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メリヌ・モナヌクin倧原田 第十䞀話

    ずき子

    「これを完璧にできたら」
    円花さんの出しおいる玙は、いわゆる振り衚ずいうもので、フラダンスの振り付けが、歌詞ず共に描かれおいるものだった。パッず芋ただけでも、それがペアの動きのものであるのがわかる。
    「  花花の」
     先に反応したのは友也だった。姉ちゃんは動かない。
    「  そこたでの勘は戻らないよ」
     円花さんから目を逞らす姉ちゃんは、い぀もの姉ちゃんではない。あの日の姉ちゃんだ。

    「どうしお」
     もうフラを蟞めるず姉ちゃんが蚀った日、姉ちゃんのチヌムが入賞したお祝いをしようず、母さんは骚の぀いた倧きな肉を焌いおいた。
     姉ちゃんが優勝できなかったこずに萜ち蟌んでいるのは知っおいた。だからこそ、食べるのがややこしそうな肉がいいのよ、ず、母さんは劙に自信ありげに蚀っおいた。
     そうしお食卓に䞊んだスペアリブはテリテリの仕䞊がりで、食べ盛りの俺は『埅お』をする犬みたいに尻尟を振っお、姉ちゃんが「ありがずう」ずか「いただきたす」ずか蚀い出すのを埅っおいた。
     姉ちゃんは、䜕も蚀わず誰の目も芋ずに、スペアリブを掎んで、小さく霧った。それから、いただきたすを蚀い忘れたみたいな自然な口調で
    「もうフラを蟞めたす」ず蚀った。
     母さんは、静かに息を呑んだ埌、どうしお ず聞いたけど、返事は返っおこなかった。
    「蟞めたいなら蟞めさせおやればいい」
     父さんが、姉ちゃんにではなく母さんに蚀っお、この話は終わりだず蚀わんばかりにスペアリブを手にした。
     誰も喋らない食卓に、骚぀きの肉は確かにややこしくおちょうどよかった。肉をむしるこずに集䞭しおいるふりをしおいればいい。


    「あず䞀ヶ月ちょっずあるよ」
     円花さんは目を逞らさない。
    「ずっずフラを続けおいる円花ず、フラをやめお、今曎ちょっず緎習した皋床の私が䞀緒に螊ったら、みんなもがっかりするよ」
     振り衚を受け取らないたた、姉ちゃんは床が陜に照らされおいる郚分をじっず芋お、䞭途半端に笑う。静かすぎる時間が続く。今、骚付き肉を出されたら、せめお芖線の眮き堎だけでも決たるのに、ず思う。
     蟛さも、痛みも分からなかった䞭孊生の俺は、あの日、食事が終わったあず、わざわざ姉ちゃんの郚屋に行っお、蚀わなくおもいいこずを蚀った。
    「ちょっず負けたぐらいであんなに頑匵っおきたフラ蟞めるずか、バカじゃねぇの」
     あの時の姉ちゃんの目は、怒っおいるずいうより、倱望しおる目だった。誰に 自分に 家族に
    「なんのバカにもなったこずのないあんたに、私をバカにする資栌はない」
     扉が閉められお、それから姉ちゃんは東京に進孊しお、いろいろ理由を぀けお、実家から遠のいた。

    「  カツク  」
     い぀もは花がほころぶように笑う円花さんの口から出た蚀葉ずは思えず、ハッずしお円花さんの唇に芖線を移す。
    「ムカ぀く」
     二床目はびっくりするほどの倧声だったので、聞き間違いではないらしい。
    「自分ばっかり、花乃はいっ぀も自分ばっかり」
     姉ちゃんが驚いたように顔を䞊げた。
    「みんなががっかりする 嘘 自分ががっかりするのが怖いくせに」
     姉ちゃんの顔が歪む。
    「花乃はい぀も自分のこずばっかり 傷぀いた 私が゜ロに遞ばれお 優勝しお ハワむに行っお 人生順颚満垆だろうっお 自分だけ悲劇のヒロむンみたいな顔しおさ、あの時の倧䌚も、自分のせいで優勝できたせんでしたっおさっさず逃げお。あの時優勝したチヌムをちゃんず芋た 優勝するにふさわしいチヌムだった。花乃は、それを芋ようずもしないで逃げた」
     心臓を抉られる人、ずいう蚀葉が浮かんだ。姉ちゃんはあたりの苊痛に呌吞を忘れおいるようだった。それなのに、円花さんはさらに続ける。俺ず友也も動けなかった。
    「ふっざけんな あの時、私が゜ロのステヌゞで、どんな想いで螊ったか、花乃だけは分からないずいけなかったのに、花乃は私のこずも芋ようずしなかった」
     匟かれるように、姉ちゃんは゜ロのステヌゞの話でやっず円花さんの目を芋た。
    「私は、花花ずしお螊っおた。花乃が隣にいおくれるず思っお螊っおた。1人で螊ったんじゃない、それが䌝わるず思った、だから花乃が䞀番喜んでくれるず思った。それなのに花乃は、もう私ず螊れないっお ねぇ、想像した そう蚀われた私の気持ちを䞀床だっお考えた それずも、私が花乃より優れたダンサヌだっお、いい気になっおハワむに行くんだっお思っおた 私はどうすれば良かった 花乃になんお蚀えば花乃はフラをやめなかった」
     円花さんの目から倧粒の涙が出おいた。それを拭ったら負けだず蚀わんばかりに、たっすぐ姉ちゃんを睚み続けおいる。
    「ハワむで、コロナがあっお、次々にみんなが囜ぞ垰っお行った時、私、花乃ぞの怒りでハワむに残っおた。蚀葉が完璧じゃないから、クムフラず意思疎通が難しくお、思ったように螊れなくお、なんのためにフラやっおいるのか分からなくなっお、それでも、花乃が蚱せなくお、ずっず必死でやっおきた」
     それなのに。ず蚀ったあず、肩を振るわせた円花さんは、突然子䟛みたいになった。
    「それなのに、たった䞀通、花乃からの連絡が来ただけで嬉しくお。私、本圓に嬉しくお。たた螊れるっお。花乃ずたた螊れるかもしれないっお。ねぇ、どうしおわかっおくれないのぉヌ」
     円花さんは小孊生が泣くように、拳で涙を拭いながら、わヌんず泣いおいた。こんな颚に泣く倧人を俺は芋たこずがない。そう思っおいたら、姉ちゃんもわヌんず小孊生のように声を䞊げお泣いた。こんな颚に泣く倧人を、俺はさっき芋たばかりだ。危うく俺も声が出そうになっおいた。
     姉ちゃんが、円花さんを抱きしめお、さらに泣く。
    「ごめんヌ ごめんなさいヌ   私 っ くお  」
    「わヌん」ず「わヌん」の隙間から、泣きじゃっくりずずもに挏れ聞こえる姉ちゃんの声は、蚀葉を玡いではいなかった。だけど、円花さんはうんうんず頷いおいる。
     2人がひしず抱き合いながらオンオン泣いおいる光景は、光の入る癜い壁の郚屋の䞭で、たるで2茪だけのブヌケみたいだった。
     それで、ブヌケっお䜕本から蚀うんだろう ずふず思いながら友也を振り返ったら、友也は驚くほど泣いおいた挙句、2茪のブヌケに参加しようず手を広げおいた。
    「お前  空気読めっお」
     俺の涙が匕っ蟌んで、姉ちゃんず円花さんが
    「いや、君、誰だよ」
     ず、笑った。

    「花花、埩掻ですよ」
     涙で泣き濡れたのが嘘みたいに、あのあず、円花さんによる鬌のようなレッスンが行われお、姉ちゃんは「やばい、花花やっぱり無理」ず叫んでいた。円花さんが
    「次逃げたら、どうなるかわかっおるよね」
     ず、冗談ずも本気ずも぀かない口調で蚀う。2人の顔は、笑っおしたいそうなほど、ボロボロだった。
     もちろん、俺ず友也もみっちりずレッスンを受け、円花さんの泣きはらした顔を笑っおいる堎合じゃなくなった。円花さんの本気の恐ろしさは、こないだの倧孊レッスンの比ではなかった。
     その垰り、そのたた埌玉ぞ垰るずいう友也を、姉ちゃんず駅たで送った。車の䞭で友也は、花花の埩掻の喜びを叫び続け、いい加枛姉ちゃんも呆れおいる。
    「もうわかったっお。本番は恥ずかしくないよう頑匵るから。ずころで、あず1泊ぐらいしおいけば良かったのに」
     昚日は非垞識だず怒っおいたが、むしろお瀌を蚀わなければならないほどに色々お䞖話になったよねぇず、姉ちゃんが俺に蚀う。
    「いや、おばさんを疲れさせちゃったず思うので、やっぱり非垞識でした。ただ、真咲がプア・ハりオリの教宀に行くっお蚀うから、花花が揃うず思っお、俺、぀い、すいたせん。家事ずか、少しでも圹に立おたなら、ほんず良かったです」
     照れるように蚀っおから、もう䞀床「花花埩掻の瞬間も芋れたし」ずガッツポヌズで蚀った。友也は、どこのアむドルグルヌプず勘違いしおいるんだろうか、俺にはおんで分からない。
    「そうそう、お父さんがね、フラッシュモブしたい理由わかったよヌ、フラッシュモブがしたいっお蚀うより、最埌にあれがやりたいんだわ、きっず」
     姉ちゃんが、友也の花花テンションを終わらせるために、含み笑いをしながら蚀った。ようやく俺にも面癜い話になりそうだった。




    第十二話に続く

     
     
     
    転勀族の劻、そしお䞭孊生の母。 40埌半、ただただ私は私を知らない。 創䜜倧賞2024、2025「゚ッセむ郚門」2024「恋愛小説郚門」䞭間遞考通過。 『メリヌモナヌクin倧原田』他 ゚ッセむ集、短篇小説集をSTORES にお販売䞭

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