『アミがいた夏』のあらすじ
大学一年生の凪が、少しだけ不思議な女の子と出会ったのは、夏の夜だった。
見た目は十五歳くらい。
外国人のような顔立ちをしたその少女は、聞いたこともない言葉を話し、地球のことをほとんど知らなかった。
そして、彼女は宇宙人だった。
故障した装置のせいで、自分の星へ帰れなくなったという少女。
名前を聞いても、地球人には到底発音できない。
困った凪は、昔読んだ小説に出てきた宇宙人の名前を思い出す。
「じゃあ、アミでいい?」
アミーゴ。
友達という意味を持つ、その名前。
こうして凪と、宇宙人アミの奇妙な夏が始まった。
凪がアミを家へ連れて帰ると、驚くはずのママととーやくんは、
「おかえりー」
と、当たり前のように二人を迎えた。
アミが、自分は「海外に住む遠い親戚の子で、長い夏休みのあいだ預かることになっている」と、二人の記憶を少しだけ変えてしまったのだ。
見た目は凪より幼いのに、妙に落ち着いていて、ときどき凪よりずっと大人びたことを言うアミ。
そんなアミにとって、地球人は不思議な生き物だった。
つらいのに「大丈夫」と言う。
嫌なのに「いいよ」と笑う。
会いたいのに「会いたくない」と言う。
アミは首を傾げる。
「地球人って、嘘つき」
凪は否定しようとする。
けれど、なぜ人間がそんな嘘をつくのかと聞かれると、うまく答えられない。
そんなある日、二人は帰る場所が分からなくなった老人と出会う。
どうにか家族のもとへ送り届けたとき、故障していたアミの装置に、小さな光が灯った。
誰かの不安が消えたとき。
誰かがほっとしたとき。
誰かの心が、ほんの少し軽くなったとき。
そこには、アミの装置を動かす不思議なエネルギーが生まれるらしい。
「じゃあ、人助けをすれば、アミは帰れるんじゃない?」
凪のその一言から、二人の秘密の人助けが始まる。
凪の友達。
助けを拒む人。
誰にも言えない悩みを抱えた人。
さまざまな人と出会ううちに、アミは少しずつ人間の心を知っていく。
そして凪もまた、誰かを助けているつもりで、自分自身の心と向き合っていく。
二人が誰かの心を軽くするたび、少しずつ回復していく装置。
それは同時に、アミが帰れる日が近づいているということでもあった。
なぜアミは地球へ来たのか。
なぜ地球では長く生きられないのか。
そして。
アミという名前に込められた「友達」という言葉の意味を、本当に知ることになるのは――
もう少し、あとのこと。
これは、
ひとりの大学生と、
ひとりの宇宙人が、
誰にも知られないところで誰かを助けながら過ごした、
少し不思議で、
少しおかしくて、
最後に少しだけ切ない、
ひと夏の物語。
『アミがいた夏』
