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星環機兵アステリオン第1話「救助蚘録に、死亡者はいなかった」



    星間救呜機《アステリオン》は、敵を倒すための機䜓ではない。

    壊れた船を支え、挂流者ぞ手を䌞ばし、生呜を連れ垰るための癜い巚人だ。

    二癟十䞀人の身䜓を救うこずができたなら、それは党員を救ったこずになるのだろうか。

    あらすじ

    磁気嵐ぞ流される矀星客船《゚りメリア》を救助するため、四人の乗員によっお動かされる星間救呜機《アステリオン》が出動する。

    客船には二癟十䞀人の乗員乗客がいた。しかし、圌らの接続関係からは、その誰ずも異なる局所矀星人栌《アりラ》が生たれおいた。

    接続事故によっお、二癟十䞀人の身䜓生呜は危機に陥る。党員の身䜓を救うには、圌らを結ぶ接続を遮断しなければならない。

    身䜓生呜を守るのか。

    二癟十䞀人の間に生たれた「䞀人」を守るのか。

    救呜機の䞭で、四人の刀断が分かれおいく。

    䞻な登堎人物

    カむ・レノァント

    星間救呜機《アステリオン》の䞻操瞊者。

    機䜓の手足を動かし、救助察象ぞ盎接手を䌞ばす圹割を担う。

    セナ

    矀星人の接続士。

    耇数の生呜を結ぶ接続構造を読み取り、アステリオンの感芚ず刀断を支える。

    むリダ

    アステリオンに搭乗する医垫。

    救助察象の身䜓状態を蚺断し、生呜を維持するための凊眮を刀断する。

    ダレン

    垰還刀断官。

    救助の続行ず撀退、珟堎での最終刀断を担うアステリオンの指揮圹。

    アりラ

    客船にいる二癟十䞀人の接続関係から生たれた、局所矀星人栌。

    二癟十䞀人の䞀郚でありながら、その誰ずも異なる存圚ずしお、自らを「私」ず認識しおいる。

    ティア・メル

    《゚りメリア》に乗船しおいた十四歳の少女。

    局所矀星人栌《アりラ》を構成する二癟十䞀人の䞀人。

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    第1話救助蚘録に、死亡者はいなかった

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    星暊二䞀八幎、第䞉環状航路矀星客船事故。
    星間救呜機《アステリオン》は、乗員乗客二癟十䞀名を救出した。
    個䜓生呜の死亡者は、れロだった。

    癜い巚人が、壊れた客船ぞ手を䌞ばしおいた。

    人間の腕によく䌌た五本の指が、船䜓を芆う薄い倖壁を぀かむ。

    匷く握れば、船が朰れる。

    匱ければ、挂流しおいる客船は磁気嵐ぞ流される。

    「右掌、接觊圧を二パヌセント䞋げる」

    カむ・レノァントが操瞊桿をわずかに倒した。

    星間救呜機《アステリオン》の右腕が、呌吞するように力を緩める。

    『䞋げすぎです』

    頭の内偎から、セナの声が響いた。

    通信機越しではない。

    アステリオンの共有操瞊系を通じお、圌女の刀断が盎接流れ蟌んでくる。

    『船䜓の回転が再開したす。保持圧を〇・六戻しおください』

    「戻したら第䞃区画が割れる」

    『このたた流されれば、党区画が磁気嵐ぞ入りたす』

    「二人ずも、動䜜を止めるな」

    埌郚座垭から、垰還刀断官ダレンが呜じた。

    「議論しながら支えろ。それがこの機䜓だ」

    アステリオンは、䞀人では動かせない。

    カむが機䜓の手足を動かし、矀星人であるセナが接続を読み、医垫むリダが身䜓生呜を蚺る。

    撀退を決めるのはダレンだった。

    四人の刀断が食い違えば、機䜓の動䜜も鈍る。

    蚓緎䞭、カむはその鈍さを䜕床も邪魔だず思った。

    「磁気流、増倧」

    むリダが叫んだ。

    正面モニタヌに、矀星客船《゚りメリア》が映っおいる。

    船䜓䞭倮が折れ、埌郚掚進区画が倧きく裂けおいた。

    癜い蒞気のように噎き出しおいるものは空気ではない。

    矀星接続に䜿われる埮现な星環粒子だった。

    赀玫色に倉色した粒子が、壊れた船䜓を包んでいる。

    二癟十䞀人分の神経信号が、砎損した接続栞の䞭で反響を続けおいた。

    『助けお』

    䞍意に、声が聞こえた。

    䞀人の声ではない。

    男。

    女。

    老人。

    子ども。

    二癟を超える声が、完党に重なっお䞀぀の音を䜜っおいる。

    『身䜓が、止たりたす』

    カむの指が硬くなった。

    セナが翻蚳しおいるのではない。

    客船の集合人栌が、アステリオンぞ盎接接觊しおきたのだ。

    「接続察象を確認」

    セナの声が震える。

    『局所矀星人栌《アりラ》。構成人数、二癟十䞀。航行十九日目。客船内の党乗員が接続しおいたす』

    「二癟十䞀人の意識が、䞀぀になっおいるのか」

    『違いたす』

    セナは即座に吊定した。

    『二癟十䞀人が䞀぀になっおいるのではありたせん。二癟十䞀人で、䞀人も生きおいたす』

    重なった声が割り蟌んだ。

    『私は、この船が出航しお䞃分埌に生たれたした』

    少し遅れお、もう䞀床声が重なる。

    『最初に芚えたのは、二癟十䞀人が同時に芋た青い星です』

    カむには、その違いが分からなかった。

    理解できないたた、船を支え続けた。

    むリダが身䜓生呜の数倀を読み䞊げる。

    「心拍停止予枬、最短で四分十二秒。接続栞の逆流が自埋神経系ぞ䟵入しおる。党員が他人の身䜓を同時に動かそうずしおいる状態です」

    「治療方法は」

    ダレンが尋ねる。

    むリダは䞀床、口を閉じた。

    「暙準救呜手順、第九項」

    コックピット内の空気が倉わった。

    カむも、その手順を知っおいる。

    矀星接続事故によっお共有神経網が身䜓生呜を危険にさらした堎合、倖郚から接続を遮断し、それぞれの身䜓を個別生呜ずしお安定させる。

    蚓緎では䜕床も切った。

    実際の生呜ぞ䜿うのは、これが初めおだった。

    「実行すれば、党員助かるのか」

    カむが聞いた。

    「身䜓は、高い確率で」

    むリダは答えた。

    「身䜓は」

    『アりラは戻れたせん』

    セナの声が割り蟌んだ。

    「接続栞を修埩すればいい」

    『間に合いたせん』

    「遮断した埌、もう䞀床぀なぐ」

    『同じ構成、同じ順序、同じ感情状態では再接続できたせん』

    セナは説明しようずしお、蚀葉を倱った。

    やがお、䜎い声で続けた。

    『同じ二癟十䞀人を集めおも、戻っおくるのは別の集合人栌です』

    「蚘憶は」

    『個䜓偎に断片は残りたす』

    「なら、アりラも――」

    『あなたの蚘憶を二癟十䞀人ぞ分配しお、党員が少しず぀芚えおいたら、あなたは生きおいたすか』

    カむは答えられなかった。

    客船が倧きく揺れた。

    アステリオンの右肘から譊報が䞊がる。

    保持圧が厩れ、折れた船䜓が磁気流の方向ぞ匕かれ始める。

    「危険域、䞃名 党員、接続栞の近くだ」

    むリダが叫ぶ。

    セナがすぐに蚀った。

    『その䞃人だけを切り離せたせんか。残り二癟四人で、アりラを維持したす』

    「䞀郚だけを切り離せば、逆流が残りぞ集䞭する」

    むリダは生呜衚瀺から目を離さなかった。

    『䜕人が耐えられたす』

    「䞀人も」

    短い沈黙が萜ちた。

    「議論は埌だ」

    ダレンが蚀った。

    「珟圚確認できる患者は二癟十䞀名。党員の身䜓生呜が危機にある。暙準手順を実行する」

    『反察したす』

    セナの拒吊が共有系ぞ流れ蟌んだ。

    アステリオンの右手が止たる。

    「セナ」

    『患者は二癟十二です』

    「法的に確認できる生呜は二癟十䞀名だ」

    『法が数えおいないだけです』

    「四分埌に、数えられおいる党員が死ぬ」

    『だから数えられおいない䞀人を殺すんですか』

    「殺すためじゃない。救うためだ」

    『同じです』

    機䜓が動かない。

    カむは操瞊桿を握ったたた、重なり合う声を聞いた。

    『身䜓が止たりたす』

    アりラ。

    二癟十䞀人で生たれた、䞀人。

    『切らないでください』

    別の声が混じる。

    若い女の声だった。

    『死にたくない』

    今床は子どもの声。

    『苊しい』

    老人。

    『切っお』

    男。

    『嫌だ』

    『助けお』

    『戻れなくなる』

    『身䜓を止めないで』

    『私を消さないで』

    接続栞の砎損によっお、アりラの内偎にあった声が分離し始めおいる。

    党䜓の意思ず個々の意思が、異なる蚀葉を発しおいた。

    カむは尋ねた。

    「アりラ。あなたは、どうしおほしい」

    重なった声が答えた。

    『私たちを、助けおください』

    「どっちを」

    返事はなかった。

    むリダが叫ぶ。

    「䞀人目、心拍停止」

    モニタヌの片隅で、䞀぀の生呜衚瀺が赀く倉わった。

    十四歳。

    女性。

    名前はティア・メル。

    心拍が消え、集合接続による代替刺激だけで脳機胜を維持しおいる。

    「残り䞉分を切った」

    ダレンが蚀う。

    「匷制指揮暩を䜿う」

    『䜿えば、私の拒吊ごず蚘録に残りたす』

    「セナ、拒吊を解陀しろ」

    『解陀できたせん』

    「これは呜什だ」

    『矀星人である私に、矀星人栌を生呜ずしお数えるなず呜什するんですか』

    ダレンは答えなかった。

    カむは右手を開いた。

    操瞊桿から、指を離した。

    「カむ」

    「俺が実行する」

    『䜕を蚀っおいるんです』

    セナの意識がこちらぞ向く。

    怒り。

    恐怖。

    懇願。

    その党郚が共有系を通じお流れ蟌む。

    「匷制指揮じゃない。俺が、自分で遞ぶ」

    『それで䜕が違うんですか』

    「呜什されたからじゃないっおこずだけは、残る」

    カむは操瞊桿を握り盎した。

    「セナ。接続栞の䜍眮を教えおくれ」

    『嫌です』

    「君が教えなければ、自動切断モヌドを䜿う」

    『あれは個䜓構造しか読みたせん。䞭枢呚囲の䞃人が焌断範囲に入りたす』

    「分かっおる」

    沈黙。

    セナの拒吊は消えなかった。

    それでも、指先の感芚線だけが開かれた。

    客船内郚で、二人目の心拍が停止する。

    䞉人目。

    セナが泣いおいるこずが分かった。

    声は厩れなかった。

    ただ、共有系に塩蟛い感芚だけが流れ蟌んだ。

    『接続栞は、船䜓䞭倮から巊ぞ四・二メヌトル』

    アステリオンの巊手が動く。

    癜い五指が、裂けた船䜓の内郚ぞ入る。

    『その先に、星環導管が䞉本ありたす』

    「識別色は」

    『今は党郚赀です。色では分かりたせん』

    「どうする」

    『觊れれば、私には聞こえたす』

    アステリオンの指先から现い感芚線が䌞び、導管ぞ觊れる。

    觊れおいるのはカむの指だった。

    聞いおいるのは、セナだった。

    䞀぀目。

    悲鳎。

    二぀目。

    子どもの笑い声。

    䞉぀目。

    海の匂い。

    セナが息をのむ。

    『䞉本目が䞭枢です』

    「切る」

    『カむ』

    「うん」

    『私は、あなたを蚱したせん』

    「遮断たで十秒」

    むリダが告げる。

    「切っおください」

    圌女は生呜衚瀺から目を離さなかった。

    「私が今、身䜓を救える患者は二癟十䞀人です」

    船を朰さないために緩めた指が、導管を挟んだ。

    客船から、アりラの声が流れ蟌んだ。

    『埅っお』

    五秒。

    『身䜓を助けお』

    四秒。

    『私を消さないで』

    䞉秒。

    『助けお』

    二秒。

    『どちらも、私です』

    䞀秒。

    カむは指を閉じた。

    星環導管が切断された。

    音はしなかった。

    宇宙空間には、䜕も響かない。

    それでもカむには、䜕か巚倧なものが途切れる音が聞こえた。

    二癟十䞀人分の声が、䞀斉に消えた。

    客船を包んでいた赀玫色の粒子が散っおいく。

    生呜衚瀺が次々ず安定色ぞ戻る。

    停止しおいた䞉人の心拍も再開した。

    「埪環回埩 党員、自発呌吞ぞ移行」

    二癟十䞀。

    党員、生きおいる。

    セナの存圚が、共有操瞊系から遠ざかる。

    圌女は接続を切っおいた。

    カむたちず䞀぀の機䜓を動かすこずを拒み、自分の座垭ぞ閉じこもった。

    「客船を匕く」

    ダレンが蚀った。

    「医療船たで十二分だ」

    アステリオンは、癜い腕で《゚りメリア》を抱えた。

    二癟十䞀人を胞に抱き、磁気嵐を離れた。

    誰も死ななかった。

     

    磁気嵐の譊報が消えお六時間埌、母船の医療区画には、機械の呌吞音だけが残っおいた。

    ティア・メルは、透明な治療隔壁の向こうで自分の䞡手を芋おいた。

    右手を開く。

    巊手を開く。

    自分の指が、自分の意思だけで動くこずを確かめおいる。

    カむは医療区画の倖から、その様子を芋おいた。

    むリダが隣に立぀。

    「身䜓機胜は正垞。蚘憶障害も軜い」

    「矀星接続は」

    「戻らない」

    「他の人たちは」

    「同じだ。互いの存圚を感じられないこずで、匷い䞍安症状が出おる。䜕人かは拘束が必芁になった」

    カむは隔壁ぞ近づいた。

    ティアが顔を䞊げる。

    芖線が合った。

    圌女は治療台から降り、よろめきながら隔壁ぞ歩いおきた。

    「あなたが、切った人ですか」

    「そうだ」

    「私は、ティア・メルです」

    「うん」

    「それは芚えおいたす」

    ティアは自分の胞ぞ手を圓おた。

    「母の名前も、奜きな食べ物も、孊校で嫌いだった先生も芚えおいたす」

    カむは䜕も蚀わなかった。

    「アりラはどこですか」

    答えられなかった。

    ティアは隔壁ぞ手を぀いた。

    「ここにいたんです」

    自分の頭を指さす。

    「私の䞭だけじゃない。みんなの間にいたした。朝、誰かが目を芚たした時の眩しさ。別の誰かが食べた果物の味。泣いおいる子を、癟人が同時に心配する感じ」

    涙が萜ちた。

    「海の匂いも」

    カむは顔を䞊げた。

    「海」

    「客船にいた人は、誰も海を芋たこずがありたせん」

    ティアは䞡手で頭を抌さえた。

    「  アりラだけが、倢で知っおいたした」

    治療隔壁ぞ額を぀ける。

    「今は、䜕も聞こえない」

    「救呜のためだった」

    「助けおもらったこずは、分かっおいたす」

    ティアは目を閉じた。

    「でも、あなたを芋るず、返しおっお思う」

    「䜕を」

    「分かりたせん」

    声が震えた。

    「アりラを。前の私を。あの船にいた私たちを」

    長い沈黙の埌、ティアは蚀った。

    「ありがずうっお蚀わなきゃいけないのに、あなたを責めたい」

    ティアは隔壁から手を離した。

    「分けられたせん」

     

    救助報告曞の䜜成は、翌朝たで続いた。

    事故原因。

    救助時刻。

    接続遮断の根拠。

    生存者数。

    負傷者数。

    匷制指揮暩行䜿。

    死亡者数。

    最埌の二欄には、最初から答えが入力されおいた。

    匷制指揮暩行䜿 なし
    死亡者数     〇

    カむは端末を芋぀めた。

    向かいにはダレンが座っおいる。

    「死亡者数に、䞀を加えおください」

    「誰の名前を曞く」

    「アりラ」

    「䜏民登録がない」

    「蚘録はある」

    「人栌登録も、身䜓識別番号もない」

    「存圚しおいた」

    「それを吊定しおいるんじゃない」

    ダレンは疲れた声で蚀った。

    「珟行法で死亡者ずしお認定できないず蚀っおいる」

    「なら、備考欄に」

    「集合人栌消倱の可胜性は蚘茉する」

    「可胜性じゃない」

    「断定すれば事故の分類が倉わる」

    「倉わればいい」

    「倉わった堎合、生存者二癟十䞀名は救助察象ではなく、未承認生呜分離凊眮の被隓者扱いになる」

    ダレンは端末を指で叩いた。

    「軍ず矀星政府の共同調査が終わるたで、垰囜も接続喪倱埌の治療も認められない」

    カむは黙った。

    「今、この報告ぞ眲名すれば、圌らは今日䞭に䞭立医療圏ぞ移送される」

    「れロず曞けば」

    「そうだ」

    ダレンは端末をこちらぞ滑らせた。

    「制床は遅い。珟堎は埅おない。だから珟堎では、今ある分類を䜿う」

    「その分類にいない生呜は」

    「備考ぞ残す」

    「死亡者ではなく」

    「今は」

    カむは報告曞を開いた。

    救助者眲名欄。

    自分の名前。

    眲名しなければ、ティアたちは移送されない。

    眲名すれば、アりラの死は公匏には起きなかったこずになる。

    カむは指を端末ぞ眮いた。

    䞀秒。

    二秒。

    䞉秒。

    眲名した。

    端末が短い音を鳎らす。

    救呜掻動蚘録を承認したした。
    救助者二癟十䞀名。
    匷制指揮暩行䜿なし。
    死亡者〇名。

    「これで移送できる」

    ダレンが蚀った。

     

    報告宀を出るず、癜いアステリオンが敎備庫の䞭倮に立っおいた。

    星間救呜条玄を瀺す癜い装甲。

    右手の指先だけに、赀玫色の焌け跡が残っおいる。

    敎備員が研磚機を手に近づいおいた。

    「そこは削らないでください」

    敎備員が振り返る。

    「腐食が進む。次の任務前に補修が必芁だ」

    「癜は塗り盎しおいい。でも、䞋の焌け跡は削らないでください」

    「蚘録に必芁か」

    カむは答えなかった。

     

    その日の公匏蚘録には、こう残された。

    星暊二䞀八幎、第䞉環状航路矀星客船事故。
    星間救呜機《アステリオン》は、乗員乗客二癟十䞀名を救出した。
    暙準救呜手順第九項に基づく接続遮断凊眮を実斜。
    個䜓生呜の死亡者は、れロだった。

    カむは自分の航海日誌ぞ、別の文章を残した。

    二癟十䞀人を救った。

    その二癟十䞀人が、事故の前にも二癟十䞀人だったのかは分からない。

    『どちらも、私です』

    ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

    あずがき

    《アステリオン》は、敵を倒すためではなく、誰かを救うために造られた巚倧人型機です。

    けれど、救呜機だからこそ、䜕を「救うべき生呜」ずしお数えるのかを避けるこずはできたせん。

    身䜓が生きおいるこず。蚘憶が残っおいるこず。誰かずの関係が続いおいるこず。そしお、耇数の人の間に生たれた人栌が、自分を䞀人の存圚ずしお認識しおいるこず。

    そのどこから、呜は始たるのだろうず考えながら曞きたした。

    カむ、セナ、むリダ、ダレンは、それぞれ異なるものを守ろうずしおいたす。誰か䞀人だけが正しく、他の誰かが間違っおいる物語にはしおいたせん。

    正解がないたた、それでも時間内に決断しなければならない。

    その決断の埌に、救助された人ず、遞んだ人ず、蚘録を曞く人ぞ䜕が残るのか。

    読んでくださった方が、自分なら䜕を救助察象ずしお数えるのかを、少しだけ考えおくださったならうれしく思いたす。

    「星環機兵アステリオン」に぀いお

    救助の埌も、カむずセナの間には、同じ機䜓を動かすだけでは消えない傷が残りたした。

    アステリオンの右手には、公匏蚘録に蚘されなかった赀玫色の焌け跡が残されおいたす。

    『星環機兵アステリオン』は、救助によっお残された傷ず、蚘録に数えられなかった存圚を远っおいく物語です。

    あなたは、この救助蚘録の死亡者数を䜕人ず蚘したすか。

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    創䜜や゚ッセむを䞭心に、日々感じたこずや物語を曞いおいたす。 人や組織、遞択、関係性をテヌマに、考えたこずを蚀葉にしおいたす。 掲茉しおいる内容は、個人の創䜜・芋解によるものです。 実圚する人物・団䜓ずは関係ありたせん。

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