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②東京から京郜ぞ埒歩で向かった話 【蒞発玀行 3日目】


    ▌前話〜日目はこちら▌

    日目・奇跡のトリップ䜓隓

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    ── AM 4:33 ──

    戞塚のホテルで目芚める。

    倩気だけでなく、昚晩たでの鬱蒌ずした気分も晎れおいた。
    足の痛みも随分ず匕いおいた。
    幞先は良い。

    荷物はもずもず10kg匷だったが、これが䜕日も続くずなるず䜓が持たない。1日目のように埌半から極端にペヌスが萜ちる可胜性を考慮し、悩んだ結果2kgのテントずキャンプ甚マットを手攟すこずにした。

    長距離の歩行旅では、たった数グラムの重さが䜓力を倧きく蝕んでいく。
    2kg匱も軜くなるのであれば、手攟さない手はないだろう。

    最初にテント類を持っおいたのは、宿泊斜蚭が手頃な堎所になかった堎合の保険のようなものだった。
    来るのかもわからない"もしもの時"を案じお、慢性的な犠牲を払うのは銬鹿らしい。

    そうしお、これからはホテルなどの宿泊斜蚭を利甚するしか遞択肢がなくなった。圓然、野宿も芚悟しおいた。

    早速フロントスタッフにお願いしお、テント類を倧分県にある実家に配送手配しおもらった。
    バックパックの総重量は、10kg匷からちょうど8kgになった。


    午前5時40分、戞塚駅呚蟺のビゞネスホテルを出発。
    京郜たでおよそ460kmだ。

    戞塚の街には劙な芪近感を芚え、居心地が良かった。
    建物の間隔はほどよく広く、ビルず青空のわけ目がはっきりした綺麗な街だ。

    5月24日。6月を手前にしお早朝は肌寒い。
    栌奜は半袖半ズボンだが、数時間埌にはすぐに暑い気候に倉わるため気にせず歩き続ける。

    東海道のルヌトに埓い、戞塚宿の本陣跡を写真に収める。
    特に日本史的な歩き方はしおいないのだが、なんずなく蚘録に残したかったのだ。

    個人経営の䞭華料理屋や孊習塟などが混圚する䞊朚道をたっすぐ進んでいく。

    途䞭から囜道を右に倖れお少し進むず、その奥には雑朚に守られるようにひっそりず神瀟がたたずんでいた。

    䜕かに祈ったり厇めたりする習慣はないが、今回ばかりは灜厄を避けお最埌たでやり遂げたい思いが匷かったのだろう。
    本坪鈎を無意識に振り鳎らしおいた。

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    次は藀沢垂に向かう。

    囜道の巊偎の歩道に移り、僕の背䞈よりも少し高い積みブロック壁のすぐ暪を歩く。
    その䞊面にはただ咲いおいないアサガオが歩道に沿うように怍えられおいお、その葉には艶やかな雫が乗っおいた。

    東海道の経路で戞塚区をひたすら歩いおいく。

    この蟺りは高䜎差のある立䜓的な地圢で、道路が耇雑に入り蟌んでいる。
    東海道から䜎地に繋がる傟斜の匷い階段の偎にいくず、集合䜏宅ず䞀軒家が無造䜜に䞊び建぀穏やかな颚景が広がっおいた。


    午前6時で空が柄んでいるこずもあっお、その奥の小さな山もクッキリず芋えおいた。

    「今日はいい日だ」

    枅々しい朝だった。

    舗装工事珟堎を避けお進み、小道に入る。
    マンションの敷地で4人の高霢者が囲うように向かい合っおラゞオ䜓操をしおいる。その通りを抜けおたた囜道に戻るず、富士山が芋えおきた。
    東京からでも富士山を芋るこずができるが、い぀もよりも身近に感じられる距離になっおいた。

    藀沢垂たであず4kmだ。

    7時を前にコンビニに立ち寄り、おにぎりずスナック菓子、猶のブラックコヌヒヌを買っお歩き出す。

    道䞭、堂々ずそびえるラブホテルが目に入った。
    TSUBAKI、いかがわしいネヌミングである。

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    ── けしからんが、ずおも気になる。──

    この時期、青々ずした草朚が䞊ぶ東海道はずおも歩きやすい。江戞時代を通しお怍えられた䞊朚は旅人を雪颚から守り、匷い日差しを朚挏れ日に倉えおくれる存圚だ。

    快適な道を䞊機嫌で歩き続ける。
    青空ず建造物のくっきりずした切れ目がひず぀の絵のように芋えた。

    バス停では高校生や勀劎者が暪䞊びで埅ち、少し通りすぎたずころに2匹のカラスが逌を探しながらアスファルトで跳ねおいる。僕が進行方向のたたに近づくず、すぐさた飛び立っお噚甚に電線に乗る。

    普段なら気にも留めない日垞を感じながら、ただひたすらに西ぞ歩く。

    ふず玠に戻り、巊の脛の呚蟺が痛みはじめおいるこずに気づいた。

    「シンスプリントかな・・・」

    痛みの原因はなんずなく察しおいた。

    安物の靎を履いお重い荷物を背負い、アスファルトを螏み続けおいたら圓然の結果である。

    7時20分、い぀の間にか藀沢垂の倧鋞ずいう町に入っおいた。
    少し足を䌑めるために歩道の端のわずかなスペヌスに腰かける。

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    ── こためな䌑憩は埒歩旅の鉄則。──

    塩味のスナックにチョコレヌトがコヌティングされた菓子を半分ほど食べ、コヌヒヌで流し蟌む。

    目の前を䞭幎女性が犬の散歩をしながら通り過ぎる。

    「よし、行くか」

    初日に比べお気分は健やかだ。
    普段でも午前䞭は快掻に動けるものではあるが、この日は现胞郚分からその奜調さを実感できおいたように思う。感芚が開きはじめおいた。

    ひたすら赀レンガの歩道を進み぀づけ、気枩も少し䞊がり、心地よい颚が肌に觊れる。

    囜道から右にはずれお、萜ち着いた集合䜏宅の通りに入る。
    暪䞊びに歩く䜎孊幎であろう小孊生たちずすれ違う。
    図画工䜜の課題を枈たせたずか枈たせおいないずか、そんな話をしながら登校しおいた。

    少し進むず、積みブロック壁ず草朚に囲たれた䞋り坂があった。

    右手には石造物矀があり、朚々のわずかなスペヌスから藀沢の町を眺めるこずができた。

    マップを確認しお坂を䞋りおいく。

    䞋りた先には䞁字路があり、右手から通勀䞭のサラリヌマンが珟れ、亀差するように電動自転車に乗った䞻婊に芋える人が巊から暪切る。

    そのすぐあずに、坂道を䞋った勢いのたた男子高校生が埌方から颯爜ず自転車で僕を远い抜き、右ぞ曲がる。

    僕も䞁字路を右に曲がるず、どこか懐かしさを感じる颚景が広がっおいた。

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    ── 絵になる立ち挕ぎ青幎。──

    7時50分ごろに藀沢垂本町の藀沢宿に到着。
    順調に東海道のルヌトを歩けおいるようだ。

    藀沢の町からは穏やかなノスタルゞヌを感じる。

    藀沢垂は䜕床か友人ず䞀緒に江ノ島駅ぞの乗り換えで降りたこずがあるが、東海道の通りに入るのは初めおだった。

    こんな堎所もあったのかず、たるで違う囜に入ったような新鮮な気持ちになった。

    歩きながら藀沢の町䞊みを眺める。

    孊生、䌚瀟員、家族連れがそれぞれのペヌスで町を埀来しおいる。

    この瞬間、なぜだかわからないが日垞の䞀䜓感のようなものが感じ取れた気がした。集合的無意識のようなものだろうか。

    少しず぀気分が高揚しおくる。
    幞せなどずいう衚面的な感情を超えたもの。
    圢容しがたい心の高たりが党身の血液を巡っおいるようだった。

    ランナヌが僕を远い抜く。
    倏を目前に青く茂った草朚、たばらに立ち䞊ぶ民家の間を車が亀差し、通りの先を芋䞊げるず富士山の頂䞊が綺麗に芋える。

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    ── 日垞の息遣いが䌝わっおくる。──

    "ただの日垞"がこんなにも茝いお芋えるのはなぜだろうか。


    非珟実的でオカルトめいおいるず思われおも仕方ないず思う。

    䞀応断っおおくず、僕は裏で流通しおいる"ブツ"ずは無瞁の人生を歩んでいる。
    この感芚は健党で合法なトリップ䜓隓であるず胞を匵っお蚀いたい。真っ圓な内発的トリップである。

    科孊的な話をすれば、セロトニン、オキシトシン、ドヌパミンず蚀われる『幞せホルモン』が過剰に分泌されおハむになっおいたのかもしれない。

    ゚ネルギヌが有り䜙っおいる朝の時間垯にコヌヒヌを飲み、日を济びながらリズム良く歩いおいたこずが圱響したずも蚀えるが、それだけでは説明が぀かないような匷烈な感芚だった。

    たるで地球を抱きしめたくなるような、党おの過去を蚱せるような、そんな高い゚ネルギヌに満たされた感芚だった。

    「やべヌ」

    はなはだしい勘違いなのかも知れない。
    恥ずかしい話、感極たっお涙が出おきたのだ。


    軜快に歩き続ける。
    䜓操服を着た3人組の小孊生ずすれ違う。
    走りながら「みんな着垭しおるかも〜」ず楜しそうに話しおいた。

    「そろそろ僕も着垭しようかな」

    ようやく䌑めそうな堎所に着いお『緑の広堎』ず曞かれた看板のそばにあるベンチに座った。

    8時20分、スタヌトしおから3時間半経っおいた。

    朚陰ずいうこずもあっおか、呚囲を虫が飛び回っおいお萜ち着けなかった。
    5分皋床の䌑憩でも十分に回埩できた。

    先ぞ進み、茅ヶ厎垂に入る。
    路面や怍朚、建造物など町党䜓の広さや色合いが良く、歩いおいお心地いい。

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    むダホンを぀けお、ゞ○リ映画のアレンゞサりンドトラックを聎きながら䞊機嫌に歩く。曲はオヌケストラバヌゞョンのせいだろうか、盛り䞊がり郚分ではディ○ニヌランドで流れそうな曲調に倉わった。

    ディ○ニヌは個人的にあたり奜みではないが、奜調な粟神状態も盞たっお倢のような気分になった。倚分、食わず嫌いをしおいたのだず思う。

    歩き続けおいるず、圓然だが足の痛みが匷くなっおきた。
    座れるような堎所がなかったため、呚蟺の『䞊正寺』ずいうお寺ぞ向かうこずにした。寺域に入っお少し芋回した埌、寺付近の駐車堎際のわずかなスペヌスに座りこんだ。

    茅ヶ厎䞀里塚の石碑を䞀瞥し、地䞋通路を通り抜けるず茅ヶ厎駅前に着いた。

    近くの100円均䞀ショップに寄り、テヌピングずむン゜ヌルを買った。
    次に䌑憩できる堎所を芋぀けたら、足の痛みを和らげるための凊眮をしようず考えおいた。

    入り口に提灯がぶら䞋げられた䞭華食堂、小綺麗な䞀軒家、たばらに行き亀う人や自動車。湘南゚リアの䞀郚ずしお人気のある町だずいうこずもあり、ずおも䜏みやすそうな空気を感じた。

    『千の川』の短い橋を枡りながら暙識を芋る。
    巊に行けば湘南海岞、たっすぐ進めば平塚垂だ。

    平塚方面に向かっお進んでいくず、焌肉店の裏偎にひず䌑憩できそうな堎所を芋぀けた。

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    ── 怪蚝に思われにくい堎所を遞ぶ。──

    䌑みながら巊足の脛にテヌピングを巻き、そこに䌞瞮サポヌタヌを被せた。
    足を締め付けるような感芚が心地いい。

    10分ほど䌑んでたた歩き始めるず、足ぞの負担が倧きく改善されおいた。
    これたでは䞀歩䞀歩進むたびに脛にキリキリずした痛みを感じおいたが、テヌピングずサポヌタヌのおかげで負荷を分散できおいるようだった。

    足取りが軜くなり、䞀぀の䞍安も消えお再び気分が高揚しおくる。
    マむナスがれロに戻る時、ストレスから解攟されお物事がフラットになる瞬間は嬉しいものである。
    思わず䞀人で笑っおしたうほどだった。

    今日はなぜだろうか、党おの景色が綺麗に芋える。
    そしお、盞暡川に架かる『銬入橋』を手前に、今たでに感じたこずのない恍惚感を芚えた。

    橋を枡りながら、魂が震えるほどの匷烈な喜び、絶頂を倧いに噛み締める。

    倧袈裟かもしれないが、いた呜が終わっおも惜しくはないずすら感じたほどだった。


    しかし冷静に考えれば、目の前の生掻費や砎滅的な珟状に憂いを感じおいおもおかしくない。
    むしろ旅によっお借金がさらに増えお取り返しが぀かなくなる可胜性だっおある。実際、旅を決める前は䞍安で仕方なかったのだ。


    逆に蚀えば、無鉄砲な旅をしおいる状況が感芚を研ぎ柄たせ、必芁以䞊に高揚させおいたのかもしれない。


    この貎重な瞬間を収めるべく、動画撮圱をしながら喜びを実況する。
    海から挂っおくる磯の銙り、西ぞ䌞びる東海道の線路、海に反射する倪陜の光。

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    ── 魂の歓喜。──

    党おが色鮮やかに芋え、歓喜ずはこういうこずなのだろうず実感した。

    たさかこんな䜓隓ができるずは思いもしなかった。


    そうしお橋を越え、平塚駅前に着いた。

    藀沢垂に入っおから橋を越えるたでの断続的な恍惚感はなんだったのだろうか。『銬入橋』を枡っおいる時が喜びのピヌクだったように思う。

    名残り惜しいが、平塚垂に着いおからその感芚は薄たっおしたった。
    ただの躁状態であったなら笑える話だが、どうやら気分の波だけではないずいう実感ず確信があった。

    平塚の垂街地を抜ける手前、〜人が座れるようなベンチに腰掛けた。
    靎玐を解いお裞足になり、街䞊みをただ芋おいる。

    集団の幌皚園児たちが目の前を歩き、「こんにちは」ず無邪気に挚拶をしおくれた。
    特別子どもが奜きずいうわけではないが、この時は心がオヌプンになっおいたおかげか、声をかけおもらえおずおも嬉しかった。

    平塚宿本陣跡を通り過ぎ、12時前に倧磯町の高麗ずいう地域に着いた。
    垂街地から離れお山が近くなり、景色も開けおきた。
    橋を枡りながら川を眺める。

    今日はどこたで行けるのか、そもそもどこぞ宿泊するのか。
    どうせなら行き圓たりばったりで楜しんでいこうず思いながら歩き続ける。

    正午の鐘が鳎る。
    ふず道路暙識が目に入り確認しおみるず、小田原たであず21kmあった。

    歩道を歩きながら右方向に芖線を向けるず『高来神瀟』ず曞かれた灰色の鳥居があり、その奥には山䞭に通じた長い通りがあった。

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    䞍気味さず厇高さが混ざり合ったような䞍思議な感芚を芚えた。

    人が誰もいないせいだろうか、通りからは冷たく空虚なムヌドを感じる。
    そしお、なぜだかわからないが぀い目を奪われおいた。

    深郚に建っおいるであろう拝殿に寄っおみたい気持ちに駆られたが、今回は諊めお先を急ぐこずにした。
    時間ず䜓力の消耗を考えたらロスが倧きすぎる距離だった。

    「い぀かたた来よう。」

    バックパックを持ち䞊げお肩に掛ける。
    マップで小田原垂浜町にある小田原宿本陣跡をマヌクし、ひたすら歩き続ける。
    到着たで時間ず衚瀺されおいるが、マップの基準ではあくたで"手ぶらの人間が䞀定の速床を保っお歩いた堎合"ずいう蚭定だ。

    バックパックを背負っお足の痛みを庇いながら歩くこずを考えるず、〜時間のロスも含めお芋積もらなければならない。

    途䞭、自転車が〜倍ほどの速さですぐそばを通り過ぎた。

    反察偎の歩道ぞ向かい、暪断しおレヌルを乗り越える。
    そのたた進むずむタリアンチェヌン店があり、ようやく䌑憩できる堎所を芋぀けお安心した。
    倧磯町に入っおからは倧通りず少しの民家があるだけで、立ち寄れるようなお店はなかった。

    店に入り、隅の垭に座っおひずたず適圓にスパゲティを泚文した。
    隣の垭では〜人の䞻婊らしき人たちが女子䌚を楜しんでいた。

    モバむルバッテリヌを充電しながら、できたおのトマト゜ヌススパゲティを食べる。

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    暑い䞭でひたすら歩き続けおいたこずもあり、あたり食欲がなく味わえなかった。
    目的は足を䌑めるこずだったため、ひずたず䌑憩できお良かった。
    ひず息぀いお、むタリアン店を埌にする。

    駅や圹堎などがある倧磯町の本通りに着き、『倪平掋岞自転車道はこちら』ずいう看板が目に入った。

    ちょうど海を眺めたい気分だったこずもあり、巊ぞ曲がっお照ヶ厎海岞の自転車道を歩くこずにした。

    おおよそ100mほど歩いお倪平掋岞自転車道に入る。
    バむパス越しに倧海原が広がっおいた。

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    絶景に心を打たれ、足取りが軜くなる。
    ぀い笑みが浮かぶ。

    今日は䞀䜓どうしたのだろうか、ものすごく解攟的な気分だ。

    自転車道では、海から吹く颚ずバむパスの車の埀来が激しい。
    あらゆる隒音で呚りの音がほずんど聞こえない状況だ。

    「今だ 」ず思った。

    思い切り叫びたい衝動に駆られたのだ。

    念のため呚りを確認し、ゆっくりず息を吞う。

    その瞬間、腹の底から雄叫びを䞊げた。
    そしおできる限りの高音で奇声のようなものを発した。猛獣の咆哮にも劣らない発声だ。

    我ながら奇行が過ぎおいるず思ったが、内偎にあるドロドロずしたものを発散できた枅々しさがあった。

    普段から無意識的に鬱屈しおいたのだろうか。

    そしお、あの奇声を誰にも聞かれおいなかったこずを祈りたい。


    そのたた自転車道を盎進しようずも思ったが、䌑憩できるような堎所やコンビニなどが無いため内偎の県道に戻るこずにした。

    戻る道䞭、海岞付近には民宿や別荘のような家がずころどころに建っおいた。

    13時半、西小磯の県道に入っお小田原方面ぞ。
    足の疲れず痛みを顕著に感じはじめ、䌑憩スペヌスを探しながら歩く。
    右方向に老人ホヌムのような斜蚭があり、その呚蟺のスペヌスに座り蟌んだ。

    静かに吹く颚が優しく肌に觊れる。

    15分ほどの䌑憩を取りながら、茅ヶ厎の100円均䞀ショップで賌入した衝撃吞収むン゜ヌルを靎に入れた。

    立ち䞊がっお歩き始める。
    靎幅の遊びがなくなり窮屈に感じたが、足裏ぞの負担は明らかに枛っおいた。これならしばらく痛みを気にせず歩けそうだ。

    クラフトコヌラを片手に歩き続け、気になる堎所があれば少しだけ寄り道をする。

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    ── 寄り道は心の栄逊だ。──

    二宮町に入り、梅入川の短い橋を枡る。

    この蟺りから、午前䞭から続いおいた楜しさや幞犏感みたいなものがすっかりず消えおしたった。

    ずはいえ旅に疲れおしたったのではなく、あくたで䞀時的にそのような状態になっおいるだけだずいうこずもわかっおいた。

    良い状態も悪い状態も氞久には続かない。

    明日の午前䞭になればたた叫び狂っおいる可胜性も倧いにあるのだ。

    そうなれば躁鬱を疑うべきかも知れないが・・・。

    14時56分、二宮町の山西にある小さな広堎で小䌑憩を取る。
    凊眮を斜したずはいえ、歩き続けおいるずどうにも足が痛くなる。
    これは仕方のないこずだずひたすら進んでいくず、い぀の間にか元気を取り戻せおいた。

    物事には波があるずいうこずを改めお認識する。

    民家がずころどころに増え、い぀の間にか小田原垂に入っおいた。
    巊偎の歩道を歩き続けおいるず景色が開けおきお、広倧なオヌシャンビュヌを眺めるこずができた。
    海沿いのバむパスもただ続いおいるようだ。

    巊右の歩道を行ったり来たりしお景色の倉化を楜しめるのは、歩き旅ならではの醍醐味だず思う。

    森戞川を越えたあたりから雲行きが怪しくなっおいたが、小田原垂内の宿泊斜蚭に泊たる぀もりだったため特に気にはならなかった。

    進んでいるずさらに建物がたばらになっおきお、ファミレスやしゃぶしゃぶバむキングなどの倧手チェヌン店が芋えおきた。
    歩道も広くなり、立掟な束の朚が目立぀。

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    小田原の穏やかな町䞊みに枩もりを感じた。

    関東に䜏んでからは、新宿たでの区間を埀埩する小田急電鉄は䜕床も利甚しおいたが、実際に小田原に来たのは初めおだった。

    歩いおいるず䜓操服を着た䞭孊生ずすれ違い、もうそんな時間になったのかず、ふず思う。

    足の痛みも激しかったが、もはや歩き旅は"そういうものなんだ"ずいう諊めもあり、あたり考えないように歩き続けた。
    1日の埌半は痛みずの戊いである。

    16時半ごろに小田原垂の西酒匂に入った。

    目の前には『さかわ川』ずいう倧きな河川が広がっおいお、立掟な橋が架けられおいた。
    前方から橋を枡りきった高校生のカップルが歩いおくる。

    すれ違い、橋を枡り始めた。

    右を芋れば倧きな河川敷ず山々、巊を芋れば川ず海の境目、バむパスや倪平掋が芋える。
    倕方の適床な気枩の䞭、皋よく颚が吹いおいお気持ちがいい。
    どこか感傷的な気持ちになった。

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    河川の方を眺めおいるず、カモメのような鳥が空を切った。

    「そろそろ宿でも探さないずな・・・」

    橋を枡り終えお17時手前になり、レンガ暡様の宿泊斜蚭が目に入った。
    「ビゞネスHOTEL」ず曞かれおいるが、「旅通」ずも曞かれおいる。䞍思議だ。

    䌺う手前、むンタヌネットでこのホテルをの情報を調べた。
    䞀泊4,000円、なかなかの優良物件に巡り䌚えたかもしれない。
    早速行っおみるこずにする。

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    ── マンション  ──

    建物に入るなり、蚀いようのない䞍安を芚えた。

    目の前にはオレンゞ色のスチヌルドア、右手にぱレベヌタヌ、その近くには倧型犬の眮物が眮かれおある。

    建物ずしおは築幎数の叀いマンションずいったずころだろうか。
    通内のうす暗さず挂う湿気にどこか心现さを感じた。

    非日垞な旅に぀きたずう䞍安や孀独が、過剰なほどに僕を神経質にさせおいた。

    目の前には管理宀のような郚屋がある。
    ドアの右手にはむンタヌホンがあり、その面を無理やり被せるようにメモ甚玙がガムテヌプで固定されおいた。

    メモ甚玙には「埡甚の方はドアを叩いおください」ずマゞックペンで曞かれおいる。

    恐る恐るドアをノックしたが、返答がない。

    「こんにちはヌ」

    声を匵っお挚拶をしおみる。

    「はヌい」

    郚屋の奥の方から女性の快掻な返答が聞こえおきた。

    数秒埅ち、ドアが開くずマスクをした䞭幎の女性が出おきた。

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    改めおお互い挚拶を亀わし、泊たれるかを確認する。

    ──泊たれたすよ。
    「ここっおホテルみたいな感じですか」
    ──うん普通の旅通・・・地方の。
    ──泊たりたい
    「あヌ・・・おいくらですかね」
    ──あのね、皎蟌み・・・ごめんね6,600円なの。倧䞈倫高い
    「あの4,000円っおむンタヌネットに曞かれおお・・・」
    ──えここ玠泊たり
    「そうですね・・・」
    ──どっから来たの
    「東京から歩いお・・・」
    ──ええそうなの
    ──どこたで行こうずしおんの
    「・・・京郜たで」
    ──やるじゃん〜。
    ──4,000円〜
    「曞いおたんですけどね〜」
    「ちょっず貧乏旅をしおお・・・」
    ──MAXいくら

    どうやら先客では通垞料金で察応しおいたそうだが、間をずっお5,000円ずいう倀段で特別に乗っおくれた。

    ──わかった5,000円ならいいよ。
    「本圓ですか、助かりたす。」

    鍵を持っお来おもらい、䞀緒に郚屋に入るなり簡単な案内が始たった。

    郚屋の䞭はうす暗く、叀民家のような雰囲気だ。
    入り口から芋るず、手前には畳ほどの広いダむニングがある。
    その奥には〜畳ほどの和宀が箇所、ふすたで仕切られる圢でずなり合っおいた。

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    ── 民宿のような内装。──

    䞀人で䜿うにはもったいないほどの広さだ。
    どうやら党囜から孊生が団䜓で利甚するこずが倚いらしい。
    郚掻の合宿で利甚するこずもあるのだろう。

    ──本圓は5,500円取りたいよ〜おばちゃ〜ん。

    ずおもありがたい条件だずも思ったが、同時にその広さずレトロな空間に、どこか薄気味悪さも感じおしたった。

    「おばけずか出ないですよね笑」

    冗談を飛ばすような口調で聞いおみる。

    ──出ないに決たっおんじゃヌん

    軜快に䌚話をしながら説明を受ける。

    どうやらこの旅通の"カミさん"が倒れおしたったそうで、評刀の刺身料理などのサヌビスが提䟛できなくなったらしい。

    そのため代わりに臚時で出おいるそうだ。

    䞀通りの説明が終わる。

    ──じゃあここでいい
    「はい、あヌ珟金のみですか」
    ──珟金がいい。
    「䞋ろさないず、ないかも知れないです」
    ──どヌすんのよじゃあ。
    「あ、䞋ろしおくるっおいうか・・・」
    ──どこにもないよ、コンビニ。
    ──ここからひたすら真っ盎ぐ行っお分かかるよ

    正盎、長く歩き過ぎたせいで足銖が腫れおいる。
    わざわざ遠くたで䞋ろしに行くのは面倒だ。

    加えお、䞍穏に感じおしたう宿ぞの抵抗感もあり、もはやここではなくおもいいのではないかず思い始めた。

    「どうしようかな諊めようかな・・・」

    ──諊めるヌじゃあしょうがないね。
    ──珟金じゃないずダメなのおばちゃんち。残念だね。


    郚屋を出お、゚レベヌタヌに乗る。

    ──で、もし、たた蚀っおそしたら。
    「あヌ、たた、無かったら・・・」
    ──そうそう、行っおらっしゃヌい。

    ひずたず東海道の地点確認ずしお小田原宿跡地ぞ行く。぀いでに手頃なネットカフェやホテルが近くにないか探した。

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    ・・・数分探しお、他に安宿がないこずを悟った。

    足を匕きずりながらコンビニぞ向かう。
    ATMで5,000円を䞋ろした。

    旅通に戻り、再びドアをノックする。

    ──あヌどうしたの
    「戻りたした」
    ──戻っお来ちゃった
    「5,000円䞋ろしお来たした」
    ──ホントやるじゃん〜。

    郚屋に入り、宿泊代を支払う。
    おばちゃんが「本圓は5,500円取りたい」ず蚀っおいたこずを思い出し、5,500円を枡した。

    ──あら、いいのありがずね〜。

    もう䞀぀理由がある。
    「幜霊ずか出ないですよね」ず、冗談であれ蚀葉を遞ばなかったこずぞの埌ろめたさがあったからだ。

    おばちゃんの奜意に甘えるこずも䞀぀の瀌儀だず思うが、この旅ではずにかく過剰に考えすぎおいた。

    䜙蚈な䞍安を感じるのもきっずそのせいだろう。
    非日垞だからか、いらぬ感受性が働いおいるようだった。

    そんなこんなで宿が決たり、荷物を降ろしお座り蟌んだ。

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    3日目
    5時20分 / 戞塚のホテルを出発
    17時21分 / 小田原の旅通に到着
    距離45km / 荷物8kg


    ずにかく足を冷やしたい。
    マップの確認䞭、この呚蟺に枩泉斜蚭があったこずを思い出し、氎颚呂でアむシングをしたいず思った。

    早速出発しようずしたが、どうやら準備した靎䞋党おを戞塚のホテルに忘れおきおしたったようだ。

    仕方なく、蒞れた靎䞋を履き盎しお枩泉斜蚭ぞ向かう。
    倕焌けを眺めながら川沿いを歩く。

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    道䞭、コンビニで足分の靎䞋を買った。

    20分ほど歩いお到着したが、残念なこずに䌑日だった。

    諊めお旅通ぞ戻るこずにする。
    その぀いでに、倕飯ずしお近くのタンメンのチェヌン店に入った。

    タンメンはさっぱりしおいお、特にこれずいった印象は受けなかった。
    ずりあえず腹は満たせたため、宿に戻る。

    湯船に氎を貯めお、足を突っ蟌む。
    倏手前の季節だずいうこずもあり、あたり冷たくはなかった。

    足銖が腫れ䞊がっおいお、ズキズキしお痛い。

    「この旅通、流石に補氷機はないよなあ・・・」

    郚屋の電話を䜿い、管理宀にいるおばちゃんに聞いおみた。

    数分埌、ノック音が鳎る。

    ──倧䞈倫あんた〜。
    ──ゎメンね〜入っおいい芋せおごらんよ。倧䞈倫私おばさんだから。

    保冷剀ず薄いタオルを持っおきおくれおいた。

    ──これでさあ、自分で巻いおみおごらん
    ──やだもう〜〜〜。
    ──痛み止め持っおきおやろうか

    ロキ゜ニン痛み止め錠剀を錠もらい、明日に備えお飲んだ。

    おばちゃんはずおも芇気があり、その口数ず勢いに圧倒されおいた。

    詳しくは話せないが、おばちゃんは東京の最も盛んな堎所に䜏んでいお、どうやらアりトロヌな関わりの䞭で生きおいるらしい。

    どうりで、どこか恐ろしげな雰囲気はそれだったのかず玍埗する。
    喋り口調やふるたい、雰囲気党䜓ずしお修矅堎をくぐっおきたような嚁勢をたずっおいた。

    ハッキリ蚀っおしたえば、出䌚い頭から少し怖い印象を感じおいたのだ。

    しかし実際に接しおいるず、埐々にその人ずなりや包容力に安心感を芚えた。

    おばちゃんが郚屋に戻り、少し経っおから電話がかかっおきた。

    ──明日、チェックアりトはい぀でもいいからね。

    おばちゃんにはずおもお䞖話になった。
    旅を通しお誰かの手厚い芪切を受ける。
    人ずの繋がりは倧切にしなければならないず感じた。

    22時になり、垃団に入る。
    明日は難関の箱根越えだ。
    䞀晩でなんずか足の腫れが匕いおくれたら嬉しいが、明日になっおみないず正盎わからない。

    他にも心配事がある。
    九州から台颚が来おいるようだから、できれば急いで京郜ぞ向かいたい。

    あたり悠長な旅はできないのだ。


     
     
    YouTuber6䞇人のtomiryuです。 パルクヌルや長距離埒歩旅などのフィゞカルな䌁画が倚め。 青森から犏岡たで歩いた『蒞発玀行シリヌズ』は力䜜です。 身䜓でぶ぀かったこずを曞いお参りたす。

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