【家族会議】最終話《家族の姿》
「あった。あったの、加奈留」
母は泣きそうな顔でスマホを胸に抱いていた。
「本当に見つかったの?」
「見つけたっていうより……見つかったのかな」
そう言って笑った。
私は、三日前の南都くんの言葉を思い出した。
『ないと思って探すと、ない世界を探し続ける。あると思って探すと、ある世界が見えてくる。』
あの時は、何を言っているのかわからなかった。
でも今は、少しだけわかる気がした。
その日の夕飯。
誰もスマホを触らなかった。
パパが
今日あった出来事を話し、
ママが笑い、
私が学校の話をした。
そんな、どこの家にもあるような時間だった。
だけど、その日から我が家は少しずつ変わっていった。
人は、望んだものを手に入れて幸せになるんじゃない。
何を望むかで、生きる世界そのものが変わる。
私たちは、その日から
「何を失ったか」ではなく、
「何を大切にしたいか」を話す家族になった。
家族は、
同じ家に住むためにあるんじゃない。
同じ時間を生きるためにある。
それが、私たちの家族の姿だった。
〜エピローグ〜
「あの頃はよ電話も固定されでだべ、で、留守番してくれるやず、ほれ 何だっけ?」
ばぁさま、うまく言葉が出てこなくて、もどかしく顕都に助けを求めた
「留守番電話?」
「んだんだ それよ。それ。そういったの、ねがったからよ。電話がなってるうちに受話器取らねば、相手の人とは つながらねがったべ」
天国でおばあちゃんと顕都くん そんな事話してるかもね
東花が皿洗いを終え席に着いて話す
「おばあちゃんさ、山神のおばあちゃんと出会った頃って二十歳だったんでしよう。もしかして、今、その時のおばあちゃんと同じぐらいの年齢?」
加奈留が祖母、夏代に尋ねる
夏代は、それには答えず
「わたしも歳とったなぁ」とだけ返した。
テーブルを囲んで夕食後のイッカダンラン。
今夜は、いつもよりたくさんの“家族”が集まっていた
南都くんがテーブルに置かれたみかんを取って皮をむきながら
「ところで、加奈留ちゃん、自分にしてほしいことを人にしてあげる
それが、成功者として生きることだとしたら、じゃあさ、そのために日常の中で、
どう考え
どう動けばいいのか、答え わかった?」
「もちろん。」
わたしは、みんなの顔を見渡して笑った。
「だって、もうすぐ十八歳だから。」
テーブルには、笑い声が広がった。
終わり
[あとがき]
この作品は、応募規定の文字数に合わせて再構成した応募版です。執筆を続ける中で生まれたエピソードや登場人物たちの歩みには、まだ描ききれていない部分があります。いつかその物語も含めた形でお届けできたらと思っています。
〈主な登場人物〉
西野 加奈留(にしの かなる) : 西野 東花の娘。もうすぐ18才
北川 南都(きたがわ なんと) : 加奈留とは腹違いの兄 21才
西野 東花(にしの あずか) : ふたごの姉 加奈留の母 夏代の娘
西野 西花(にしの さいか) : ふたごの妹 南都の母
西野 夏代(にしの なつよ) : ふたごの姉 東花・西花の母 加奈留の祖母
西野 秋枝(にしの あきえ) : ふたごの妹 東花・西花の叔母
西野 晴人(にしの はると) : 東花・西花の弟
山神 治子(やまがみ はるこ) : 南斗郎の母
山神 南斗郎(やまがみ なんとろう)治子の息子
山神 顕都(やまがみ けんと) : 南斗郎の息子
西野 ○○(旧姓 山神)
※物語の核心に関わるため、本編では名前を伏せています。
北川 たき: 南都の育ての母
山神 ハル : 山神治子の双子の…姉妹