
社会に出る前のあなたへ。自分らしく働くために知っておいてほしいこと
わが子がこれから社会に出ていく年齢になり、以前から抱いていた心配が、少しずつ現実味を帯びてきました。
この子は、これから社会に出たときに、ちゃんとやっていけるのだろうか。
何も知らないことで、不利な状況に気づけなかったり、必要以上に我慢したりすることはないだろうか。
そんなことを考えるたびに、心配が募ります。
私も夫も、社会保険労務士です。
労働や社会保険に関する知識は、日々の仕事の中で扱っています。
それなのに、自分の子どもに対して、働くときに必要なことをきちんと伝えられていないのが現実です。
伝えたい気持ちはあるのですが、親の言葉として話すと、なかなか素直には受け取ってもらえません。
子どもにとっては、親の話なんて、そんなものなのかもしれませんね。
もしかすると、わが子と同じくらいの年齢のお子さんを持つ親御さんの中にも、同じような心配をしている方がいらっしゃるかもしれません。
そして、これから働き始める人自身も、期待と同じくらい、分からないことへの不安を抱えているかもしれません。
そうした方たちに向けて、仕事で扱っている知識を活かしながら、私にできることはないだろうか。
そんな思いから、私は今まで、これから社会に出る方に向けて、働く前に知っておいてほしいことをnoteに投稿してきました。
難しくなりがちな内容だからこそ、できるだけ分かりやすく伝えられるよう心がけています。
今回は、これから社会に出る子どもを持つ親として、そして社会保険労務士として、「自分らしく働くために知っておいてほしいこと」を書いてみたいと思います。
働くことのルールを学ぶ機会は、意外と少ない
学校では、勉強のこと、進路のこと、資格のことなど、これから先の人生に必要なことをたくさん学びます。
ただ、実際に働き始めたときに必要になる知識について、きちんと学ぶ機会は、それほど多くないのではないでしょうか。
働くときに必要になる知識は、身近なものばかりです。
でも、その内容は決して簡単とはいえません。
たとえば、働き始める前に確認しておきたい労働条件や、毎月受け取る給与明細。
働いた時間、休憩時間、休日、年次有給休暇。
社会保険や税金のこと。
そして、いつか仕事を辞めるときのこと。
どれも、働き始めると、自分に関係してくるものです。
それなのに、実際に働き始めてから初めて、
「これってどういう意味?」
「何を確認すればいいの?」
などと戸惑う人も多いのではないでしょうか。
その背景には、学生時代に働くことについて学ぶ機会が少ないまま、社会に出る人が多いこともあると思います。
だからこそ、働く前に基本的なことだけでも知っておくことには、意味があります。
アルバイトも、「働く人」であることに変わりはない
社会に出る前であっても、高校生や大学生、専門学生など、学生のうちにアルバイトを経験する人は多いと思います。
はじめてのアルバイトでは、時給やシフト、仕事内容などに目が向きやすいかもしれません。
もちろん、それらも大切なことです。
ただ、アルバイトであっても、誰かに雇われて働く以上、「働く人」であることに変わりはありません。
正社員とまったく同じ制度が、すべて同じように当てはまるわけではありませんが、労働条件、賃金、労働時間、休憩、休日など、働くうえでの基本的なルールは、アルバイトにも関係してきます。
たとえば、働き始める前に、どのような条件で働くのかを確認すること。
働いた時間に応じて、きちんと賃金が支払われているかを見ること。
休憩時間がきちんと取れているか、無理なシフトになっていないかを考えること。
どれも、働くうえでは基本的なことです。
でも、知らなければ、疑問に思うことさえ難しい場合があります。
「アルバイトだから、こんなものなのかな」
「学生だから、あまり言わない方がいいのかな」
そんなふうに思ってしまう人もいるかもしれません。
だからこそ、最初の仕事がアルバイトであっても、働くルールを知っておくことは大切だと思います。
知らないと、疑問に思うことさえ難しい
働き始めたばかりのころは、分からないことがあっても、
「こういうものなのかな」
と受け止めてしまいがちです。
たとえば、シフトに無理があると感じたり、反対に、思ったほどシフトに入れてもらえなかったりしても、
「みんなも同じようなものなのかな」
と思ってしまう。
休憩が十分に取れなくても、
「忙しいから仕方ないのかな」
と受け入れてしまう。
給与明細を見ても、何が支給されていて、何が差し引かれているのか分からないまま、
「たぶん合っているのだろう」
と思ってしまう。
そのようなことに思い当たる人もいるのではないでしょうか。
知っていれば、
「これは一度確認してみよう」
と思えることでも、知らなければ、疑問に思うことさえ難しい場合があります。
何を聞けばいいのか。
誰に確認すればいいのか。
そもそも確認してよいことなのか。
そこが分からないままでは、不安や違和感があっても、そのままにしてしまうことがあるかもしれません。
だからこそ、働く前に基本的なことを知っておくことは、自分を守ることにもつながります。
知識があると、ひとりで抱え込まずに済むことがある
労働や社会保険などの知識は、自分の働き方を確認したり、困ったときに誰かに相談したりするための手がかりになります。
反対に、何も知らなければ、何か違和感を覚えても
「これが普通なのかな」
と自分の中で片づけてしまい、相談するきっかけを逃してしまうことがあります。
そもそも、疑問に思ってよいことだと気づかないまま、働き続けてしまうこともあるかもしれません。
知識があることで、すべての問題が解決するわけではありません。
それでも、ひとりで抱え込まずに済むきっかけになることはあると思います。
将来、経営者になる人・なりたい人にも知っておいてほしい
働くことに関する知識は、労働者、つまり会社やお店などに雇われて働く人だけに必要なものではありません。
これから社会に出る人の中には、将来、会社の社長になりたい人、お店を開きたい人、家業を継ぐ予定がある人もいるかもしれません。
そのように、経営者として人を雇う立場になる人にとっても、働くルールを知っておくことは、とても大切です。
たとえば、人を雇うときには、労働条件をきちんと伝える必要があります。
給料のこと、働く時間のこと、休みのこと、社会保険のこと。
どれも、働く人にとっては生活に関わる大切なことです。
そして、自分が雇われる立場を経験することにも、意味があると思います。
自分が会社やお店などで働いた経験があれば、
「最初にきちんと説明してもらえると安心できる」
「給与明細の見方が分からないと不安になる」
「休みについて聞きづらいこともある」
といった感覚を持ちやすくなるかもしれません。
その感覚は、将来、人を雇う立場になったときにも役に立つと思います。
働くルールを知っていることは、雇われる立場の自分を守るためだけではありません。
将来、もし自分が経営者になったとき、従業員に安心して働いてもらうためにも、必要な知識です。
社会に出る前に知っておいてほしいこと
働く前に、細かい制度をすべて覚えておく必要はないと思います。
ただ、
「これは一度確認した方がいいかもしれない」
と思えるだけでも、ずいぶん違います。
詳しい内容を覚えていなくても、
「そういえば、そんな話を聞いたことがある」
と頭の片隅に残っているだけで、必要なときに調べたり、誰かに相談したりするきっかけになります。
だから、これから社会に出る方にも、まずは基本的なことを少しだけ知っておいてほしいと思っています。
ここからは、私が特に知っておいてほしいと思うことを、いくつかに分けて書いてみます。
働く前に、労働条件を確認する
まず知っておいてほしいのは、働き始める前に、どのような条件で働くのかを確認することです。
給料はいくらなのか。
働く時間はどのくらいなのか。
休日や休憩はどうなっているのか。
いつ、どのように給料が支払われるのか。
こうしたことは、働き始める前に確認しておきたい大切なことです。
はじめてアルバイトをするときや、はじめて就職するときは、
「採用してもらえた」
という気持ちの方が大きくなって、条件を確認するところまで意識が向かないこともあるかもしれません。
ただ、労働条件は、安心して働くための、自分と会社やお店との大切な約束です。
分からないことがあれば、確認してもよいことだと知っておいてほしいと思います。
給与明細には、働くための知識が詰まっている
給料が振り込まれると、まず気になるのは口座に入った金額かもしれません。
もちろん、実際に使える金額を確認することは大切です。
ただ、給与明細には、働くときに必要な知識がぎゅっと詰まっています。
何が支給されているのか。
何が差し引かれているのか。
働いた時間や残業代は、どのように反映されているのか。
社会保険料や税金は、どのように関係しているのか。
ひとつひとつの項目を見ていくと、給料だけでなく、働く時間、社会保険、税金など、自分の働き方や生活に関わることが見えてきます。
もちろん、給与明細の書き方は会社によって違いますし、すべてが分かりやすく書かれているとは限りません。
それでも、まずは振り込まれた金額だけで終わらせず、給与明細に何が書かれているのかを見てみること。
分からない項目があったときに、
「これは何だろう」
と思えること。
その積み重ねが、自分の働き方を知るきっかけになると思います。
働いた時間を、自分でも把握しておく
給与明細を見るときに、あわせて意識しておきたいのが、自分がどのくらい働いたのかを把握しておくことです。
シフトに入った日。
働き始めた時間と、終わった時間。
休憩を取った時間。
残業をした時間。
細かく正確に記録し続けるのは、難しいかもしれません。
それでも、自分がどのくらい働いたのかを、スケジュール帳やスマートフォンのメモに残すなどして、自分でも分かるようにしておくことは大切です。
そうすることで、給与明細を見たときに、
「自分が思っていた時間と違うかもしれない」
と気づけることがあります。
また、記録を残しておくことで、自分がどのくらい働いているのかを後から振り返ることもできます。
思っていたよりシフトに入っていたり、学校や生活とのバランスが崩れていたりすることに気づくこともあるかもしれません。
働いた時間の記録は、給料を確認するためだけのものではありません。
自分の体調や生活を守るためにも、大切な記録になると思います。
困ったときは、ひとりで抱え込まない
働いていると、自分だけでは判断しにくいことも出てきます。
給与明細を見ても、よく分からない。
シフトのことで悩んでいる。
体調が悪くて休みたいけれど、どう伝えればいいのか分からない。
休むときは、代わりに出てくれる人を自分で探さなければいけないのかな。
そんなふうに迷ったときは、自分だけで抱え込まないでほしいと思います。
家族、学校の先生、信頼できる大人など、まずは話せる人に話してみるだけでも、気持ちが少し軽くなることがあります。
ただ、身近な人には話しにくいこともあるかもしれません。
そのようなときは、行政の相談窓口などに相談する方法もあります。
もちろん、相談したからといって、すぐにすべてが解決するとは限りません。
それでも、誰かに話すことで、自分が何に困っているのかが見えてくることがあります。
分からないまま、ひとりで抱え込んでしまう方が、ずっと苦しくなってしまうこともあると思います。
だから、困ったときは、身近な人でも、相談窓口でもかまいません。
ひとりで抱え込まず、誰かに話してみてほしい。
そのことも、社会に出る前に知っておいてほしいことの一つです。
最後に
私自身、社会保険労務士の勉強を始める前は、労働や社会保険のことをほとんど知りませんでした。
その後、勉強や仕事を通して、働くことや社会保険のしくみを少しずつ知っていきました。
その中で感じたのは、こうした知識は、専門家だけのものではなく、誰の生活にも関わるものだということです。
仕事で使う知識としてだけでなく、自分自身や家族の働き方や生活を考えるうえでも、知っていてよかったと思うことがたくさんあります。
ただ、その内容は本当に複雑です。
法改正が行われることも多いため、専門家であっても、すべてを常に把握しておくのは簡単ではありません。
大切なのは、すべてを覚えておくことではなく、「これは確認した方がいいかもしれない」と気づけることだと思います。
働き始めると、楽しいことばかりではなく、戸惑うことや、思うようにいかないこともあるかもしれません。
そんなときに、分からないまま我慢し続けたり、「自分だけが悪い」と思い込んだりしないでほしい。
働くことは、ただ言われたことをこなすことだけではありません。
自分の時間や体調、生活、これからの人生ともつながっています。
だからこそ、働くことについて知っておくことは、自分を大切にすることにもつながると思います。
今回は、働くことを中心に書きましたが、社会に出る前に知っておいてほしいことは、ほかにもたくさんあります。
健康保険や年金、雇用保険、労災保険など、生活を支える制度のこと。
税金のこと。
どれも、自分の生活に関わる大切な知識です。
ただ、そうした知識も、働くことと深くつながっています。
社会に出て給料を受け取るようになると、社会保険料や税金とも関わるようになります。
病気やけがをしたとき、仕事を離れることになったとき、そして将来の年金を考えるときにも、生活を支える制度と関わる場面が出てきます。
だからこそ、まずは「働くこと」について、ほんの少しでも知っておくこと。
それが、社会に出たあと、自分の生活や将来を考える土台になるのではないかと思います。
最初から、すべてを分かっていなくても大丈夫です。
ほんの少しでも知っていることがあれば、必要なときに立ち止まったり、誰かに相談したりするきっかけになります。
その小さな知識が、いつか自分を守る力になるかもしれません。
これから社会に出るあなたが、自分の生活や将来を大切にしながら、自分らしく働いていけますように。
この記事が、そのための小さなきっかけになれば嬉しいです。
これから社会に出る方に向けて書いた記事は、マガジンにまとめています。
よろしければ、こちらもあわせて読んでみてください。