連載・数値評価で選ぶ日本のベスト・アルバム①RYMの評価とSpotifyストリームが共に高い49枚
どうも。
では、先週ちょっと触れた話の件、アレを連載にすることにしましょう。
https://x.com/_HTE_/status/2026626387008696560?s=20
では、Rate Your Musicで1000人以上がレビューして3.50以上の高得点を出しつつ、Spotifyで1000万ストリーム以上を記録した日本のアーティスト42組のアルバム(多分もう少しいるけど、いたとしてもかなりの重箱)。
— 沢田太陽(Hard To Explain) (@_HTE_) February 25, 2026
編年体で並べて見たけど日本の音楽の変遷もわかって面白かった。 pic.twitter.com/qIRhMpsOsm
2月25日にこういう投稿をしたら、やたらとバズった、という話をしましたよね。このときの趣旨では国際的な音楽レビュー・サイトRate Your Music、こちらにおいて1000人以上にレビューされて5点満点中の3,50ポイント以上を獲得したアルバムで、かつ、Spotifyのストリーミングで1000万ストリームを超えた曲を持つアルバム、という括りでした。
そうなると、これが実はかなり難しい条件でして、該当するアルバムがあまりありません。僕が2月25日の時点で見つけたアルバムを持つアーティストは42組で、「後もう少しあるはず」と思って、その後に時間をかけて調べたら49アーティスト、最終的に見つかりました。
実を言うと52アーティストだったんですけど、和物ジャズ関係で見つかった3アーティストに関しては、いくらリバイバルでの評価とはいえ、日本のジャズ・グレイトと一般に目されるアーティストの10倍から20倍もストリームが多く、さらにいえば、チャールズ・ミンガスよりもストリームされているとかってなって、ちょっと眉唾なものを感じ、さらにジャズ界にとってのバランスも悪いだろうとの判断から今回対象から外させていただいたことを始めに断っておきます。
では、それ以外の49アーティストに関して、ここで一気に見ていきましょう。
こんな感じです!

かなりバラエティに富んだ並びになりましたが、名前をあげてみていくことにしましょう。アルバム名、アーティスト名の横にはリリース年、さらにRYMでのポイントとレビュワー数、そして、ものによってあるその横のカッコの数字は、そのアーティストが当該作品以外にも対象となるアルバムを持っているという意味で、その枚数を意味します。
では、こんな感じです。
Misslim/荒井由実 (1974) 3.68 1152
Seychelles/高中正義 (1976)3.92 8389 (3)
Sunshower/大貫妙子 (1977) 3.71 6661 (2)
Casiopea/カシオペア (1978) 3.92 10372
A Long Vacation/大瀧詠一 (1981) 3.60 1911
First Light/松下誠 (1981) 3.70 2466
midnight crusin'/濱田金吾 (1982) 3.59 1121
浮遊空間/亜蘭知子 (1983) 3.62 2388
Timely!!/杏里 (1983) 3.90 8965
Cologne/秋元薫 (1986) 3.56 3.56 1240
好き好き大好き/戸川純 (1985) 3.62 2745
Blue Blood/X Japan (1989) 3.62 2328
Melting Moment/POiSON GiRL FRiEND (1992) 3.73 6427
Darker Than Darkness/Buck-Tick (1993) 3.79 1871
Viva! La Woman/Cibo Matto (1996) 3.63 5150
空中キャンプ/フィッシュマンズ (1996) 3.85 15818
1996/坂本龍一 (1996) 3.94 6173
Fantasma/Cornelius (1997) 3.79 11166
LOVEppears/浜崎あゆみ (1999) 3.65 1014
FCLC/the pillows (2000) 3.96 3801
勝訴ストリップ/椎名林檎 (2000) 4.01 11286 (2)
3/キリンジ (2000) 3.73 1049
ワンルームサバイバル/Serani Poji (2002) 3.78 3468
Halcali Bacon/Halcali (2003) 3.68 2582
For Lovers/Lamp (2004) 3.91 15667(6)
ソルファ/アジカン・カンフー・ジェネレーション(2004)3.71 3033 (3)
教育/東京事変(2004) 3.76 2147
君と僕の第三次世界大戦恋愛革命/銀杏BOYZ (2005) 3.75 2159
The Book About My Idol Plot On A Vague Anxiety /Toe (2005) 3.77 9498
L.D.K. Lounge Designer Killer/Capsule (2005) 3.72 2373
Mordal Soul/Nujabes (2005) 4.03 24908 (3)
Complete Best/Perfume (2006) 3.79 3177 (4)
呼吸/Lily Chou Chou (2008) 3.96 6523
World Is Yours/Mass Of The Fermenting Dregs (2009) 3.89 16345
シンクロニシティーン/相対性理論 (2010) 3.64 2004
I'm perfect/凛として時雨 (2013) 3.64 1407
フェイクワールドワンダーランド/きのこ帝国 (2014) 3.58 1631
君の名は。/Radwimps (2016)3.83 1684
祝祭/カネコアヤノ (2018) 3.58 1083
だから僕は音楽を辞めた/ヨルシカ (2019) 3.61 1001
834.194/サカナクション (2019) 3.50 1330
潜潜話/ずっと真夜中でいいのに (2019) 3.61 1270
きくおミク2/きくお(2019)3.72 2848
Anticyclone/稲葉曇 (2019) 3.64 1520
Help Ever Hurt Never/藤井風 (2019) 3.56 1133
アダンの風/青葉市子 (2020) 3.99 21487
BADモード/宇多田ヒカル (2022) 3.55 4577 (7)
Our Hope/羊文学 (2022) 3.54 1201
結束バンド/結束バンド(2022)3.87 3567
①対象アルバムを複数枚持っているアーティスト

1位宇多田ヒカル7枚
2位LAMP6枚
3位Perfume4枚
4位Nujabes3枚
アジカン3枚
高中正義
椎名林檎(東京事変含む)
8位大貫妙子2枚
コレに関しては圧倒的に宇多田の勝利でしたね。ズバリ、宇多田ヒカル名義で出したアルバムのうち「初恋」を除く7枚、すべて対象作でした。その中でなぜ「BADモード」なのかというと、そのアルバムが一番レビュワー数が多かったからです。彼女の場合、もとから国際知名度があったところにBADモードがあの年に世界の年間ベストで割とよく入ってた、それによる後追い研究が進んだ結果でもあったと思います。

あとLAMPっていう、00年代から活動してますポスト渋谷系のバンド、この人たちもすごい人気ですね。実際ワールドツアーもやれてるほどの人気ですからね、これは知ってる方は知ってるんですけど、日本人の多くが知らない事実だと思います。
あとはPerfume。国際評価が高いことは耳にしたことのある人もいるかと思います。それから今、高中正義が和フュージョンの世界的ブームの最中なんですよね。僕の息子のアカウントのアルゴリズムにまで入ってくるほどです。イギリスの有名なホールも最近埋めてるとか、そういう話まで聞きます。
②ポイントが圧倒的に高かったもの
1位Mordal Soul/Nujabes 4.03
2位勝訴ストリップ/椎名林檎4.01
3位アダンの風/青葉市子3.99
4位呼吸/Lily Chou-Chou
5位FLCL/The Pillows 3.96

とりわけヨーロッパで絶大な人気を誇りますヒップホップのトラックメイカー、Nujabesの最大ヒット作Mordal Soulが1位です。

あと、林檎が今回、ものすごく強いですね。とりわけ初期。レビューが軒並み1万人レビュー超えの4.0超え。本当はサードが一番評価高かったんですけど、あのアルバムからシングル・ヒットがないので、セカンドになりました。
③全体の傾向 aシティ・ポップ
全体の傾向見てみますと、70年代から80年代はじめにかけてはシティ・ポップの評価が圧倒的ですね。それでしか接点を持とうとしない人が多いというか。高中、妙子、カシオペア、松下、金吾、亜嵐、杏里、あと知らなかったんですけど秋元薫さんという人もそうですね。
でも、僕はこのゾーン、本音言ってキツかった・・・。妙子さんは大好きだし、フュージョン関係は問題なかった(フュージョンはまだムード音楽化する以前のものだし)んですけど、それ以外が・・・。これ、偶然も重なってて、たとえば男なら山下達郎、角松敏生がサブスクにないとか、なぜか松原みきと竹内まりやがポイントで3・30台で落ちて他が通ってしまった、というのがあるんですけど、いくらウィーケンドにサンプリングされたからといって亜蘭知子の歌唱力は・・・。あと杏里は、外国人にはわからない歌詞の部分の言語センスのない痴話の繰り返しがどうにも耐え難く(苦笑)。
④全体の傾向 bバンドブーム〜V系
続いては80sですね。ここは広義の意味でのバンドブームですね。
ここ、戸川純がtiktokのバズリで入っていたりもしますが、80s初頭のパンクに関してはこれ以外も結構評価高いんです。
ただ、80s半ばの一般ブレイク、BOOWYとかレベッカとか、それ以降のものに関してはきわめて浸透度低いです。そこで入ったのがXJAPANとBuck-Tickという、のちのV系のメタル・ルーツとゴス・ルーツのそれぞれの2台巨頭になったのは象徴的な気もします。
⑤全体の傾向 c渋谷系
あと90s以降では渋谷系が圧倒的ですね。
ただし、これ、浸透したのが90sの後半以降なんですよね。日本だと90s入ってすぐからあったブームなのでタイムラグが出来てます。なぜか。ピチカート・ファイヴと、あとこのときはすでにコーネリアスがマタドールからアメリカ・デビューしたのがこの時期だったからです。チボ・マットがアメリカで先行して売れて、その後に日本のものが注目されて起こったことでもあったので。
だからなのか、日本で渋谷系が騒がれなくなった後のポスト渋谷系が強いんですよね、海外だと。LAMPの妙な強さもその表れだといえると思います。セラニ・ポージもそうですね。
⑥全体の傾向 dアニメを通じてのインディ・ロック

あと、日本の90年代ロック、とりわけ後半は本当に黄金期だったと思ってますけど、これが国外に浸透するきっかけとなったのがアニメだった、というのもあります。
僕、当時、なんとなくでしか知らなかったんですけどFLCLとピロウズの果たした役割が本当に大きい。ピロウズ、僕がライブビートやってた頃によくお世話になってて下北界隈では番長みたいなバンドでしたけど、日本の中でのメディア・アテンションが強くない印象だったんですけど、ここでの評価見たら、もう立派ですよ。オリジナル・アルバムでも97〜00年までの4枚は1000人以上レビューの3.50超えてましたからね。正当な評価がされてると想います。
これに続く形でアジカン、あと、時雨もそうなんですってね。ここが入口となって、日本のインディ・ロックを独自に調べたりする人が海外で増えたというのはいえると想います。
⑦全体の傾向 eオルタナティヴなオタク・カルチャー
ここは2000s以降の特徴ですね。日本のインディ・ロックがアニメを媒介にして浸透したのもそうですけど、PerfumeとかHALCLIみたいなサブカルの人たちが愛したオルタナティヴなアイドルとか、セラニ・ポージやLily Chou-Chouみたいな架空をコンセプトにはじめたアーティスト、バンドとか、10s以降になりますが、きくおや稲葉曇みたいなボカロとか、そういうものですね。
この辺はすごく日本カルチャーらしいですね。ただ、気をつけないとならないのは、アイドルといっても、正統派でなく、あくまでオルタナティヴな変わった味付けをされたもの、だということですね。元がアイドルに偏見の強い欧米人にウケるためにはそういう批評上の変化球が必要なのは見逃せないポイントです。
⑧全体の傾向 fガールズ・ロック大国化
あと、00s後半以降のガールズ・ロックに関しては大国状態ですね。
しかもこれ、ルーツ考えた場合に、80年代にもいたんだけど、そこからの影響はほとんど見えなくて、今につながるのは渋谷系以降ですね。渋谷系が、肩肘はらない等身大の女のコがバンドに参加しやすい環境を作ったと思うし、よりギター・メインのバンドだと、やっぱ林檎、ナンバーガールのひさ子ちゃん、スーパーカーのミキちゃん辺りの与えた影響が強いと想います。林檎に至ってはミツキとかリナ・サワヤマみたいな海外在住組アーティストまで影響源にあげてるほどですからね。
あとは「リンダ リンダ リンダ」とか「けいおん!」とかも間違いなくあるでしょうね。このあたりの見せ方が年齢層の低い女の子たちにとってすごくカジュアルだった。ここが大きいんだと思います。この要素は欧米の女の子たちにはない概念なので。
では、次は「惜しかったアルバム49枚」、これに続こうと思います。
