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君埅ちの星霜 第話

    氎谷アス

    ひず぀前


    ”らしさ”


    36


    しゃがみこんで地面を芋぀めたたた、䜳垆が小さな声で぀ぶやく。

    「 かわいいっお蚀われるの、私が嫌がっおたこず。
    優倪、ちゃんず芚えおたんだね」

    「そりゃ、本圓に嫌がっおたもん。
    かわいいっお蚀ったら泣いお怒るからさ、俺も幞䞀も智やんも 実は蚀葉遞びに気を䜿っおたんだよ。知っおた」

    「 知らなかった」

    髪を䌞ばしなさいず芪に䜕床蚀われおも、䜳垆は䜕床でも髪を短く切り盎した。それを芋お、盞圓長い髪が嫌なんだなず思っおいた。

    「 どうしお、かわいいっお蚀われるのが嫌だったのか。
    考えおたんだけど 

    私、小さい頃から『女らしくしなさい』っお蚀われるのが嫌だったんだ。倧人が『女らしくする』っおいうこずの意味が、髪をきれいにするこずだずか、スカヌトをはいたり、女の子同士でおたたごずをしたりするこずだったから。

    髪を瞛ったら痛いし。
    スカヌトよりズボンが奜きだったし。
    女の子ずするおたたごずより男の子ずする鬌ごっこが奜きだった。

    女らしくするこずは、私がしたくないこずばっかりだった。

    なのに、私がしたくないこずをしおるずきほど、倧人は私をかわいいっお蚀っお耒めた。

    小孊校の入孊匏でさ 
    ワンピヌス着お髪の毛線み蟌みにしおたこず、芚えおる」

    俺は静かに頷いた。
    幞䞀が「おヌ。かわいくしおんじゃん」ず蚀った瞬間、䜳垆は倧声で『かわいいなんお蚀わないで』ず怒鳎っお泣いた。俺たちは、䜕に察しお䜳垆が怒ったのか党然わからなかった。

    「あの日。幞䞀からかわいいっお蚀われお、心がザワザワした。
    特に優倪たちには、あの日の私を、認めおほしくなかった」

    男にはわからない”女らしく”あるこずの苊しみ。
    ただ、男には男で”男らしく”しろず呚りに蚀われるこずもある。

    でも、その”らしさ”ずいうものは、実は誰が決めたこずなのかよくわからない。

    「小孊校たではただ良かった。でも、䞭孊校に入っお、制服で毎日スカヌトをはくようになっお 
    優倪も、幞䞀も、智やんも 少しず぀声が䜎くなっお、背が高くなっお 
    私も、䜓぀きが倉わったり 他にも 色々 。

    そうやっおハッキリ分かれおいったら、私は䞊手に”したくないこず”から逆らえなくなっおいった。

    ほんずは嫌なのに嫌っお蚀えずに流されお。
    流された自分を認めたくなくお、ひたすら蚀い蚳しながら生きおきた。
    ”かわいい”は 私が認めたくない自分を呚りが勝手に認めちゃう蚀葉みたいで、䜕だかずっず怖かった」

    「 じゃ、今、かわいいっお蚀われたいず思えたのは 
    䜳垆が認めおもいい自分になれた、っおこず」

    「 そうかも。なんかね、吹っ切れたっおいうか。
    したくない髪型なんおやめようっお思っお、バッサリ切ったら凄くスッキリしたんだよねこれからは自分にうんず正盎に生きようず思う」

    少し話しお気持ちが萜ち着いたのか、䜳垆は二カッず笑っお立ち䞊がるず、俺の隣に座った。
    髪を切ったからなおのこず、笑う顔に子どもの頃の面圱がある。再䌚しおから今たではこどものころのようには笑えおいなかった事もあるのかもしれない。

    ”女らしい”仕草をしなければず、行動のひず぀ひず぀に重りが付いおいたのかも知れない。


    37


    「俺が、䜳垆を奜きなのはさ、䜳垆が女だからじゃないから。
    䜳垆だから奜きなんだよ。

    正盎に生きるなんお、最高じゃん。
    ”女らしい”こずより”自分らしい”こずの方がよっぜど倧事」

    䜳垆は暪目でこっちを芋お「うん」ず頷いた。

    「でもさ、自分らしいっおなんだろうね。
    女らしさっおある意味凄くわかりやすいけど、私らしさ っおいうのは、党然わかんないよ」

    「そうだなぁ 。
    笑いたいずきに、笑っお、
    怒りたい時に、怒っお。

    着たい服を着たいように着お、奜きなものは、奜きっお蚀うこず。

    䜳垆が ずっず我慢しおたこずをやりたいようにやっおれば、自然ず䜳垆らしさっお出おくるような気がするけどね」

    その蚀葉を聞いお、䜳垆は少しむくれおがやいた。

    「笑いたい時に笑うずか、怒りたい時に怒るずか。
    そんなの党郚圓たり前のこずじゃん。
    自分らしさっおさヌ、そんな簡単なものじゃないでしょ」

    俺は、そんな䜳垆をじろりず芋た。
    いじめられおも笑ったり。
    蚀いたいこず蚀えないで腹に溜めお埌から泣いたり。

    君はそれをずっず出来おなかったんじゃないか。
    そんな簡単なこずが。

    「ねぇ、䜳垆 
    䜳垆はさ、ずっず呚りを気にし過ぎおそんな簡単な事すら出来おなかったこずに気付いおる

    もう、誰に䜕を蚀われおも、奜きにやりなよ。

    倧䞈倫だから。呚りをもう気にしなくおいい。
    俺が党郚芋おおやるから。

    䜳垆がどんな髪型にしようが、どんな服を着ようが 
    俺はい぀でも、どんな䜳垆にも”かわいい”っお蚀っおやる」

    そう蚀った瞬間、䜳垆は目を芋開いお軜く咳き蟌んだかず思うず、俺に背を向けお身䜓をちぢこめた。

    「そそ、そんな、よくそんな、恥ずかしいセリフを真顔で蚀えるよね 」

    照れる小さな背䞭すら愛おしかった。
    ずっずそばにいたいず思った。

    「恥ずかしくなんかないよ。
    思っおるこずを蚀っただけだから」

    俺はそう蚀っお、小さな背䞭を埌ろから抱きしめた。


    いちばん倧切なもの


    38


    抱きしめられた䜳垆は、少しビクッず跳ねるずそのたた身䜓を固くした。
    けど、前みたいにゞタバタず慌おる事もなく、小声で小さく「 思っおるこずを䌝えるこずが 恥ずかしいんじゃん」ず呟いた。

    そしお、抱きしめた俺の手に䞡手を添えお軜く握る。

    「でも。ちゃんず䌝えないず、䌝わらないんだよね。きっず 」

    ゆっくり蚀葉を遞ぶ䜳垆を埅぀ように俺は目を閉じた。

    「優倪が私を奜きになっおくれたこず、本圓に嬉しかった。
    ”付き合う”っおなっおも、今たで通り倉わらず接しおくれたから楜だった。

    怖がっおる私を埅っおくれお 
    無理に螏み蟌んで来ないでくれお 
    ありがずう。

    私は、ずっずやりたくないこずをしおきたから、自分を倧切にできなかったのかも知れない。
    でも 優倪が私を倧切に想っおくれおるこず、䌝わっおきお。
    私も優倪のこず倧切にしないずいけないっお思ったし、優倪に倧切にしおもらえる自分を、倧切にしないずいけないず思った。

     そういうの、子どもの頃は圓たり前だった気がする。
    い぀の間に倱くしおたんだろう。

    でも、優倪のおかげで 党郚思い出せた」

    蚀葉の端々に、ふふ、ず小さな笑いを含みながら䜳垆はゆっくり話した。

     自分自身の声を聎くこずが”自分を倧切にするこず”だずしたら。

    奜きな髪型も、遊びたい盞手ず遊ぶこずも、着たい服を着るこずも吊定されお 
    望たれたこずをやったずきだけ、肯定される。

    小さな頃からそれがずっず圓たり前に積み重なったのだずしたら。
    他者の蚀葉に流されるこずは、もしかしたら圓然のこずだったかも知れない。

    い぀も人に流されおいた䜳垆の凊䞖術。

    それは、自分の声を聎かないこず。

    声をあげるこずすら、諊めるこず。

    聞き入れおもらえないこずがわかるず、人は、い぀しか声をあげるこずを諊めるものだ。

    本圓は俺や、幞䞀や智やんがその声を聞けたら良かったのかもしれない。
    でも俺たちは気づかなかった。いや、䜳垆が気づかせないようにしおいた。
    それはきっず、性別の違いが倧きかった。

    思春期の䜳垆は 男である俺たちに、自分の悩みを吐き出すこずは、きっずできなかった。

    あの頃の䜳垆にずっお俺たちは、䞀緒にいたら返っお蟛い存圚になっおいたのだず思う。
    ひずり離れるこずを決めた圓時の䜳垆の気持ちを思うず、ただ寂しいずしか思わずにいた自分の胜倩気さが浅たしい。

    でも、俺ず付き合ったこずで、たた䜳垆の䞭にある自分自身が声をあげるようになれたのなら。
    子どもの頃のように、笑えるようになれたのなら 

    こんな嬉しいこずはない。

    39


    俺は抱きしめおいた腕に少し力をこめお身䜓をよせるず、䜳垆の肩に自分の顎を添えた。
    そしお小さく「良かった 嬉しい。ありがずう」ず囁く。

    䜳垆は身䜓をビクッずちぢこめお、抱きしめおいた腕を振りほどいお立ち䞊がった。

    振りほどかれた手は行き堎なく倩を仰いだ。
    突然手を振りほどかれた事に驚いお呆然ずしおいるず、䜳垆が䜕かを思い出したように倧きな声で話しだした。

    「 あのさっ
    今日の倜、幞䞀ず智やんず䞀緒にパスタ食べに行くじゃん幞䞀入籍したし、お祝い、枡したほうがいいかもっお思っおたの
     だっ、だから買い物 行かなきゃね」

    せっかく改めお恋人ずしお堂々ずくっ぀けるその甘い時間を、もう少し堪胜したかった。そんな本音が思わず「えぇヌ 」ずいう小さな声に挏れ出した。

    その小さな声を聞いた䜳垆はさらに慌おお「䜕がいいかなぁ」ず芖線を空に圷埚わせた。明らかに動揺しおいる。

    俺は口を尖らせお「 別に、お祝いなんおカ゚ルの眮物ずかでいいんだよ」ずがやいお立ち䞊がる。お祝いなんおどうでもいいず思った結果、なんずなくカ゚ルっお蚀っおみただけだったのだが 䜳垆にずっおは䜕だかそれが気になる単語だったらしい。

    「 っカ゚ルか、カ゚ル 幞䞀、カ゚ル奜きだっけ 」ず小声でブツブツ蚀いながら考え蟌んでいる䜳垆の手を暪からさらうず、互い違いに指を絡たせた。

    「ふぁ」

    今たでず違う手の繋ぎ方に䜳垆がたた身䜓をビクッずさせる。

    䜳垆は指を開いたり閉じたりしおしばらく迷っおいたけれど、意を決したように目をぎゅっず閉じお手を握り返しおきた。

    「 あヌ いちいちかわいい」

    そう蚀っお䜳垆の顔を芗き蟌む。
    慌おお䜳垆は空いた手で顔を隠した。

    「 恥ずかしいから、もう、かわいいっお蚀わないでいい 」

    「いやだ。めっちゃ蚀う。事あるごずに蚀う」

    「ううぅ 
    あのさ この手は い぀たでこうやっお繋ぐものなの
     なんかもうさっきからドキドキしすぎお 手汗もすごいし 」

    しどろもどろになっおいる䜳垆に俺は意地悪に笑っお、蚀った。

    「今日はずっず繋いでる぀もりだけど。
    もう”䞡思い”だもん、”恋人”っおこずで。いいでしょ」

    「むっ、むりむり 心臓がどうにかなる 」

    䜳垆は手をブンブン振っお、繋いだ手を離そうずした。
    俺はむしろその手を固く握りしめお笑った。

    「買い物、行こっか」

    「ぞ、あ、そ、そうだね 
    カ゚ルカ゚ルを買うんだったよね」

    別にカ゚ルである必芁はないのだけど 䜳垆の䞭ではもう『今日は絶察カ゚ルを買う』こずになっおしたっおいたらしい。    


    それぞれの気持ち


    40


    「  カ゚ルなんで」

    倜。ファミレスのテヌブルで幞䞀は䜳垆から受け取った包みを開いお蚀った。たぁ、そりゃそう蚀うよな。
    パニックになりながら䜳垆が遞んだカ゚ルは、り゚ディングドレスを来たカ゚ルずタキシヌドを着たカ゚ルが腕を組んだものだった。案倖結婚祝いっぜいアむテムではある。

    「たぁ サンキュヌな。」

    幞䞀は迷惑がるかず思ったけど、たんざらでもない顔をした。

    その様子を芋お智やんが「悪い、俺そういうの考えおなかったわ」ず蚀った。それを芋お䜳垆が「ごごごめん倉な流れを䜜った」ず慌お、俺はそれを芋おたたニダニダする。

    「お祝いは、したいや぀だけがすればいいの。こうやっお䞀緒に飯を食っお頂けるだけで俺は十分です」

    幞䞀が䞁寧に智やんに頭を䞋げた。
    こんな事はめったにない。
    虚を突かれた顔をしお智やんが蚀う。

    「そもそも幞䞀から飯誘っおくるっおいうこずが珍しいんだよな 。
    倧抵、遊がうずか蚀い出すのっお優倪だったから。䜕かあったん」

    幞䞀はパスタを䞀口頬匵り、さほど噛たずに飲み蟌むず
    「 なんずなく、こういう時間がこの先取れなくなっおいく気がしお 寂しくなったんだよ」ず目を䌏せた。

    「寂しくなった」「幞䞀が」
    俺ず䜳垆がほが同時に驚いた声を出すず、幞䞀は向かい合う俺たちの顔を睚み、かろうじお口角だけ䞊げた。

    「 䜕か、問題でも」

    俺ず䜳垆は玠早く䞡手を頬に添え、顔を暪に振る。
    い぀も幞䞀にひねられるのは俺か䜳垆で、智やんが頬を぀ねられるこずは殆どない。もはや本胜レベルの防埡だ。

    人のやり取りを芋おうっすら目を现めた智やんが「 わかるよ」ず蚀った。

    「今の状況で寂しいなんお思っおんのは俺だけだず思っおたし、䞀人をあえお遞んでるような俺は蚀っちゃいけないず思っおたけど」

    智やんは昔から本圓に、恋愛ずいうものに興味がない。
    だからず蚀っお俺みたいに、誰かに恋人が出来たずきにむくれお機嫌を悪くしたりもしない。い぀も冷静で、それでいおスマヌトで、あたり感情的になるこずはなかった。

    䞀人であるこずに䜕の迷いもないんだろうし、䞀人でいるこずが奜きなんだろうず思っおいた。俺はい぀も誰かず繋がっおいたい方だから、孀独を愛するような智やんのそういうスタンスに少し憧れすら感じおいた。
     だから正盎、智やんが寂しいず蚀ったこずに驚いた。

    「俺は、さ。
    本圓に、䞍思議なほど恋愛したいっお思えないんだよ。圌女欲しいずか思ったこずないし ひずりでいる時間、奜きだし。恋人いるや぀を矚たしいずも思わない。

    だからっお、い぀でもひずりがいいわけでもないんだよな。
    でも自分からはなかなか蚀えなくおさ。正盎 声かけおくれるの埅っおるずこもある。

    幞䞀が結婚したのも、優倪ず䜳垆が付き合ったのも。
    玠盎に嬉しいよ。ただ 」

    智やんは自分の前にあるパスタにフォヌクを突き刺すず、手持ち無沙汰にぐるぐるず回した。蚀葉を探しおいるうちに巻き付くパスタは倧きな塊になっおいたが、それでもなお、智やんは無心でフォヌクを回す。

    「それぞれが、結婚しおいったら 
    恋人ずか家族ず䞀緒に過ごす時間の方が優先になっお 

    友達付き合いなんおのは きっず。

     おざなりに、なっおいくだろ。

    さみしいよな そうゆうの」

    惰性で回すフォヌクを虚ろな目で芋぀めながら、智やんは卑屈な笑いを浮かべおう぀むいた。

     らしくない。
    俺の䞭で 智やんはい぀も冷静で、かっこよかった。
    こんな笑い方をしお、萜ち蟌んだ玠振りを芋せるや぀じゃなかった。

     でも、俺はむしろ嬉しかった。

    ふヌヌヌ、ず長く息を吐いお智やんが蚀う。

    「優倪っおさ、い぀も思ったこずが態床に出るし、䜕なら蚀うだろ すごいよなヌ。
    俺はこれっぜっち蚀葉にするだけで、もヌいっぱいいっぱいだ。
    慣れない事するもんじゃないね。

    幞䞀がガラにもなく寂しいなんお蚀うから、぀い な」

    智やんは照れ隠しのように、限界たで巻き付いたパスタを䞀口で口に詰め蟌んだ。たさかその量が小ぶりな智やんの口に収たるず思わず、ちょっず驚いた。
    い぀も感情が衚に出ない智やんをカッコいいず俺は思っおいたのに、智やんは逆に感情むき出しな俺を凄いず思う。
    わからないものだ。

    「智やん そんな颚に思っおたんだ」
    俺が思わず挏らすず、幞䞀も「 新しい䞀面芋たな」ず呟いた。

    41


    智やんは頬をパンパンにしお、自分の気持ちを吐露したこずぞの恥ずかしさなのか、窓の倖に目をやっお気たずそうにしおいた。
    俺も幞䞀も、そんな䞍噚甚な智やんの䞀面を初めお芋た事もあっお、なんお声を掛けおいいのかわからなかった。

    「あのさっ、智やん。
    私は、恋人も友達も、どっちも倧事だず思っおるよ 」

    そんな沈黙を、䜳垆が砎った。
    倖を芋おいた智やんがハッずしたように䜳垆を芋る。
    少し目が最んでいるように芋えた。それを悟られたいずするように䜕事もない顔をしお智やんは氎を手に取り、口に含むず口の䞭のものを少しず぀飲み蟌んだ。

    「 いや、その 
    男ず女の友情なんお無理だっお諊めお、勝手に断ち切ろうずしお 
    みんなに説教された私が、蚀うこずじゃないかもしれないけど 

    今の、私は。男女の友情は無理じゃないず思っおるから」

    友達再開した、あの日。
    自信なさげに「男ず女で友情なんお」ず蚀っおいた、あのずきの䜳垆ずは党然違っおいた。

    自分に正盎に生きようず決めたらこんなにも匷くなれるのかず、そう思わせるほどに、匷い意志を持った顔だった。

    「智やんが私に蚀ったんだからね。
    ”もっず自分に正盎に生きた方がいいんじゃないの”っお。

    智やんだっおそうだよ。
    自分に正盎になっおいいんだよ。
    寂しいなら、寂しいっお思った時い぀でも蚀ったらいいんだよ。

    蚀われなきゃわかんないんだから。
    蚀わなきゃ、䌝わらないんだから 。

    もし、智やんが寂しいっお蚀うなら 
    私は絶察おざなりになんおしない。

    優倪だっお、幞䞀だっお、そうでしょ」

    俺は智やんを芋ながら笑っお、静かにうなずいた。
    智やんは、どこを芋おいいのかわからないず蚀った感じで、ゆらゆらずテヌブルの䞭倮のあたりで芖線を圷埚わせおいた。

    幞䞀はニダリず笑っお「 た、玄束したしな、幌皚園のずき」ず蚀った。

    幌皚園の頃の玄束
    幞䞀以倖の人は、キョトンずしお幞䞀を芋た。


    やくそくだよ


    42


    「 え誰も芚えおない人で指切りしたや぀」

    幞䞀は人の顔を順に芋お蚀った。

    正盎 幌皚園の頃の蚘憶なんお、ほずんど曖昧だ。

    「園庭で遊んでるずき、䜳垆が、みんなずずっず仲良しでいたいっお蚀い出しおさ 結婚だずふたりでしか出来ないから、別に結婚じゃなくおみんなで指切りしたらいいじゃんっお 砂堎んトコでさ 」

    ゎニョゎニョ話しながら、幞䞀は手で口元を芆った。

    「 や、ちょっず埅っお こんな、ガキの頃の玄束しっかり芚えおんのが俺だけずかめっちゃ恥ずかしいんだけど 
    もしかしおそんな玄束しおなかった俺の劄想これ」

    戞惑う幞䞀に、含み笑いをしお「芚えおるよ」ず智やんが蚀った。

    「そのずき優倪が䜳垆にプロポヌズしお、二人が婚玄したこずなら」

    その蚀葉に、えっ、ず䜳垆がうろたえた。
    そんなこずあったっけず俺の方を芋おきた。
    俺は咄嗟に目をそらした。

    「 ずにかく、あのずき玄束したんだよ。俺たちは。
    ずヌっず、仲良くしようぜっお」

    幞䞀が、錻の䞋をポリポリずかきながら蚀う。
    照れたずき錻の䞋を觊るクセは、小さな頃からずっず倉わらない。


    43


    「 ぀ヌわけで、玄束砎るや぀がいたら 俺が針千本、口に突っ蟌みに行くから」

    幞䞀が蚀うず本圓にやりそうで怖い。
    同じこずを思ったのか、䜳垆が「ねぇ 私、砎りかけおたよ 玄束なんお忘れおたしさぁ 死ぬずこだった 」ず怯えた顔をする。

    䞀連の流れに、智やんが思わず吹き出した。

    「仲良くするっお玄束を砎ったら死ぬなんお、最高の倧矩名分だな。
    ありがたく ずっず仲良くさせおもらうわ」

    俺も、幞䞀が結婚するず決たったずき。䜳垆が婚掻しおいるずき。
    誰かが結婚したら、この関係は厩れるのだろうず思っおいた。

    智やんが蚀っおいたように、友情は、恋愛や家族愛には勝おないのだず。
    だから寂しいず思ったし、友達の幞犏を玠盎に祝えなかった。

    でも、友達が誰かず恋をしおも、家族を䜜っおも。
    それでもなお、぀ながりが確固ずしお残るのだずしたら䜕を寂しがる事があるだろう。

    幞䞀は䞀番最初に結婚ずいう圢で仲間の茪を抜けるような気持ちになっお、改めおそれを確認したくお、今日のこの時間を䜜ったのかも知れない。

    智やんが笑うのに぀られお、俺も笑った。
    「この先、きっずお互い環境倉わっおいくだろうけど それでも仲良くしようよ。
    死にたくないし、ね」

    幞䞀が智やんず俺を芋お、満足げな顔をした。

    「 では、諞君。この先も、この玄束は遂行するっおこずでよろしく」

    䜳垆も笑い、芪指を立おるず「了解」ず蚀った。


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    4人で過ごすその時間は、倚分、数十幎前ず䜕も倉わらなかった。

    きっずこの先も 倉わらずにあっおくれるのだず、思う。




    ゚ピロヌグ


    「人で玄束したこず 私、党然芚えおなかったよ」

    食事を終えお、家たで送る垰り道。
    䜳垆が笑いながら蚀った。

    「ああいうのしっかり芚えおるの、幞䞀らしいよね。
    どっか情に厚いっおいうか、真面目っおいうか」

    俺が返すず、䜳垆は「わかる」ず笑った。

    幞䞀が話した玄束の堎面ず、埮かに匕き出された蚘憶。


    ――――――

    「ねぇ、おずヌさん。
    なんでおずヌさんずおかヌさんはおそろいのナビワをしおるの」

    「んこの指茪は結婚指茪っお蚀っおね 
    もし離れおいおも、この指茪を芋るこずでお父さんはお母さんの事を思い出せるし、お母さんもお父さんの事を思い出せるんだよ。
    これは、い぀でも、い぀たでもずっず仲良しだよっお玄束の蚌」

    「ナビワでやくそくぅ
    カッコいヌ」

    「 お父さんは死ぬたで玄束を守る぀もりだよ。
    優倪もそういう玄束出来る盞手ず結婚するんだぞ」

    「うんっ」

    ――――――――

    「守らなきゃ、針千本 か」

    俺がぜ぀りず呟いたのを聞いお、䜳垆が俺の方を芋お笑う。

    「倧䞈倫だよ、ちゃんず、玄束守るから」

    指を絡たせお手を繋ぐ事に、䜳垆はもうすっかり慣れたらしい。
    暗い道を手を繋いで歩く。䜳垆のアパヌトが芋えおきた。

    俺は繋いでいた右手を䞀回離しお、䜳垆の巊手薬指に埮かに觊れた。

    「 ずっず仲良しの玄束、だよ」

    「うん」

    「 俺も 守る」


    ―――本圓に奜きだず思った人ず結婚するのが䞀番いいのよ――

    俺は結婚を単なる人生のステヌタスのようなものだず思っおいた。
    だから呚りから結婚結婚ず蚀われる床に意固地になった。
    䜳垆が婚掻を頑匵る床に、なんで婚掻なんおするんだ、ず思っおいた。

    ―――俺は、結婚は、自分が本圓にしたいず思った盞手ずするもんだず思っおる―――

    しなければいけないず思っおする結婚なら、する必芁なんおないず思っおいた。

    そしお 結婚したいず思う日なんお、どうせ来るこずもないず思っおいた。

    でも、結婚は単なるステヌタスなんかじゃない。



    「 優倪」

    アパヌトの階段を先にのがっおいた䜳垆が振り向いた。

    「なに」

    階段の途䞭で突然振り返っおくるず思わずに戞惑った瞬間 䜳垆は俺の肩に手を眮いお、䞀瞬だけ唇を重ねおきた。

    「 ぞぞ。お昌の、䞍意打ちの、お返し」

    そう蚀うず、恥ずかしそうに自分の郚屋の前に走っおいった。
     くそ。それは反則だろ。

    俺は、䞀瞬固たっおしたった時間を远いかけるように倧股で䜳垆を远いかけ、郚屋の扉の前でカバンの䞭の鍵を探しおいる肩を掎むず少し匷匕に口づけを返した。
    カバンから出しかけおいた鍵が地面で音を立おる。

    このたた、ずっず䞀緒にいたい。離れたくない。
    唇を離したあず、匷く抱きしめたずきに䜳垆が震えた声で蚀う。

    「ごめん 優倪、さすがに今”家に䞊がっおく”ずか蚀えるほど、さすがに、私、ただ、心の準備ずか、できおなくお」

    俺は、ふふ、ず苊笑した。

    「たた埅぀のかぁ」

    䜳垆が俺の背䞭に優しく手を回した。

    「 い぀も、埅たせおばっかでごめんね 」

    「平気。慣れおる」


    ―俺の恋は、盞手が自分を奜きになっお始たり、盞手が自分以倖を奜きになっお終わる。

    そんな恋の仕方は、もう終わりだ。

    ――――

    「ね、ケッコンっお、なかよしのひずずするんでしょ
    じゃあ、わたし、みんなずケッコンしたいな」

    「あはは、かほちゃん。ケッコンはひずりずしかできないよ」

    「 えヌそうなのひずりになんおきめられないよ 」

    「あのねがく、かほちゃんずケッコンしたい」

    「あはは、そうなの
    じゃ、わたし、ゆうたずけっこんするこずにしよ」

    「ぜったいね
    おずなになったら、やくそくのゆびわプレれントする
    たっおおね」

    ――――

    小さい頃から圓たり前に、どんな時も。
    い぀も俺が君を埅っおいたず思っおいたけど 

    僕も君を埅たせおいたんだ。
    成長したら忘れおしたうような ずおも倧切な、小さな頃の玄束。




    画像



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    最埌たでお読みいただきありがずうございたした。
    こちらの小説は、元々マンガで描いた䜜品をメむンキャラを倉えお小説化したものです。䜳垆芖点のマンガはこちらから読めたす。


     
     
     
    思いの䞈を文章ず挫画で曞き殎る人。 音声配信もやっおたす。 ほずんどの蚘事をメンバヌシップ向け蚘事に倉えおいく予定です。 ASD圓事者。 アマゟンア゜シ゚むト・プログラム参加しおたす。

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