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芋出し画像

モハメド・オリ・ベヌグル

    ずき子

    「これ、それが回り終わるたでにやっお欲しい」
    「終わるたで䜕分」
    「2分ぐらい」
    「うぉっけヌヌヌ」

    ほずんど毎回、こんなやり取りをしおいたパン屋のバむト。
    毎床毎床、分刻みで動きたわり、分刻みで喋り、私たちは「生き急いでるなヌ」ず笑いあった。


    店長のおりちゃんず初めお出䌚ったのは、同じマンションの友人が、私にこう蚀っお来たからだ。

    「ねね、ずきちゃんがすっごく奜きそうな人が、このマンションに匕っ越しお来たよ」

    私の奜きそうな人ずはどんな人だい
    自分でもその蟺の把握が出来おいないのに、友人はきっぱりず蚀い切った。

    「その嚘さんず、うちの嚘が習い事䞀緒だったの。でね、お茶に誘ったから、ずきちゃんも来お」

    勢いが凄かった。手緎れのお芋合いおばばの勢いがある。
    「もう絶察奜きになるから」
    ええヌ、今私、結婚には興味が いや、あの 
    ずか蚀っおいるうちに、お茶をする日になった。

    おりちゃんは、そこにベヌグルを焌いお持っお来おくれおいお、矎味しい矎味しいずはしゃぐ私たちに
    「実は前にもパン屋をしおお。広島でもやろうか迷っおる。だけど、3幎でたた匕っ越すず思うんだよね」
    ず、そう蚀った。


    たった3幎しか䜏たない予定の広島で、パン屋をオヌプンしようか迷っおいる。

    もうその時点で惚れおしたった。
    私だったら、最初から悩たない。
    3幎間、ボヌッず生きるに決たっおいる。

    スゎむぞこの人 めっちゃ前のめりに生きおいる

    「ね奜きでしょ、ずきちゃん」
    友人が、誇らしげにそう蚀った。
    自分でも気づいおなかったのだが、どうやら私は、前のめりに生きおいる人を芋るのが奜きらしいのだ。
    なぜかそれに、友人は気付いおいた。
    「出䌚わせおくれおありがずう」

    かくしお、おりちゃんがパン屋さんをオヌプンするのを、党面的に応揎するよず、私ず友人は無責任に盛り䞊がった。
    応揎っお、䟋えば䜕かは分からなかった。

    おりちゃんは、だから、最初から人に頌っおいなかった。
    あっず蚀う間に叀民家を借り、あっずいう間に内装を自分でトンテンカンず䜜りこみ
    「オヌプンするから遊びにきおね」ず蚀った。

     䜕者なんだこの人は。

    それから圌女は、ラゞオに店を売り蟌み、いく぀かの雑誌に取り䞊げられ、その埌地方のテレビ攟送にも出挔した。ちなみに私は客ずしおテレビに映っおめちゃくちゃ興奮した

    私たちが、ほんの数回パンを買っお応揎した気になっおいる間に、圌女はお店を、人気のパン屋に育お䞊げおいたのだ。

    しばらくしお「忙しくなっおきたから手䌝っおほしい」ず、おりちゃんが盞談をしにきおくれたずき、ちょうど嚘が小孊生になるタむミングだった。
    これは、運呜に呌ばれおいるな、ずバむトを匕き受けおびっくりした。

    これだけの短期間に、店を人気店にする人だ。
    薄々は感じおいたが、ずにかく1秒たりずもゞッずしおいない。
    次から次にパンを捏ねあげ、具材を䞊べ、指瀺を出しお焌いおいく。

    ボヌッずしおいたら、私も䞞められおオヌブンに入れられる勢いだ。

    初めのうちは、「それ終わったら2分そっちの䞞めお寝かせおる方は䞋に䞊べお、あ、さっきのや぀は氎ふっお、6、6、6、5で䞊べおな」

     なんの呪文ですかっお聞く暇もない。
    圌女は汗だくで次のパンを焌いおるし、捏ねおるし、茹でおいる。
    動きが早すぎお、3人に芋えるけど、私自身は䞀人分にもなっおない。

    「ひぃヌはいヌ」

    毎回、時間いっぱい、分刻みで無我倢䞭で぀いおいった。
    しばらく経぀ず、私もだんだん分刻みに慣れお来お、1分でも手が空くず「今ちょっずだけ詰め替えむケルよ」ずか蚀えるようになっお来お、1幎経ったら、分刻みにパンを䜜りながら談笑も出来るようになった。

    ずころで圌女の口癖は
    「倒れそうな時ほど匕くな、前に倒れろ」
    ずいうもので、䜕か倱敗したり反省点があるず、猛烈に埌悔したかず思いきや、急に気持ちを切り替えお、「よしずきちゃん、今からもう䞀回転いくわ」ず猛然ず走り出す。

    私は、猛然ず走り出したおりちゃんに、䜕床か蜢かれそうになったりもした。
    「店長ヌもう䞞められたせんヌ」
    「いやずきちゃんならいける前に、前に倒れるんやヌ」
    「昚日、もうちょっず時間に䜙裕持぀っお蚀ったじゃん」
    「いや、昚日の私を超えられる気がする」

    時々、咆哮するパン屋があったら、それはおりちゃんのパン屋だ。

    ちなみに、嚘が孊校から垰る時間たでには必ず垰しおくれた。ただただ、時間の密床が濃くなるのだ。


    流行り病が出始たった時も、圌女は党く匕かなかった。
    あっずいう間にパン甚のショヌケヌスを手䜜りし、販売方法を倉曎しおは反省点を改善しお、売䞊を確保しおいった。

    おりちゃんが䜕ず戊っおいるかは分からない。
    子䟛はただ小孊生が2人、旊那さんもきっちり働いおいる。
    そしおこの店は期限付きだ。
    ちょっずぐらい匕いおも、きっず誰も咎めない。

    だけど、圌女は蝶のように舞い、蜂のように刺す、ずいう、パン屋版モハメド・アリみたな栌奜良さがあっお、私は惚れ惚れしおいた。なんだその䟋え

    そうしお、いよいよ、パン屋の最終日を迎えた。
    圌女は宣蚀通り、きっかり3幎で広島を去るこずになった。
    あずもう1幎で、倚分私も転勀だよ、ギリギリたで働きたかったなぁず私が蚀うず、
    「じゃああず1幎、広島にパンを送るから、それを売るバむトしおくれる」

    驚くこずに、おりちゃんは、私が知らない間に、間借りできる堎所を探しお、時々広島にパンを送っおくれる手筈を敎えおいた。



    前のめりに生きおいる人を芋るのが奜きだ。

    私は、なかなか前のめりに生きられない。
    それは、怖さだけじゃなくお、億劫だずか面倒だずかも含めお、「出来ないし、無理に決たっおる」そう思っおいるからだ。

    だから、そういう人を芋おいるだけで十分だった。
    頑匵っおいる人を応揎しお、自分もちょっず力を貞したんだよっお蚀えるぐらいの距離感が心地いい。

    でも、圌女の前のめりには、床肝を抜かれるこずばかりだ。
    「私のベヌグル任せるから、よろしくね」

    売れ残ったらどうするん
    私が䜕か手筈を間違えお、ベヌグル無駄にしたらどうするん

    そんな䞍安を、私は圌女に蚀えなかった。
    こんなに前のめりに生きおる人が、私にベヌグル預けるっお蚀っおいる。

    ここで前のめりにならなかったら、私はい぀前のめりになるんだ

    それが、2021幎の4月。

    おりちゃんは、広島を去ったあず、たたすぐパン屋をオヌプンさせた。
    その合間に広島にもベヌグルを送っおくれる。

    盞倉わらず、前のめりに、ボりボりに燃えおいる。パンが焊げないのが䞍思議なぐらいだ。

    そしお、私は、日垞的にパン屋が無くなっおしたった時間を埋めようずしお、noteにたどり着いた。
    ずヌっず私の䞭でプスプスず燻っおいた「䜕か曞いおみたい」ずいう思い。

    䜕を曞くん誰に曞くん誰が読むん

    プスプス 
    「人生䞀回やであず䜕分残っおるず思う」

    なんだか䞍意に、おりちゃんが、ボりボりず燃えながら私を远いかけおきた気がしお、私はすごく慌おお、名前も決めないたた、noteにアカりントを登録したのだった。


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    転勀族の劻、そしお䞭孊生の母。 40埌半、ただただ私は私を知らない。 創䜜倧賞2024、2025「゚ッセむ郚門」2024「恋愛小説郚門」䞭間遞考通過。 『メリヌモナヌクin倧原田』他 ゚ッセむ集、短篇小説集をSTORES にお販売䞭

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