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新章スタヌト第郚 『花の姫君は、腹黒宰盞補䜐官の溺愛に気づかない』 プロロヌグ城䞭が知っおいる溺愛に、姫君だけがただ気づかない王郜恋物語-17

    プロロヌグ城䞭が知っおいる溺愛に、姫君だけがただ気づかない


     花の姫君の䌝説ヌヌヌ
     王郜では昔から、第䞀王女が生たれた日のこずを語る者が絶えなかった。

     春でもないのに城の庭園の花がいっせいに咲いたずか、閉ざされおいた枩宀の぀がみたでひらいたずか、空を枡る鳥が王宮の塔の䞊を䜕床も旋回したずか。
     真停のほどは怪しい話ばかりだが、ただひず぀確かなのは、その日生たれた王女が、誰もが目を奪われるほど愛らしかったずいうこずだ。

     ピンクプラチナの髪。
     朝露のように柄んだ瞳。
     やわらかな埮笑み。

     王女セラフィヌナは、囜じゅうから“花の姫君”ず呌ばれ、王囜の誇りずしお愛されおいる。

    「そんな姫君がいるわけないじゃない、バカバカしい」

     ――圓の本人はこうである。


     冬の陜が差しこむ王宮の庭園を眺めながら、セラフィヌナは肩をすくめた。
     窓の倖には、冷たい空気のなかで癜い冬薔薇が揺れおいる。

    「倧げさすぎるのよ。花が咲いただの、鳥が舞っただの」
    「倧げさではありたせん」

     䜎く柄んだ声が返る。ふり向かなくおもわかった。

     アルノィス・リュミ゚ヌル。宰盞補䜐官にしお、公爵家嫡男。
     黒曜石のような長い黒髪ず、冷たい矎貌を持぀男だ。近寄りがたいほど敎った顔立ちなのに、目が合うず倧抵の人は逃げる。矎しいのに怖い。
     そしお、王女のそばから決しお離れない。

     い぀の間にかすぐ暪に立っおいたアルノィスは、薄青の肩掛けを広げた。

    「冷えたす。こちらを」
    「ありがずう」

     受け取るず、圌は圓然のように蚀う。

    「殿䞋はこの色をの冬からお奜みですので」
    「  よく芚えおるわね」
    「殿䞋のこずですから」

     セラフィヌナは小さく笑った。
     この男は昔から、こういうずころがおかしい。

    「それに、庭の花の件は蚘録にも残っおいたす。枩宀の件は誇匵でしょうが」
    「本圓に」
    「はい。陛䞋が䞊機嫌で、庭垫たちに無理を呜じられたずか」
    「お父様  」

     思わず額を抌さえるず、アルノィスは静かに続けた。

    「殿䞋は歳の春にも、同じように庭の花をご芧になっおおられたした」
    「え」
    「東庭の癜薔薇の前で立ち止たり、“癜い花は静かで綺麗ね”ず」
    「そんな昔のこず、芚えおいるの」
    「はい」

     さらりず蚀われお、セラフィヌナは呆れた。

    「じゃあ、歳の誕生日に䜕をもらったかも芚えおる」
    「青薔薇の鉢怍えです。ですが殿䞋は、“珍しいけれど、私は癜薔薇のほうが奜き”ず仰いたした」
    「  怖いわ」
    「歳のずき、東屋でお泣きになった理由も申し䞊げたしょうか」
    「やめなさい」

     ぎしゃりず止めるず、アルノィスは玠盎に口を閉じた。
     もっずも、反省しおいる顔ではない。蚘録を正確に述べただけだず思っおいる顔だ。

     埌ろに控えおいた䟍女の人が、慌おお芖線を䌏せた。肩がかすかに震えおいる。笑っおはいけないず思いながら、少しだけ笑いたいのだ。

    「本圓に、私のどうでもいいこずばかり芚えおいるのね」
    「どうでもよくはありたせん」
    「私にはどうでもいいの」
    「殿䞋にずっおそうでも、私にずっおは違いたす」

     䞀瞬、蚀葉に詰たった。
     この男はたたに、䜕でもない顔で劙に重いこずを蚀う。

     さらにアルノィスは卓䞊の玅茶を芋た。

    「本日は蜂蜜を滎枛らしたした。以前より、甘みを控えたほうがお奜みに合うようでしたので」
    「それも分かったの」
    「日前から、お飲みになる速床が違いたした」
    「飲む速さで」
    「はい」
    「やっぱり怖いわ」

     笑いながら玅茶を口に含む。
     たしかに、甘さは少し控えめでちょうどよかった。

    「  おいしい」
    「䜕よりです」

     アルノィスは歩だけ䞋がった。
     近すぎず、遠すぎず。い぀でも手を䌞ばせば届く距離。

     昔からそうだった。
     ふり返ればいる。
     呌ばなくおも気づく。
     蚀葉にしなくおも、だいたい分かっおいる。

     セラフィヌナは、王女ずしお愛されおいた。
     父に。兄に。䟍女たちに。近衛に。囜民に。

     けれど。

     みんな私を倧事にしおくれる。けれど、それず“遞ばれる”こずは、少し違う気がした。

     王女ずしお敬われるこずず、人の女性ずしお誰かの唯䞀になるこずは、きっず同じではない。

     窓の向こうで、癜薔薇が冬の颚に揺れた。

    「殿䞋」

     アルノィスの声が萜ちおくる。

    「本日はこのあず北棟での報告、その埌に曞類確認がございたす。お茶の時間には、昚日ご芧になっおいた癜薔薇の砂糖菓子を甚意させたす」
    「昚日、芋おいただけでしょう」
    「お気に召しおおられたしたので」

     䜕事もなかったように、圌は今日の予定を告げる。
     きっず今日も、最初から最埌たでそこにいる぀もりなのだろう。

    「本圓に、あなたっお倉な人」
    「光栄です」
    「耒めおいないわ」
    「ですが、殿䞋のお蚀葉ですので」

     セラフィヌナは小さく息を぀いた。
     アルノィスは、い぀も通り斜め埌ろに立っおいる。

     近すぎるのに、決しお螏みこえおはこない。
     遠いようで、どこたでも離れない。


     ――だから、このずきの私は、ただ知らなかったのだ。
     あの冬の枩宀で亀わされる䜕気ないお茶䌚の䌚話が、私の人生を倧きく揺らす始たりになるこずを。



    新章のプロロヌグをお届けしたした。
    恋心に気づかないお姫様ず、腹黒いのに誰より䞀途な宰盞補䜐官のお話です。
    王郜の恋暡様がたたひず぀動き出す新章、ぜひお付き合いください。
    次回、第話冬の枩宀、お茶䌚のはじたり

     
     
     
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