじゃなく、別の場面でも、印象に残っていることがあります。
飲食店の駐車場でのことでした。何気なく地面を見ると、落ちていたのは爪楊枝ではなく、弓型のフロスでした。
日本でも、以前は爪楊枝が落ちているのを見かけることはありましたが、フロスが落ちている光景は初めてで、思わず驚きました。
そのとき、「ああ、こういうところにも違いが出るんだな。」と感じたんです。
海外では、日本のように保険診療が当たり前ではなく、治療には大きな費用がかかることも多いと聞いていました。
だからこそ、むし歯や歯周炎にならないように、日頃から予防する意識が自然と根付いているのかもしれない。
食べ物が詰まったらフロスを使う。それが特別なことではなく、当たり前の習慣になっている。
そんなふうに感じました。
海外での生活の中で、忘れられない出来事はもうひとつあります。
お会計のとき、慣れない現地の硬貨を数えながら、ゆっくりと支払いをしていたときのことでした。
ぴったりの金額で出せたとき、店員さんが「perfect!」と声をかけてくれました。
また別の日には、大きな紙幣で支払いをしたときに、「good job!」と笑顔で言われたこともありました。
ほんの一言でしたが、その言葉がとても嬉しくて、今でも覚えています。
日本のように、すべてがきっちりしているわけではないけれど。
少しくらい時間がかかっても、完璧じゃなくても、その過程を受け入れてくれる空気がありました。
ルーズに見える部分もあるけれど、それは決していい加減ということではなくて。
「それでも大丈夫だよ!」と言ってもらえているような、そんな安心感があったんです。
日本にいた頃の私は、「ちゃんとやること」が当たり前で、それができていないといけないような気がしていました。
でも、海外での経験を通して、「完璧じゃなくてもいい。ほどよく続けることの方が大切なんだ。」と感じました。
考え方も発想の転換次第では、ハッピーに変えられる。そう思いました。
日本に帰国して、親になって。
私の母は、むし歯で苦労した経験があったからか、素人ながらに、私や弟にはそんな思いをしなくていいように、口の中の環境を整えてくれていました。
だからこそ私は、子どもには「むし歯や歯周炎になってから治す」のではなく、「ならないように防ぐ」ことを、自然と身につけてほしいと思うようになりました。
「子どもはちゃんと親のことを見てるから。」
その言葉をヒントに、まずは見せることから始めました。
目で物を追うようになる頃から、「糸さん(フロス)やるねー!」と言いながら、自分がフロスをする姿を見せて、「次は歯みがきするねー!」と、また自分が歯みがきする姿も見せる。
もちろん、最初は反応なんてありません。それでも、毎日続けました。
洗面所まで連れて行くのが大変な時は、自分が子どものところへ行って、目の前でやる。そんな日もありました。
小さな歯が顔を出しはじめた頃からは、口の中に触れられることに少しずつ慣れてもらうことを意識して、ガーゼハンカチで拭くなど無理のない範囲で関わっていきました。
歯の萌出にあわせて、歯ブラシを取り入れながら、その日の様子に合わせて無理のない方法を選ぶようにしていました。
前歯だけの頃でも、食べ物がはさまっていれば、フロスを使用しながら、少しずつ習慣にしていきました。
そして、奥歯が生え始めた2歳頃。
正確には、4番目の乳歯(第一乳臼歯)が生えてきたタイミングで、本格的なケアを意識するようになりました。
それが、子ども用フロスのはじまりです。
5番目の第二乳臼歯が生えてくる前のこの時期に始めておかないと、4番目の奥歯がむし歯になりやすいからです。
ほとんどが、こちらからの一方通行でしたが、それでも続けました。
そして、忘れもしない2歳11ヶ月。
「自分でやるのー!」と、ドヤ顔で初めて1人でフロスができた瞬間。
鏡も見ずに、全ての歯と歯の間にフロスをするわが子に、私は目が点になり、
「すごーい!上手にできるねー!」と、たくさん褒めたのを覚えています。
ほんとにできるの?鏡もなしで?なんて内心思った、私を許してね。
それをきっかけに、少しずつ
自分でやる→仕上げをする、という流れができていきました。
3歳になる頃には、フロスは自然と習慣になっていました。
そして今、小学3年生になった現在も、フロスの種類は大人用に変わりましたが、毎日続ける習慣は変わっていません。
そして、習慣は歯みがきやフロスだけではありませんでした。
おやつについても、自然と意識するようになっていきました。
あめやグミ、ラムネなどは、数を決める。
お菓子と飲み物の組み合わせも気にする。
そんな小さな積み重ねを続けてきました。
今では本人が、「むし歯になるのは嫌だから。」と、チョコは1日3個までと決めたり、炭酸飲料を飲んだ日は甘いものを控えたり。
お母さんとの約束だから。ということもあるようですが、自分で考えながら選ぶようになっています。
完璧にやろうとしなくてもいい。
でも、少しずつでも続けることはできる。
海外での経験を通して気づいた「ほどよさ」は、こうして今、親子の習慣として形になっています。
むし歯や歯周炎になってから治すのではなく、ならないように防ぐこと。
それも、無理なく、自然に続けていくこと。
特別なことじゃなくて、毎日の中でできることの積み重ねなんだと思います。
「ちゃんとやらなきゃ!」に疲れてしまったときは、少し力を抜いてみてもいい。
それでも続けていれば、ちゃんと身についていく。
そしてその習慣は、いつか「当たり前」になっていく。
そんなふうに感じています。
こんな私と子どものセルフケアのあゆみについても、他の記事で少しずつ書いています。よければのぞいてみてください。