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特等席

「最近ね、流れ星が多い気がするの」
彼女は夜空を見上げてそう言った

高台にある駐車場に車を止めて
街の夜景が見下ろせる空が高い場所
軽くシートを倒してリラックスしながら
明日に支障をきたさない時が来るまでの
ドライブデート帰りの最後のルーティン

今日の楽しかった事を振り返ったり
次や今後の予定を立てたり
もちろんキスもしたり
お互いの不満があればそこで話して置いて行く
僕たちにはここはそんな特別な場所だった

「本当だ、また流れた」
「でしょ?これで5つ目」

「これ以上増えたら価値なくなるね」
「でも星のシャワーみたいで綺麗かもよ」

流れ星は宇宙のチリや粒が
地球の大気で燃え尽きて光る物らしい
そして中には燃え尽きずに落下する物もあって
その小さな石を隕石と呼ぶのだろう
中には宇宙人の落とし物だってあるかもしれない

「もし今、大きな隕石が落ちて来たら怖い?」
ふと彼女がそう聞いた

「恐竜がいなくなるほどのやつ?」
「そう、大陸ごと海に沈めそうなやつ」

僕は少し考えて
「こんな特等席で見れるなら最高じゃん」と返したら

彼女は笑って言う
「私もそう思ってた」と

少し離れた場所に止まっていた車が
おそらく自分たちと同じようなカップルが
エンジンをふかして駐車場から出ていった
おそらく彼らのタイムリミットが来たのだろう

「一人じゃ嫌だけど、一緒なら良い最後だと思わない?」

時計の針は22時を刺していて
「そろそろ帰ろうか」と言う言葉を
どちらから切り出すかの空気読みが始まる

「父親が子供の頃に拾ったって言う隕石があってさ」
僕は長くなりそうな話を振った

「え、凄いねそれ」
「見せてもらったけどその辺の石と変わらないよ」
「でも宝物だ」
「お菓子の缶の中に入ってたけどね」

外は静かで、虫の音さえも聴こえない
もしタイムリミットが無ければ
何時間でも、朝までここに留まってしまうのだろう

「この駐車場にも一つくらい落ちてるかもね」
「でも見た目じゃわからないだろうな」
「うん、現行犯で捕まえないと」

現行犯、つまり今まさに目の前で隕石が落ちるのを
実際に目撃するしかないのだろうが
それはよほど低い確率に違いなかった

車のエンジンをつけてライトを照らすと
正面に何か落ちているのが見えて
それは黒こげのポーチみたいな物で

誰かがここでした花火の残骸か、もしくは

「宇宙人の落とし物かな?」
彼女が言った

「確かめる?」
「でも、謎なままの方がロマン無い?」

あの時、二人で宇宙人の落とし物を見たんだ
そういつか誰かに話せる日が来るかもしれない

それが本物じゃなくても
実はただのゴミだったとしても
確かめるまでは僕たちの中ではそれが真実なのだ

「こんな話しても信じる人いるかな?」
「なかなかいないだろうね」
「この手の話が好きな人じゃないと」

「いつかの私たちの子供とかなら?」
彼女はさらりとそう言ってみせた

今日最後の流れ星に何かを願う彼女の
頬に軽くキスをした

「やっぱり地球の終わりはまだ先でいいや」

そう言って僕も目を閉じて星に願うと
頬に彼女の柔らかい唇があたる感触があった

お互いに何を願ったのかは言わなかった
でも、それは聞くまでもないのだろう

「そろそろ帰ろうか」

その、二人の言葉が
同時に重なり綺麗にハモって
また星がひとつ夜空に流れる

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へびのあしあと カフェで書いたりもするのでコーヒー代とかネタ探しのお散歩費用にさせていただきますね。