
昼下がり、メロンパンは私を試してくる。
昼下がりのスーパーのイートインスペース。
私の目の前には、焼き立てのメロンパンとずんだあんぱんが並んでいる。
……困った。
私はさっき、海鮮ばらちらしを完食したばかりなのだ。
このスーパーに入っているパン屋さんには、もう5年くらい通っている。
当時は「パン100円」が売りだった。
それが物価高の影響で、今では150円前後が当たり前になった。
値上げのお知らせを見たときは、正直「このパン屋さん、大丈夫かな」と少し心配した。
でも、それは余計なお世話だった。
値上げしようがしまいが、お店は今日も繁盛している。
色とりどりのパンが宝石のように並び、焼き立ての香ばしい香りが、お客さんを次々と引き寄せる。
もちろん、私もその一人だ。
今日だってそう。
昼食は海鮮ばらちらし。
税込853円。
しっかり満腹。
しかも、in PROTEINまで飲んでいる。
「甘くないカフェオレ」味。
……本当に甘くなくて、ちょっとだけがっかりした。
それなのに。
目の前では、焼き立てのメロンパンが「今ですよ」と言わんばかりに湯気をまとっている。
しかもスタッフおすすめのポップ付き。
これはもう、買えと言っているようなものではないか。
いや、待て。
私は知っている。
最近、スカートのウエストが少しきつくなってきたことを。
二の腕がほんの少し、むっちりしてきたことを。
……いかん、いかん。
おしゃれなグルテンフリー生活を始めるんじゃなかったのか。
しかも今朝は、新潟でもらったおいしい白米を大盛りで食べた。
きっと今日は、もう一日に必要なカロリーの九割くらいは摂っている。
そう自分に言い聞かせながら、私はパン屋さんの前を一周した。
「見るだけ。」
と決めたはずなのにもう一周した。
焼き立てのメロンパンは、相変わらずいい香りだった。
今日の私は、その香りだけ持ち帰ることにした。