
第35章|創業の日と意|35年回顧録
オープン当日、朝4時に家を出た。
6時、世話になった職人さんが1名来てくれた。当初は2名の予定だったが、予算の都合で1名に変更していた。予定通りの仕込み内容を確認され、作業が始まった。
私は指定された仕込みに入る。
フランスパン、食パン、欧風パン、ドーナツ、デニッシュ、クロワッサン、ロール、菓子類……。
職人さんは成型と焼成をこなしながら、8時から来た製造パート2名に手順を教えてくれた。
販売兼サンドウィッチ担当のパート2名も8時出勤。
そこへドンが現れた。
しかも白衣姿だった。そんな姿を見るのは初めてだった。
「初日や。見に来た。邪魔はせん」
9時過ぎ、量販店側のテナント部長と館の店長が挨拶に来た。
「今日は告知はしていないが、館の来店予定は3000人ほどある。かなり来るはずだ」
10時、オープン。
30分もしないうちに大行列。
レジはパニック。
職人さんが言う。
「製造はやります。あなたはレジへ」
11時、予算を下げていた商品がほぼ完売。
急遽、翌日分の仕込みを出すが、発酵には時間がいる。
チャンスロスが続く。
ドンが怒鳴る。
「段取りが甘い!ここは量販店内や!予算を下げすぎやろ!」
さらに材料と備品が不足。
私は午後から買い出しに走る。
営業時間中、自分の店にいない創業者。
職人さんにも準備不足を叱られたが、それでも残業して助けてくれた。
閉店。
売上は予定の2倍、20万円。
だが、追加仕込みのため深夜1時まで作業は続いた。
26歳。
商売をする意味もまだ掴めぬまま迎えた創業の日。
とにかく、始まった。
この“売れすぎた初日”が、
後に悲惨さを招くとも知らずに。