TTL #2 RECEPTIONIST | ただの受付だと思っていた | さやか
TTL - Tokyo Triangle Love -
Episode2 – SAYAKA
RECEPTIONIST
ただの受付だと思っていた
午後二時すぎ。
都内の高層オフィスビル。
いつものように静かなロビー。
嶋田さやかは受付カウンターに座っている。
ネイビーの制服。
いかにも受付嬢らしいデザイン。
ショートボブ。
整った顔立ち。
でも、
派手さはない。
淡々と来客対応をこなす。
エレベーターの扉が開く。
現れたのは、一人の男。
仕立てのいいスーツ。
落ち着いた所作。
いかにも仕事ができそうな雰囲気。
さやかは一瞬だけ顔を上げる。
さやか POV
……なんだろう、この人。
なんかオーラある。
男が受付に歩いてくる。
「神谷秀と申します。
二時半から、小松社長とアポイントメントで。」
低く落ち着いた声。
さやかが秀の名刺を受け取る。
さやかの指先がほんの少しだけ秀の指に触れた。

「お、お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」
整った笑顔。
ただの受付だと思っていた。
——その時は。
秀 POV
いかにも受付嬢って感じの子だな。
この会社を買収したら頻繁に会うことになるな。
会議室。
今日のアジェンダはDD (買収精査)のポイント整理。
しかし、
急なトラブルで先方の社長と担当者が会議に遅刻。
打ち合わせ開始まで時間が空く。
ノック。
さやかが追加資料を持って会議室に入ってきた。
「失礼します。」
秀の前に資料を差し出す。
秀 POV
あ、さっきの受付の子。
事務作業もするのか。
スタイルいいな……
それより、資料読まなきゃ。
その時、秀のスマホに着信。
相手は、遅刻していた担当者。
秀が電話に出る。
「……この資料の3ページ目の数字。」
「マルコー商事に確認してください。」
「……はい、できるだけ早く。」
その瞬間。
さやかの表情が変わった。
迷った顔。
そして、口を開く。

「あのー……」
秀が顔を上げる。
「どうしました?」
「お電話中に……すみません。」
一度、言葉を飲み込む。
「マルコー商事さんって……
もうないって聞いてますけど……」
秀がさやかを見る。
秀 POV
……はい?
「最近急激に御社との取引を増やしている会社では?」
「え、あ……」
まずいことを言ったと気づいた顔。
「す、すみません、余計なことを……」
電話の向こうで担当者が慌てた声で騒いでいる。
秀は電話に向かって短く言う。
「一回切ります。」
通話終了。
秀はまっすぐさやかを見る。
「すみません、失礼します……」
さやかは小走りに会議室を出る。
会議終了後。
同じビルの一階にあるカフェ。
秀は一人、コーヒーを前に考えていた。
秀 POV
マルコー商事がないって……
どういう意味だ?
引っかかる。
その時。
カフェのドアが開く。
さやかが入ってきた。
休憩中なのか、受付の制服のままだ。
秀と目が合う。
お互いに軽く挨拶を交わす。
「あ、先程はどうも。」
秀 POV
また会ったな。
偶然か?
「先程はお疲れさまでした。」
さやか POV
え、ここでまた会う?
カフェはほぼ満席。
仕方なく、さやかは空いている秀の隣に腰かけた。
秀が話しかける。
「あの、さっきのマルコー商事さんって——」
「す、すみません、私は何も知りませんっ!
失礼します!」
逃げるように立ち上がったさやか。
そのとき、さやかがつまずいてコーヒーをこぼす。
秀の全身にコーヒーがかかる。

「あつっ!」
慌てるさやか。
「すみませんっ!
やだ、どうしよう……
火傷してませんよね?」
「えぇ、たぶん……」
顔を拭く秀。
屈み込んで、秀のスーツを拭くさやか。
そのまま、秀の顔を見上げる。
「く、クリーニング代お出しします。
あ、でも、今は現金を持ってないので。
今度お渡しします。
お電話番号、教えていただけますか?」
さやかの顔を見つめる秀。
「そんな……気にしなくていいですよ。」
少し間。
「でも、念のため、LINE交換しておきます?」
「......はい。」
「あ、あと、これ私の名刺です。」
さやかの名刺を受け取る秀。
「しまだ、さやかさん……今後よろしく——」
「あ、ごめんなさい、私もう戻らないと……」
何度も頭を下げて店を出ていくさやか。
秀 POV
あの子、さやかさんって言うのか……
綺麗だけど、少し不器用そうだな。
……気になる。
マルコー商事のことも……
さやか POV
早めに会ってお詫びしなきゃ……
To be continued...
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