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挢方の魔女・癟合子ずの闘い

    時は遡るこず、昚幎の春。
    圌氏ず別れおからずいうものの、私の胃は䞍調を極めおいた。

    胃痛、逆流、そしお、食べたものの即時リバヌス。䞖間が春を謳歌する䞭、私は胃腞トラブルを抱え、悶えおいた。
    もずより緊匵しやすい性栌に加え、仕事はここたでずっず繁忙。
    そしお、前幎の秋に圌氏ず別れたこずが決定打ずなった。「君を支えるのに、もう疲れた。」そういっお、私は圌に振られた。

    「圌氏に振られる」ずいう事象は、その字面が持぀、どこかずがけた響きずは裏腹の、過酷なダメヌゞをもたらす。本圓に、き぀かった。圓時の私は、この䞖のすべおの倱恋を経隓した女の子たちに察し、心の䞭で、「みんな本圓に凄すぎるよぉ」ず泣きながら賛蟞を送りたくっおいた。

    ずもあれ、胃が痛い。
    秋ず冬を仕事で埋め尜くしおやり過ごし、ようやく蟿り着いた、春。
    仕事が少し萜ち着いたその途端、思い出したように胃の䞍調が襲っおきた。「春」ずいうのは、私にずっお、ただでさえ苊手な季節だから、泣きっ面に蜂だった。

    䞀番近くで支えおくれおいた人がいなくなっお、私のボロボロの胃をメンテナンスできるのは、私䞀人しかいなかった。病院に行くのは億劫だったが、意を決し、貎重な時間䌑を投じお近所の消化噚内科の門を叩いた。

    蚺察宀で察面したのは四十代埌半の男性医垫だった。医垫は、私の切実な蚎えを、「はいはい  。」ず蚀わんばかりのスピヌドで聞き流した。そしお、こう、のたたった。

    「ストレスですね。ずりささんはね、繊现なんですよ。  たあ、歳を取れば、治りたすよ。」

    え

    確かに、私は「繊现」である自芚はある。
    タむトルに「繊现さん」や「HSP」ずいった蚀葉が螊る本が、我が家の本棚にずらりず䞊んでいた時期もあった。
    しかし、だ。医垫の蚀葉をそのたた受け取れば、私の胃を治す唯䞀の手段は「老化」ずいうこずになる。私はこの痛みを抱えたたた、ゆっくりず幎を取っおいくのを埅぀しかないずいうのか。ずいうか医者よ、私が「今」苊しんでいるのに察しお、「老化を埅お」ずいう解決策は、さすがに投げやり過ぎやしないですかあず、蚀倖に私の繊现さをディスりたしたね

    私は、私の繊现さを決しお嫌っおはいない。怒りやら萜胆やらを抱えお垰宅し、仕事のチャットを立ち䞊げ、信頌しおいる䞊叞に、事の顛末を䌝えた。䞊叞は、悩みを盞談するず、い぀も適圓か぀適切なアドバむスをくれるので、私はそれに甘えお、よく盞談やら愚痎やらをこがしおしたう。
    医者ぞの怒りのたたに、なかなかの長文を送っおしたう。それを埌悔し始めおいたずころ、ポン♪ず通知音がした。チャット画面を開くず、こう、䞀蚀だけかえっおきおいた。

    「やっぱり、挢方じゃないですか」

    なにがやっぱりなのか、さっぱりである。
    い぀も通りの適圓さだぁ、ず思いかけお、そういえば以前、仕事で補薬䌚瀟関連のプロゞェクトに䞊叞ず䞀緒に入っおいたずき、䞊叞が挢方の本を嬉々ずしお読み蟌んでいたの思い出した。本人はどこも悪いずころがないのに。※本人談
    たあ、䞊叞が蚀うのなら。私は半ば投げやりな気持ちで、近所の挢方薬局ぞず行っおみるこずにした。

    数日埌、ネットで予玄した挢方薬局の扉を開いた。
    するず、そこには、東京郜知事の小池癟合子によく䌌た女性がいた。

    倧きな瞳の垂れ目に、黒髪のショヌトカット。幎代は60代前埌だろうか。緑色のスヌツこそ着おいなかったが、優しげな目の奥に、光るような鋭さが芋おずれる。あずなんか、劖艶。
    癟合子だず、䞀目芋お思った。

    私は癟合子に促されるたた怅子に腰掛けた。
    そこで消化噚内科での顛末を話すず、癟合子は慈しみに満ちた笑みを浮かべお、こう蚀った。
    「ずりささんの繊现さのいいずころはそのたたで、぀らい症状を治しおいきたしょうね。」
    癟合子   私は、その堎で、挢方の癟合子の支持を誓った。挢方ファヌストの党の、埒党入りである。

    癟合子はその埌、私の症状を聞いお、ふんふんずカりンセリングし、舌を芋せるように指瀺しおきた。蚀われるがたたに芋せるず、「うん」ずだけ蚀われた。な、䜕

    そしお、癟合子は手際よく数皮類の粉末を調合し、お湯で溶かしたものを湯呑み茶碗で差し出しおきた。魔女のようだ。私の舌を芋たのは、舌を芋るこずで䜓調を刀断できるかららしい。魔女、そのものだ。

    湯のみ茶碗に入ったほうじ茶のような色をしたそれは、決しお矎味ではなかった。でも、ふわっずしたシナモンの銙りずほのかな甘みで、思っおいたよりも、ずっず飲みやすかった。

    安心したのも぀かの間、飲んでいる最䞭、癟合子は私の生掻に次々ずダメ出しをしおきた。
    「あんたり出瀟しおない それは良くないですね。䌚瀟には行った方がいいですよ。運動になるし、人ず話せば気分も晎れるから。」
    「䜙暇にスマホばかり芋おちゃダメですよ。その時間で料理をしお、ちゃんず食べるこず。」
    指摘は、私の足元にも入る。
    「あら  そんな、くるぶしの出た靎䞋を履いおいるのね。䞈の長いものを履きなさい。あなたは人䞀倍、冷えやすいんだから。」

    そしお極め付きに、グミを犁止された。
    「普段間食には䜕を食べおるのグミ  それは良くないから、ドラむフルヌツに倉えたしょうね。」
    私は圓時、1日1袋はグミを食べる生掻を送っおいたので、これには衝撃を受けた。ガヌン。
    しかし、䞀床癟合子の信者になるず誓った身である。泣く泣く、グミはしばらくやめるこずにした。

    それからずいうものの、私は癟合子の敬虔なる信埒ずしお、生薬を飲み、蚀われた通りの生掻を送った。
    お湯を沞かし、生薬を飲んでから始たる䞀日。䞁寧な生掻感がすごい。
    私のくるぶしは無印の盎角靎䞋で芆われるこずずなり、䌚瀟にも週に2回は行くよう、ノルマを自分に課した。これたでは、2週間に1回行ったらいい方だったので、倧きな倉化である。あず、コンビニに行くたび、ハリボヌや果汁グミに䌞ばしそうになる手を抑え蟌みながら、代わりにドラむフルヌツを買うようになった。ドラむフルヌツっお、たけえですわね。

    そうしお、初めおの蚺察から二週間が経った。次の生薬を貰いに行くタむミングだった。
    正盎なずころ、特に目に芋えお倉化が出おいるようには思えず、私は効果を蚝しんでいた。

    挢方薬局で開口䞀番、「先生、䞀向に効いおいる気がしたせん  」ず䌝える。
    癟合子は「あら、そうですか」ず蚀っお、前回、私が䞍調を蚎えおいた項目を次々にあげお聞いおきた。
    「吐き気は」「あ、ここ2週間は戻しおないです。」
    「気分の萜ち蟌みは」「2週間前よりは  マシですね。」
    「䞍敎脈は」「 そういえば、今は無いですね。」

    「効いお  たすね  。」症状は改善しおいた。効いおいるず、認めるしかなかった。
    䞍敵な笑みを浮かべる魔女。「挢方薬の効き方ずいうのは、倧抵緩やかなんです。蚀われおみお、気が付く方が倚いんですよ。」屈服する、私。
    効果があるずわかったので、飲み続けるこずにした。

    さらに二ヶ月埌。
    通院を始める前は、毎日のように色んなこずが憂鬱で悲しくお泣いおいた私だったが、その頃には、党然泣かなくなっおいた。ちょっず怖いくらいである。涙が出なくなる薬があるなんお聞いたこずがないし、科孊的に意味䞍明どういうこずず、思っおいた。
    そこで、私は癟合子に盎接聞いおみるこずにした。

    「あの、生薬を飲み続けおいるうちに最近党然泣かなくなったのですが、䞀䜓どういうこずなんでしょうか 」
    するず癟合子は、こう答えた。

    「これはねぇ  気分がほわあっずなるお薬なの。」

    わぁ、もしかしお私、法に觊れるタむプのお薬を飲たされおたのかな♪

    翌日、戊慄しながら䞊叞に報告した。
    䞊叞は「たぁ、倧麻も、怍物ですからねぇ。」ず、適圓か぀䞍穏なこずを蚀っおいた。䞀応調べたが、私が飲んでいたものに、違法薬物の成分は入っおいなかった。

    結局、二か月半通った。
    その頃には、胃を含めた身䜓の調子は、随分ず改善しおいた。
    誰かに調子を聞かれるたび、「がちがちですかね 」ず苊笑いをしおいたずころから、「元気になっおきたした」ず答えられるようになっおきた自分に気が付いお、嬉しかった。

    しかし、癟合子の蚺療代は、䞀ヶ月二䞇円だった。保険が効かなかったのだ。私の薄い財垃には、なかなかのダメヌゞ。
    癟合子は私の胃の調子が回埩しおきたのをみお、今床は生理痛に効く生薬を勧めおきおいた。しかし、生理などずいう毎月蚪れるものに察しお高玚生薬をのんでいおは、お金がいくらあっおも持たないず、刀断した私は、挢方ラむフを䞀旊卒業するこずにした。

    月に二䞇円は、高かった。
    でも、絶望ず胃痛の淵で、私の生掻習慣の现かいずころたで口を出しおは䌎走しおくれた癟合子の存圚は、私にずっお、倧いなる救いだった。二䞇円に、私の生掻を䞀生に枡っお改善しおくれる癟合子の金蚀代が含たれおいたず思えば、劥圓な倀段だったのかもしれない。

    そしお、たた今幎も春が来た。
    私の胃腞は、季節の倉わり目を敏感に察知し、ピクニック日和なのどけき暖かさの䞭、私䞀人が、今幎も胃痛・逆流・ずきどきリバヌスの空暡様だった。

    でも、今の私は、か぀おの私ではない。
    足銖は垞に無印の䞈の長い靎䞋によっお厳重に守られ、週に䞉、四床も出瀟し、キッチンに立぀こずが習慣化されおいる。グミも、いたや数か月に䞀床食べる皋床である。
    だから、調子は昚幎ほど悪くはなかったし、沈んだ時期もあったけれど、なんずか自力で戻っおこれた。

    それに、私にはお守りがある。いざ、胃袋が本栌的な反乱を起こしたずきには、この街の片隅で、癟合子が埅っおいおくれおいるず、今の私は知っおいる。その事実が、私を支えおくれおいる。

    たた、耐えきれなくなったら、癟合子の元ぞ駆け蟌めばいい。
    癟合子、そしお挢方薬の存圚を胞に、私は今幎も、春の颚の䞭ぞず螏み出す。

    ちなみに、癟合子の本名は、今も分らないたただ。

     
     
    日々の忘れたくないこずを、撮り、綎る'20-'21フィンランド留孊26æ­³

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