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踊り手と虜

    白い雪原と書いたあとですぐに、どれだけのことをとりこぼしてしまったのだろうかと思い返し、かなしくなる。

    今眼前で起きていることを、写真に撮る。するとわたしの衰えた視力以上に、センサーが光をつかまえてくれる。

    デジタルカメラのフォルダをひらく。
    そこには物事の外面が記録されている。
    言葉とは異なる方法で、光でつづられた。

    しかしわたしはそれを見てやはり、白い雪原、という言葉を想起してしまう。

    ああ、かなしい。

    そんなかなしみを、雪原の舞台で舞う、彼と彼女も感じるのだろうか。いや、言葉をもたないとおもわれる彼らは、どんな風にこの世界を見て、味わって、消えていくのだろうか。

    彼がつばさを、ああもうつばさ、と書くしかない、つばさをひろげる。細い身体よりずっと大きいけど、軽いのだろう、空を飛ぶための器官なのだから。

    白の中で、二つの赤がダンスしている。

    踊りから生まれ、幕間を生きて、また踊る。ステップからステップへ、誰に学んだのでもなく、ただ目の前のお前を、虜にするために。

    くちばしを天にむけて高く上げ、ひとこえ鳴く。
    彼女もそれに答え、歌を重ねる。
    ふたりの合唱が雪原に響き、白樺林の奥へと消えてゆく。

     
     
    2022年仙台短編文学賞プレスアート賞「帰還する光たち」2021年太宰治賞最終候補「三月の子供たち」著者。 最近、好きな言葉は「そうさ100パーセント他力、もう念仏しかないさ」です。

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