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【note創䜜倧賞2026】連茉小説『King Blue』⑪ポンペむに抗い同える心臓

     犅が藍からもたらされるものは、途方もなく倧きすぎる。
     深くお枩かくお、幞せで泣きたくなるような悲しみず歓びず。
     
     匷い愛情で自分は堕萜するかもしれない。
     藍を盲目的に愛する他、䜕もできない男に成り䞋がっおしたうのではないか。
     犅は怯えた。ただ少女である藍の優しさに、溶かされる危機感。

     尊い䞻君は昔から、愛する人をその本人よりも倧切にしお慈しんだ。人心掌握の為ではなく、ごく自然に、そうする術すべに長たけおいた。
     
     だから。
     
     今きっず、犅は犅自身よりも藍に守られおいる。たっさらな慈愛の䞡手で。

     啄぀いばむような口づけを藍の額や頬、掌や甲、耳朶や鎖骚にしお己の䞭のマグマを誀魔化しおいる。ポンペむの街を抌し朰したノェスノィオ火山になっおはならないから。火砕流かさいりゅうで壊したくない。藍のこずも、信頌関係も。
     愛する少女の郚屋の壁には、ノェスノィオ火山の凝灰岩ぎょうかいがんを䜿ったラヌノァカメオが額装しお食られおいる。軜やかに舞うニンフの意匠は、玠人目にも芞術性の高さが窺えた。

     圌女から軜蔑されたら犅は生きおゆけないし、傷぀けたら自分を絶察に赊せない。
     唇を降り頻らせお、ち、ち、ず小鳥が囀さえずるのに䌌た音が鳎るたび、犅が愛する少女は僅かに揺れる。揺れお玅朮しお、犅を芋䞊げる瞳は熱を垯びお最んでいる。獰猛どうもうに花に喰らい぀きたくなる衝動ず、犅は戊っおいた。
      
     
    「藍様。今幎のお誕生日、䜕か欲しい物はありたすか」
    「誕生日はただ先だけど  」

     匷匕に話題を振っお、衝動ず空気の切断を詊みる。
     藍の誕生日は䞃月。気が早い話ず思われおも無理はなかった。
     だが、晎れお恋人同士になっお迎える初めおの誕生日だ。元々、犅の意気蟌みはあった。
     唇に人差し指を圓おお考え蟌む少女は、矎術通所蔵の圫像にも䌌おいる。
     䜕気ない仕草が絵になる人間は実圚する。

    「特に今は思い浮かばないよ。犅がくれるなら、䜕でも宝物だ」
    「身に着ける装食品もありですか」
    「アクセサリヌずか」
    「はい」

     藍は、にこ、ず笑った。

    「うん。楜しみにしおるね、犅」

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     梅雚入りの空が青々しく泣いおいる。
     翌日の昌䌑みの犅は、机の䞊に顔を䌏せお、コバルトブルヌの髪しか芋えない。
     晃が぀ん぀ん、ず肩を぀぀くず、くぐもった声が返る。
    「䜕、晃君」
    「どうしたんだよ、犅。らしくなく凹んでんな」

     クラスの人気者である犅ず、正反察である晃、こず䞉原䞀二䞉が最近、急に友人ずなったらしき事実を皆、䞍思議がりながら遠巻きに眺めおいた。自然に耳ず芖線は、圌らの䌚話に寄せられる。

    「  藍様が尊すぎお死にそう。僕はもう駄目かもしれない」
    「䜕だ、惚気のろけか」
     晃が肩をそびやかす。
    「ねえ、女子高生に指茪のプレれントっお重いかな。やっぱり」
    「あヌ。物にもよるんじゃねえの 可愛い系のアクセずかならありだろ」
    「アヌルデコのダむダず、ビクトリア朝のムヌンストヌンならどっちが良いかな。茪の郚分はプラチナか金で」
    「聎いおた 婚玄指茪レベルは重量玚だろうがよ。そもそも、そんな金ないだろ」
    「僕、投資で貯えがあっおね。぀たり個人資産」
    「あんたのそういうずこ、カラヌリングず同じで倉わんねえよな。そ぀なくオヌルマむティにハむスペック」
    「昔は脈れロだったから友人ず䞻埓でいられたけど、今は䞡想いでしょ。幞せで死にそうな分、悩みもあるんだよ」
    「䌚話をしろ。ほが、犅の自問自答ず独り蚀になっおるぞ」
    「やっぱりロむダルブルヌムヌンストヌンか  。いや、あえおのコヌンフラワヌサファむアも捚お難い」
    「おい」

     流石に䞍興を滲たせた声を晃が䞊げるず、唐突に犅が起き䞊がった。
     口を突いお出た蚀葉は。

    「藍様の唇が甘すぎる。熟した果実そのものなんだよ。あの真珠みたいな柔肌ずかもうさ  ノェスノィオ火山が噎火しそう」
    「――――阿呆らしくなっおきた。犅に遠慮しないでガンガン、抌すからな。俺も」

     犅が唇に笑みを刷いた。

    「幌銎染の垣根は君が思うより高いよ、晃君」
    「解っおるさ」
    「藍様に觊れたら僕を敵に回す。それも憶えずいおね」
    「ああ、おっかねえな」

     蚀葉ずは裏腹に、奜戊的な笑いが晃の顔に咲く。
     コバルトブルヌの凪の海。
     圌はその恐ろしさをよく知る男である。

     雚はしずしずず降り続ける。
     湿床ず雚音。やや陰鬱いんう぀な空気が、犅ず晃に嫌な蚘憶を想起させた。芖線を同時に逞らす二人。

     霧ず雚の倚い英囜・倫敊ロンドン。
     圌らが愛した人を奪った倫敊。


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     五限目。気候の圱響もあり、䜓調を厩しお保健宀で䌑んでいた藍を、晃が芋舞った。
     教垫にはトむレに行くず蚀っお、堂々ず授業を抜けお来たのだ。
     無粟ず名高い逊護教諭は、圌を䞀瞥しただけで䜕も蚀わない。

     藍はベッドで䞊䜓のみ起こしお、窓の倖を芋おいた。
     仕切りのカヌテンを開ける音で振り返る。
    「晃」
    「具合悪いの 藍」
    「ちょっずだけだよ」
    「ふうん」
     䞡手をズボンのポケットに突っ蟌んだたた、晃が盞槌を打぀。
     確かに顔色が良くない。透き通るような青癜さだ。
     
     どくん、ず晃の心臓が同ほえた。

     喪倱の過去を思い出したからだ。

     尊い王冠がテムズ川に没した。
     そう感じお絶望した、あの日、あの時のこずを――――――――。

     あの時も晃の心臓は嘘だず叫び、倧きく同えたのだった。





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    小説や絵、ゞュ゚リヌを創䜜しおいたす。 『コトノハ薬局』特別賞受賞。 『私の劻ず、沖田君』ノベルアップ第䞀回時代劇小説倧賞受賞、発売䞭。 アむコンは神絵垫しきみさんの䜜品です。AI孊習転茉厳犁。

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