「シェフ、お代わりください」― 朝のバタバタを変えた、ひとつの遊び心
前回は、きょうだいへの関わり方について書きました。声のかけ方や距離感、1対1の時間の作り方、そんな工夫の話でした。
その最後に予告した通り、今回は「見通しを持たせる工夫」です。舞台は、1日でいちばん忙しい、朝の支度の時間です。
▼ 前回の記事はこちら
急かせば急かすほど、うまくいかない
朝は時間がありません。着替え、朝ごはん、歯磨き、持ち物の準備。やることは山ほどあるのに、子どもは子どものペースでしか動いてくれません。
「早くして」「もう時間ないよ」「急いで」。焦る気持ちのまま言葉を重ねても、なぜか子どもの動きは遅くなる。むしろ、こちらの焦りが伝染して、機嫌まで悪くなることもあります。
気合で動かそうとすればするほど、うまくいかない。これは、多くの家庭で共通する朝の景色ではないでしょうか。
わが家であった場面
「シェフ、お代わりください」
ある朝、いつも通りバタバタしていた食卓で、ふと思いついてこう言ってみました。パンをお皿にのせながら、「こちらメロンパンになります。そしてこちらが塩パンになります」。
給仕のふりをしただけです。特別な仕掛けはありません。
でも、子どもの反応は違いました。「シェフ、お代わりください」「シェフ、美味しいです」。すっかりごっこ遊びに乗ってくれて、和やかな空気のまま、食事のスピードも自然と上がっていきました。急かさなくても、時間内に食べ終えられたのです。
忙しいからと急き立てることが、実は逆効果だったのかもしれません。和やかな雰囲気の方が、親にも子にも、結果的に余裕を生んでいました。
行く前に確認、帰ってきたら振り返り
もうひとつ、スイミングに通っていた頃の話です。当時、順番を守れない、話を聞かずに遊んでしまう、勝手に離れてしまう、という困りごとがありました。
そこで試したのが、「先生の話を聞く」「隣を歩く」という、ごく当たり前の行動を目標にした、小さなご褒美のしくみです。3回できたらご褒美。週1回のペースなので、だいたい3週間で達成する計算です。
朝、送り出す前に「今日の目標、覚えてる?」と一言確認する。終わったら、「今日はどうだった?」と本人に振り返ってもらう。できたらシールを一緒に選んで貼る。
このシンプルな流れを繰り返しただけで、本人の中に「次はこうする」という見通しが生まれていきました。
なぜ、見通しがあるとうまくいくのか
2つの場面に共通しているのは、「気合で動かす」のではなく、「見通しと、ちょっとした楽しさで動く」ようにした、という点です。
急かす言葉は、子どもにとって「今、何をすればいいか」を教えてくれません。ただ焦らせるだけです。一方で、シェフごっこも、行く前の確認と帰ってからの振り返りも、「次に何が起きるか」「今どうすればいいか」を、子ども自身が見通せる形にしています。
見通しがあると、子どもは自分の行動を自分でコントロールしやすくなります。急かされて動くのではなく、自分から動けるようになっていく。そこに、ちょっとした遊び心が加わると、なお良いようです。

学び
朝の支度に限った話ではないと思います。着替え、片付け、宿題。「早くしなさい」で動かそうとして、うまくいかない場面は、生活のあちこちにあります。
そのすべてに、見通しと楽しさを持ち込めるわけではありません。忙しい朝に、毎回シェフになる余裕はないと思います。それでも、1日のうちどこか1箇所だけでも、気合ではなく工夫で動かす場面を作れると、親も子も少しラクになる気がしています。
今日からできること
小さく試せることを、3つだけ。
① いつもの一場面を、ごっこ遊びに変えてみる。役になりきる必要はなく、事実をちょっと大げさに言うだけでも十分です。
② 出かける前に一言確認し、帰ってきたら一緒に振り返る。「今日はどうだった?」だけで十分です。
③ 「3回できたら」くらいの、小さくて分かりやすいゴールを見える形にしておく。
まとめ
気合で急かすより、見通しと楽しさで動く方がうまくいくことがある
「シェフごっこ」のように、事実をちょっと大げさに言うだけで、空気が変わることがある
行く前の確認と、帰ってからの振り返りが、子どもの中に見通しを作る
すべての場面でなくていい。1日1箇所、工夫で動かす場面があれば十分
朝のバタバタは、これからもゼロにはならないと思います。それでも、急かす言葉をひとつ、遊び心に変えてみる。そんな小さな実験を、また試してみようと思っています。
次回は、「声かけ、ちょっと変えるだけ実例集」を書いてみようと思います。
正直、毎朝シェフになれるほどのゆとりがあるわけではありません。うまくいかない朝の方が、まだまだ多いです。
もしよかったら、あなたのご家庭の「朝のバタバタあるある」や、試してみた工夫を、コメントで教えてください。「うちはこんな工夫してる」でも「全然うまくいかない」でも大歓迎です。
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