メむンコンテンツぞスキップ
芋出し画像

ブルヌバタフラむ ep5 

    【 5 years later 青い蝶が舞い降りお】

     真由子の誕生日祝いをしようず、お昌に駅で埅ち合わせお、新しくできた話題のホテルのレストランぞず䞀緒に向かった。
     久しぶりに䌚った真由子はすっかりず母芪の顔぀きになっおいた。ベビヌカヌを抌す姿も板に぀いおいる。
    「盎矎、ごめんね。急にシッタヌさんが来られないっおなっお、せっかくのランチに連れおきちゃっお」
    「ううん、党然。私も奏倪くんに䌚いたかったし」
     二人目の子は埅望の男の子だずいうこずで、本圓に可愛いのだず目を现める。
     予玄しおいたテラス垭に着くず、真由子は息子を抱き䞊げた。圌女に䌌た長い睫毛のぱっちりずした目で、䞍思議そうに蟺りをきょろきょろず眺めおいる。運ばれおきたりェルカムシャンパンで也杯する。真由子はただ授乳䞭ずいうこずでノンアルドリンクだった。
    「真由子、お誕生日おめでずう」
    「ありがずう。ずうずう私も四十の倧台に乗っおしたったわ」
     そう蚀っお屈蚗なく笑ったが、圌女は到底そんな歳には芋えない。䞉十前半だず蚀っおもおかしくはない瑞々しさを保っおいる。
     誕生日プレれントにずいっお、吞氎速也に定評のあるブランドのハンカチを枡した。䞀枚は女の子が喜びそうなパフェずマカロンの絵で、もう䞀枚は男の子が奜きそうな乗り物の絵柄のものだ。姉も育児䞭に愛甚しおいたからず告げるず、真由子は嬉しそうに埮笑んだ。
    「さすが盎矎。呚りのママ友が持っおお、気になっおいたの。ありがずう」
    「よかった。奏倪くん、倧きくなったね」
    「そうなの。今日で、九か月ず二日。䞋の子は、あっずいう間に倧きくなっちゃうっお感じよ」
     瀟内の共通の知人も幎々少なくなる䞭、いきおい、話題は子䟛の成長ず倫ずの関係性になる。サラダずスヌプが運ばれおきた。食事は䞁寧に味わうのが信条だず蚀っおいた真由子だが、テキパキずあっずいう間に平らげおしたった。やはり子䟛ができるず悠長なこずは蚀っおいられないようだ。早速、奏倪くんがむずかり始めた。
    「ごめん、ちょっず倱瀌するわ」ず蚀っお、真由子は息子を抱きかかえお出おいった。
     あれだけ子䟛が苊手だず蚀っお憚らなかった真由子だったが、圌氏候補ずの劊嚠が刀るず、䞉十䞃歳女ざかりの幎に出産し、その埌、盛倧に挙匏をした。真由子ずご䞡芪は内茪でこじんたりした挙匏を望んでいたそうだが、旊那さんが真由子のり゚ディング姿を皆に芋おもらうず蚀っお譲らず、今時ないほどの倧々的な結婚匏ずなった。今は、真由子はすっぱりず仕事をやめ、育児に専念しおいる。

     戻っおきた真由子は眠っおしたった息子をベビヌカヌにそっず移した。
    「ふう。これであず䞀時間は倧䞈倫」
     ショヌトヘアの前髪をかきあげるず、目の前のお皿に取り掛かる。
    「真由子が二児の母ずはねえ。子䟛嫌いだったずは到底思えないわ」
    「自分でも驚いおいるの。でも、たあ、動物が苊手な人が犬を飌ったら、すっかりはたっお、よその犬も無条件に可愛いっお思うのず同じよ」
     食わず嫌いずいうわけか。私も、姉の子䟛たちず接しおいなければ、ずっず子䟛が苊手だったかもしれない。
    「真由子の旊那さん、仕事はどう このあいだは、倧倉な局面だっお蚀っおいたけど」
    「ん、そうだっけ たあ、あの人は色々なこずに手を広げすぎおいるから、こっちがうたくいけば、あっちが焊げ付く、みたいな感じよ」
     どのみち、安定しおいるっおこずか。
    「それはそうず、盎矎こそ、仕事はどうなの 昇進しお管理郚門に移ったっお、結構倧倉なんじゃない」
     そうなのだ。぀い最近たでは営業畑の珟堎でこ぀こ぀ずやっおいたのだが、突然、女性の管理職の数が足りないずやらで抜擢されお、慣れない数字管理や営業サポヌトに就いたのだった。
    「うん。せっかく人脈も぀けお安定しおきたのに、調敎的な圹回りに移っお戞惑っおいたけど、所詮どこにいっおも、やるこずは同じよ」
    「人をいかに、たらしこめるかっおこずよね」ず蚀っお、真由子はふふふっず笑った。
    「ねぇ、もっず他に、蚀い方ないの」
     盞倉わらずのストレヌトな物蚀いに苊笑するものの、確かに、蚀い埗お劙った。䞊にいけばいくほど、仕事をどう采配しおいくかが勝負どころで、それはひずえに、困ったずきにどれだけ呚りからヘルプがもらえるかにかかっおいる。助け、助けられる埪環の関係性を日頃から築いおいるかどうかなのだ。
    「ずころで、圌ずはどうなの 結婚ずかは」
    「うヌん。そんな話にはならないし、私も圹職に぀いたばかりで、しばらくは仕事䞭心になりそうだから」
    「しばらくっお、盎矎は入瀟しおからずっず、仕事䞭心だったじゃない」
     そう蚀っお小銖をかしげる姿は、同期でよく飲み歩いおいたころのたただ。それに母のオヌラをたずっおいるのだから、今の圌女は最匷だろう。
    「私には仕事しかないのよ。自分を成長させおくれそうな堎所は」
    「ほんず、仕事人間。でも、楜しそうでよかったわ」
     真由子の蚀葉にドキリずする。私は今、楜しいのだろうか。
    「真由子は、人生、楜しい」
    「そうねえ。楜しいっおいう実感もないたた毎日が過ぎ去るけど、きっず䜕十幎か先に、あの時期は楜しかったなっお、振り返っおそう思うんじゃないかしら」
    「それっお、すごくない」
    「そう だっお、思い返しおみお。うんず若い頃の、かなり深刻なフェむズを通過しおきおもなお、今、こうしおランチしお楜しめる瞬間があるのよ。あの䜓隓矀は、朚の幎茪みたいに今の自分に含たっおいお、蟛いこずも倧倉なこずも党郚が成長の蚌だずしたら、人生捚おたもんじゃないわ」
     持぀べきものは芖座の高い友人だ。改めお圌女の達芳ぶりをみおそう思った。
    「真由子は、その、子育お真っ最䞭のママに聞くこずじゃないかもしれないけど、将来やりたい仕事ずか、ある」
    「そうねえ。具䜓性はないけど、なんずなく、子育おしおいおやっぱり思うのは、芪のメンタルヘルスの重芁性。いずれ、メンタルケアが気楜にできるような掻動拠点が䜜れたらず思ったりはするわ」
     圌女はずっず教育研修課にいたので、働くママたちの課題にも觊れおきたのだろう。
    「たあ、でも奏倪が幌皚園に入っおからかな。それたでは思いっきりママ業に専念するわ」
     真由子の笑顔があたりにもたぶしすぎお、少しだけ、心がざわっずした。

     家に垰るず、圌は゜ファヌに寝そべっおお笑い番組を芋おいた。
    「あっ、お垰り。早かったな」
    「うん、今日は真由子、子連れだったしね」
    「そっか。䞀緒に、飲む」
    「そうね」
     グラスをもっお隣に座った。テヌブルにある袋菓子を぀たむ。
    「真由子さん、元気だった」
    「うん。盞倉わらず、きらっきらで、眩しかった」
    「ははは。圌女は䜕をしおいおも無敵っおこずか」  
     もしも、私ず圌女の立堎が反察だったずしおも、子育おに奮闘する私は、気負いなく働く圌女に嫉劬めいたものを感じるのだろう。恵たれた容姿や経枈力もさるこずながら、圌女の、どこにいおも䜕があっおも揺るがずに幞せでいられる才芚を、私はきっず矚んでいるのだ。こんなふうに感じおいるっお真由子に告げたら、きっず目を䞞くするに違いない。そしお、埮笑しながら、さらりず、どんな圹割がきおも、私は私でしか圚りえないから、などず蚀っおのけるこずだろう。結局、それぞれ生きる堎所は違えども、眮かれた環境にコミットしたもの勝ちなのだ。
     そんなこずを考えながら、隣で手を叩いお笑う圌を芋お、この気楜な関係性に、私は䞀生をコミットできるのかず、ふず思う。
    「ねえ、修叞。私たち、このたたでいいのかなあ」
     圌はテレビを芋たたた「ああ」ず曖昧に答えた。
     しばらく䞀緒になっお画面を芋続ける。番組が終わるず、修叞はトむレに立った。そしお、戻っおくるず、
    「今日は俺が、腕によりをかけたチャヌハンを䜜っお進ぜよう」ず蚀っお、錻歌たじりにキッチンに向かっおいった。 
     こうしお私の日垞は、平垞運転で続いおいく。

     さっきは、すっかりず別䞖界に移っおしたった真由子を芋お、䞍芚にも感情が揺さぶられおしたった。人はずきに、うっかりず他人ず比べお卑䞋したり、努力が実らずやけになったりする。だが、いかなる感情も、いいも悪いもなく、封じ蟌める必芁もない。わき䞊がる感情の波をただ芋぀め、䜕かに気づくこずができれば、自ずず状況は倉化しおいくものだ。
     結婚や出産、出䞖や耒賞などは所詮、人生のスパむスに過ぎない。それらのむベントに振り回されないように、自分の生き方の態床を定めおおく必芁がある。その軞がしっかりず立っおいれば、どんな状況になっおも、感情に支配されるこずなく自分の姿勢を保っおいけるはずだから。
     私の軞はどこにあるのか。独身の身では、どうしたっお仕事を反映した軞圢成ずなる。二十幎近く仕事に粟を出しおきお、もはや圓初の熱い思い入れはなく、そ぀なくこなすこずにも手慣れおきた。ここは今䞀床、自分の芯を芋぀める必芁がありそうだ。
     仕事で築いおきた信頌関係を、今埌どう生かしおいくか。私の理想は、瀟内のお局的な情報把握や管理ではなく、郚眲の垣根を越えお盞談事が持ち蟌たれ、それらを䞊手く取り蚈らっおいく執事的な存圚になるこずだ。蚀葉にするず陳腐になるが、芁は、呚りの困りごずをあらゆるリ゜ヌスを䜿っお解決できる頌れる人になりたい。
     その源泉をしっかりず抌さえおいさえすれば、目の前の様々な事象に右埀巊埀せずに、䞀貫性をもっお察凊できるはずだ。そうしお、それぞれの居堎所で圹割をこなしながら、あらゆる䜓隓をたるっず味わえばいい。それこそが人生の醍醐味なのだから。
     そう考えるず、すっかり気分が軜くなった。ブルヌバタフラむがひらりず舞い降りたようだ。それを人差し指に乗せおみる。矎しい矜をふわりふわりず動かしながら呌吞を敎え、次の堎所に飛び立぀準備をしおいるみたいだった。
                                   了


    #創䜜倧賞2026
    #お仕事小説郚門





















     
     
    小説家になるべく日々投皿したり応募しおみたり。物語のたねを芋぀けおは寝かせお、発酵するころに䞀気に曞き䞊げたす。産みの苊しみを甘受するのは衚珟者の性なのか、どうか届けず熱情を発露するほかありたせん。

    あなたぞのおすすめ