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心が動く時間は、もう意味がある。

    去年の12月、知人から完熟したすだちをいただきました。

    普段見かけるすだちは緑色なので、黄色く熟した姿を見るのは初めて。味もまろやかで、尖りがなく、ポン酢にぴったりでした。

    「完熟した果実なら、種も採りどきかもしれない。」

    そんなことを思い立ち、丸々とした種を三つ、ポットにまいてみました。

    芽が出たのは、確か2月に入ってから。

    「やっと出たーっ!」

    小さな双葉を見つけた日のことを、今でも覚えています。三つとも芽は出たのですが、その後、ちゃんと育ったのは一つだけでした。


    すだちは、どれくらいで実がなるものなのかな。
    育ち始めると、この先どうなっていくんだろう、と気になってきます。

    そう思って調べてみると、種から育てる実生の場合、実がなるまで10年、長ければ15年ほどかかることもあるそうです。


    そんな話を聞くと、

    「それなら、接ぎ木苗を買わないと意味がない。」

    と言われても、不思議ではありません。

    実際、収穫だけに目を向ければ、そのほうがずっと近道だと思います。


    でも私は、この苗を見ていると、
    どうしても「意味がない」とは思えないんです。

    毎日少しずつ大きくなる姿。
    個性的な葉っぱの形。
    新しい芽が伸びる速さ。
    出始めたばかりの、やわらかな棘。

    そんな小さな変化を見つけるたびに、

    「今日も元気だな〜。頑張ってるな〜。」

    と、毎朝つい見てしまう。ともに暮らす相棒のひとり。半年でここまで大きくなるんだと、その成長にも驚かされています。


    でも、もし「実がなること」だけが価値と思えば、実がなるまでの時間は、果てしなく遠い、意味のない旅になってしまうのかもしれません。


    毎日観察して、小さな変化を見つけ、成長にワクワクしているこの時間。私にとっては、これだけでも十分に価値があるように感じています。


    もしかしたら、植物だけではなく、
    私たちの暮らしも同じなのかもしれません。

    結果だけを見ていたら、「まだ何も起きていない」と思ってしまう時間にも、実は、小さな変化や楽しみがたくさん隠れています。

    誰かにとっては遠回りや無意味に見えることでも、自分の中にときめきが生まれているなら、それはもう、意味のない時間ではないはず。


    見ているものが、自分の世界を作っているのだから。

    自分にとって意味のある時間なら、それは大切にしていい。


    そんなことを、このすだちの苗が教えてくれている気がしています。



    もうひとつの景色 🌿
    結果だけではなく、そこへ向かう時間にも目を向けてみる。後日、一個の完熟トマトから、「今を味わう」ことを改めて教えてもらいました。


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    50代半ば。植物、本、絵葉書、ローカルなお話が好き。 自分が感じた「ん?」を、素通りしないで眺める日々。 ひとつ見方が増えるだけで、世界はもっとおもしろい。 *Amazonアソシエイト参加中

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