
【連載】ヘルメットを脱いだ軍師:第12話(最終回) 引渡完了 ―― 星たちの旅立ちと軍師の背中
ヘルメットを脱いだ軍師:第1話〜第11話あらすじ】
現場監督30年の鉄二は、異動先の総務課で弱小女子プロレス団体の再建を任される。鉄二は品質管理(QC)や施工管理術を指導に持ち込み、ハルナ、ナナオ、ハルカの3人を「最高品質の構造物(レスラー)」へ叩き直す。新屋号「エトワール」として着工した彼女たちは、鉄二の宿敵・近藤の執拗な妨害を退けながら躍進。ついに聖地・後楽園ホールにて「負ければ即引退」の全面対抗戦へ挑む。 仲間の敗北という絶望の中、エース・ハルナは絶対女王・神城鳳那と激突。鉄二の授けた「免震構造」のロジックで猛攻を受け流し、掟破りのジャーマンで女王を撃破。奇跡の「完全竣工」を果たし、団体の存続と輝かしい未来を勝ち取った。
1. 最終検収:聖地の控室にて
聖地・後楽園ホールの喧騒が、遠く潮が引くように消えていく。
絶対女王・神城鳳那を破り、エトワールの存続を決めた直後の控室。そこには、歓喜の絶叫ではなく、深い安督と心地よい疲労が、沈殿したコンクリートのように静かに漂っていた。
「……勝ったんだよね、私たち」 ハルナが、まだ震える手でパイプ椅子に座り、ポツリと呟いた。
「ああ。完璧な勝利だ」 ナナオが、シズカに冷やしてもらった首を摩りながら、力強く頷く。

そこへ、いつもの微糖の缶コーヒーを手にした鉄二が入ってきた。彼はボロボロになった3人の前に立つと、作業着のポケットから例の傷だらけのライターを取り出し、カチンと鳴らして、ついに力強い「青い炎」を灯した。
「お前ら、今日の施工(試合)……現場監督として、公式に『検収合格』を出す」

「監督……!」
「だがな、建物ってのは建った瞬間が終わりじゃねえ。そこから人が住み、歴史が刻まれ、メンテナンスを繰り返して『名建築』になっていくんだ。エトワールっていう屋号は、今日、ようやく更地から建物が竣工したばかりだぞ」
鉄二の不器用な労いの言葉に、3人は顔を見合わせ、それから今日一番の笑顔で「はい!」と返事をした。
2. デモリション(解体)と大出世への道
そこへ、ひどく疲労し、苦虫を噛み潰したような顔の近藤オーナーが現れた。その手には、1枚の書類が握られている。