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神様のイジワル

    「愛であいつは救えないの!」

    真実を知ってしまったとき、はっきり気づいた。
    私は、凪流なるのことが好きだったんだ。

    凪流と私は、物心ついたときからマンションの隣同士に住んでいた。
    幼稚園から高校まで、ずーっと一緒。
    腐れ縁ってやつね。

    あまりに近すぎて、いるのが当たり前だった。
    幼稚園はずっと同じクラスで一緒にいた。
    それが小3のときに、初めて別のクラスになった。
    家に帰って大泣きしたのは、凪流には秘密。


    そんな凪流を初めて男の子と意識したのは、中学校の修学旅行だった。自由行動のとき、学年一番の美人と言われていた子が凪流を路地裏に呼び出して告白したんだって。

    その話を聞いたとき、不意に動悸が襲ったのを覚えてる。
    結局、凪流は「好きな子がいるから」と断ったらしい。それに安心する私と、凪流の好きな子は誰なんだろうと不安になる私がいた。

    凪流は私より勉強ができなかった。

    でも、野球はスカウトが来るほどの選手だったみたい。てっきり野球の強い遠くの高校に行ってしまうんだと思っていた。


    けど。
    凪流は、高校生になった私の隣の机にいた。

    「凪流、何で快晴高校受けたの?野球弱いし、勉強難しいのにさ」

    「んー、プロになっても食えるとは限らないだろう?野球は趣味だよ、趣味」

    「ふーん、わかるような、わからないような」

    「それにさ、こうして注目されずに『その他大勢』でいられるのが俺にとって楽で居心地がいいんだ」

    「そういうことかぁ。まぁ私も居心地いいかな」

    「好花このかもそう思うだろ?そういうことだよ」

    そう言って凪流は笑っていた。
    いつものように。


    そして迎えた、高校3年生の秋。
    1週間後に運動会を控えていた。

    凪流はまさかの応援団長になったの。
    うちの高校って応援団長が好きな子にお弁当をお願いする、「お弁当スペシャル」ってイベントがあった。
    信じられる?校庭に気になる子を呼び出して、大声でお願いするの。

    凪流は誰にお願いするんだろう?と思っていたら。

    「好花、校庭に来い」

    「は?校庭?って、まさか!?」

    「いいから、ほら」

    そうやって引っ張られてきた私は、凪流の「お弁当スペシャル」を受けたの。

    「好花さーん!僕にー!お弁当をー!作ってくださーい!」

    実質、全校生徒の注目を受ける公開告白よ。

    ずるい。
    一言も私に匂わせたこともなかったのに。
    断る理由なんてないじゃない。
    気がつくと、目から熱いものが流れていた。
    慌てて涙を拭って、答えた。

    「わかりました」

    周りの生徒は大盛り上がり。
    凪流と私は握手をして、弁当作りの約束をした。


    でも、凪流が私のお弁当を食べることはなかった。

    運動会前日の夜に、凪流が倒れて救急車で運ばれたの。少し前から時々風邪っぽいって言っていたけど、なかなか治らないって。

    重症の、急性白血病だった。
    現代の医学では、治療法は骨髄移植しかないんだって。
    ドナーが見つからないと、来年の桜を見られるかもわからないんだって。

    せっかく、せっかく凪流の勇気のおかげで両想いだったってわかったのに。


    神様の、イジワル。

    今からどんなに凪流を愛しても、一緒にいられるのはあと僅かかもしれないなんて。

    凪流の家族はもちろん、うちの家族もクラスメートも全力で骨髄ドナーを探した。知人という知人に、血液検査をお願いする為に頭を下げて回ったわ。
    結局見つからなかったけど。

    私は、親に頼んで浪人することにした。
    受験どころじゃなかったし、少しでも凪流のそばにいたかった。
    でも、家族じゃないから病室にはほとんど入れなかった。

    そして、卒業式の前の日。
    凪流は、お空へ旅立った。

    私に、「好きだ」と言ってくれないまま。
    凪流に、「好き」と言ってあげられないまま。

    卒業式で代理で受け取った、卒業証書。
    運動会のあの日、食べてもらうはずだったお弁当。
    出棺の日に作って棺に入れさせてもらったの。

    そして、特別に連れていってもらった火葬場で凪流が火葬されているときに、凪流のお母さんから手紙をもらったの。

    好花へ

    幼稚園からずっとお前が好きだった。
    でも、恥ずかしくてなかなか言葉にできなかった。
    だから、お弁当スペシャルはチャンスだと思ったんだ。
    好花が受けてくれて嬉しかった。食べたかったな。
    神様はひどいよ。せっかく思いを告げるチャンスだったのに。

    どうやら、俺は長くないようです。

    好花は、これからの好花の道を歩んで下さい。
    空から応援しています。

                        凪流

    読んだとき、ポロポロ涙が止まらなかった。
    その後、私はパニック障害を発症した。
    大学受験どころではなくなってしまった。

    少し症状が落ち着いた後、凪流と小さい頃に登った青空山にパパと登った。凪流と一番近い距離になれる気がしたから。

    そして、私は叫んだ。

    「凪流ー!愛してるよー!!」

    叫びはこだまとなって響き、秋の爽やかな風に乗って深い青空へ消えていった。

    やっと、凪流に届いた気がした。

    (了)


    #片想い文芸部
    #とこ

    >ナルさん、
    今回はテーマ反則ギリギリに挑みました。
    お弁当スペシャルはうちの高校の伝統行事です(笑)
    ご査収下さい。


     
     
     
    道産子物書き| すのう杯2024グランプリ受賞| 第2回灯火杯言葉のチカラ賞受賞| KINDLE書籍「なんのはなしですか どうかしているとしか」寄稿|「なんのはなしです珈ZINE な編」寄稿 プロフィール画はきょうたのさん作、キャッチコピーは本田すのうさん作です。

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