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積みと罰:積みプラ編 【重力制御シリーズ】

    「人類は重力の制御に成功した。
    問答無用で、積まれた」
    その他の業はコチラ


    序章 ── 「積みプラ」とは何か

    積みプラ。
    それは買ったプラモデルを、
    組み立てずに積み上げること。

    誤解しないでいただきたい。
    これは怠惰ではない。

    積みプラとは、
    "可能性を可能性のまま保存する"
    極めて高度な精神的営為である。

    人類が重力の制御に成功したとしても、
    人は決して箱を開けないだろう。

    それでは本日の一品。


    【劇中車】重力警備隊 グラビオン号(サンマル/アオヤマ)── 同じ車を2台積むという正義

    概要 ── 「呼び方が違う」それだけで2箱買う男の話

    『重力警備隊グラビオン』
    今思うと随分と明後日の方向を向いた内容の特撮番組は、毎週金曜夕方6時から放映されていた。

    主人公が呼ぶと、防衛車両グラビオン号が飛んでくる。
    当時の子供は
    「呼べば車は浮くもの」
    だと刷り込まれた。
    私もその一人である。

    問題はここからだ。
    グラビオン号のプラモデルには、
    サンマル(老舗メーカー)旧版
    と
    アオヤマ(新興メーカー)新版
    がある。
    違いは——呼び方だけ。

    サンマル旧版は、
    「来い!グラビオン」
    と呼ぶと反応する。
    アオヤマ新版は、
    「やって来い!グラビオン」
    だ。

    日常生活を日常生活として送る人間なら
    「新版だけでいいか」
    と思うだろう。

    しかし積みプラ主義者は一味違う。

    呼び方が違う。
    コレすなわち別の車なりにけり。

    これは敗北を意味するのか? 
    否、積みの始まりなのだ!


    📦 箱絵 ── 「斜め上」へ飛んでいく、あの真顔
    サンマル旧版のボックスアート。
    夕陽の浮遊都市をバックに、
    グラビオン号が斜め上へカッ飛んでいく。
    煽り文句は
    「ついに、空が防衛圏。」

    ……今、宅配カートも斜め上に飛んでいる。
    誰も振り向かない。
    でもこの箱の中では、斜め上に飛ぶことはまだ正義なのだ。
    この真顔の感動が、たまらなく愛おしい。

    🔓 開封の儀 ── 両方開けるという愚行
    両方開封した。
    旧版と新版、ランナーを並べる。
    旧版のランナーは灰色一色。
    モーターと電池ボックスが堂々と鎮座している。
    新版は精密成形、重力ユニットの基板がビニールに包まれて光っている。

    構成はまるで違う。
    だがボディの面構えは同じだ。
    「ほら、同じ顔で中身が別人。
    これはもう別の車だ」
     
    2個買いはここに無事正当化された。
    万歳。

    📐 側面スペック表 
    新版の側面に、当時の劇中設定スペックがびっしり。
    G-コア出力、浮上限界高度、想定外事象一覧(未対応可)……
    子供番組とは思えない本気である。
    この番組がなぜ途中で打ち切りになったのか。
    今ならわかる気がする。


    📊 総評

    評価項目 ── コメント
    積みプラ危険度
    ── 呼び方違いで2個買いという新境地
    ⭐⭐⭐⭐⭐

    ロマン指数
    ── 「呼べば浮く」が正義だった時代の生き証人
    ⭐⭐⭐⭐⭐

    完成させる気配
    ── 呼ぶ前に積むので静寂を保つだろう
    ⭐

    締め ── 積みプラの業、第八十一条

    「呼び方が違えば、別の車である。
    ゆえに2台積むことは、重複ではなく正義の保存である」

    サンマル旧版とアオヤマ新版。
    箱の中で並んで眠る、
    呼び声が聞こえるその日まで。
    いつか完成させる日は来るだろうか。
    きっと来ない。

    しかし——積まれたグラビオン号は今日も斜め上を目指している。
    重力が、まだ正義だった頃の空を。


    着想:「積みプラ大好きオヤジ」さん


     
     
     
    【重力制御シリーズ】 ショートショート / 70-80年代のサブカルネタ多めに配合。 重力制御技術が社会に定着しつつある世界を文化人類学的に観測記録中。 毎日新作投稿。 日曜日にはメイキングも投稿。 2027/3/31までに1000本作成見込み。 クリエイター商工会議所所長兼務。

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