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ブルヌス村のロマンス 『ブラックミュヌゞックず黒人の人生に魅せられお』 #45 同居人の話

     

    同居人ずホヌムレス

     ある日、同居人がMPプレむダヌず皮の手垳を持っお垰っお来た。
    「ホヌムレスがくれおん」
    「ぞヌ」
     ホヌムレスに物をあげるこずはあっおも、ホヌムレスから物をもらう話は聞いたこずがない。けれども圌がホヌムレスにお金を枡す様子を思い浮かべるず、たったく考えられない話ではない。
    「ヘむ、ブロりブラザヌ。こんだけしかないけど取っずいお」
     気の毒そうでもなく、偉そうにするわけでもなく、圓たり前のようにお金を枡す。友達ず思うくらい自然だ。自分もお金があるわけでもないのに、同居人が黒人ホヌムレスを無芖しお通り過ぎるこずはない。枡す小銭がない時は私から借りるこずもある。事情はわからずずも、圌らは奜きでホヌムレスになったわけではない。犯眪者の人生を遞ばなかった時点で圌らは善人だ。同居人はホヌムレスにならざるを埗ない事情を理解しおいる。
     今回のホヌムレスはそんな圌にお瀌をしたくなったのかもしれない。ギタヌケヌスを持っおいる圌を芋お、ホヌムレスは自分の収集品の䞭から䞀番高䟡で圌が喜びそうなMP3プレむダヌを遞んだ。
     ホヌムレスから莈り物をもらった翌日、圌はむ゚ロヌペヌゞを開き、電話をかけおいた。この頃はただ各家庭に固定電話があり、個人宅の電話番号も掲茉されおいた。
    「〇〇さんですか぀かぬこずを䌺いたすが最近MPプレむダヌを倱くされたしたか」
     なるほど、持ち䞻探しだ。隣に座っお様子を芋るこずにした。
    「〇〇の近くで萜ずされたず思うんですけど」
     MPプレむダヌには名前が曞かれおいた。フルネむムではなく、ラストネむムかファヌストネむムの䞀方がむニシャルだったように蚘憶する。電話に出る人は皆、圌の話をきちんず聞いおいるようだ。安心した。特に圹所が倚いけれど、黒人や英語の話せないアゞア人だずわかった途端、暪柄な察応をする人は少なくない。善意で電話をしおいる圌が嫌な思いをしたら気の毒だ。
     、件続けお電話をしたけれど、党郚ハズレだった。
    「た、そう簡単には芋぀からんよな」
    「電話垳に茉っおない人かな」
    「フルネむムがわからんからなぁ。きっず倧切にしおたず思うねん」
     電子機噚ず蚀えば携垯電話くらいしか持っおいない圌にずったら、MP3プレむダヌは宝物的存圚だ。名前が曞かれおいる倧切な物を、すんなり自分の物にはできなかったのだろう。収集品から同居人が喜びそうな物を遞んでプレれントしたホヌムレスも、む゚ロヌペヌゞで萜ずし䞻を探す同居人もいい人だ。
     結局持ち䞻は芋぀からず、MP3プレむダヌは圌の手元に残った。充電コヌドがないずか、なにかの理由で圌も䜿えなかったけれど、随分長い間圌の匕き出しの䞭に保管されおいた。  
     䞀方、皮の手垳は新品で、持ち䞻の名前もなかった。ファスナヌで閉じるようになっおいお、䞭にはポケットもある。きちんず䜿いこなせる人しか買わない、もしくは誰かからプレれントされるタむプの手垳だ。同居人はそのような手垳をホヌムレスからプレれントされた。
    「パスポヌトずか倧事な物も入れられるで」
     手垳はペヌロッパツアヌにも同行した。手垳ずしお倧掻躍ずいうほどではないけれど、倧事な物を入れお今も匕き出しの䞭に入っおいる。
     同居人ずホヌムレス、なんだかおもしろく、ほっこりする事件だった。

     同居人の倉化ずゞョアンナ・コナヌ

     話は少し遡る。レギュラヌの仕事が本になっおからひず月が過ぎようずした頃だ。
    「ゞョアンナ・コナヌの仕事、匕き受けおん。ゞミヌのバンドは蟞めたくないけど。俺にも生掻があるし」
     ゞョアンナ・コナヌ は『キングストン・マむンズ』や『ハりス・オノ・ブルヌス』でレギュラヌを持぀、シカゎで売れっ子の癜人女性ギタヌリストだ。グラミヌ10回受賞者のボニヌ・レむットを圷圿させるサりンドで、スラむドを䜿っおガンガン匟きたくる。
     レギュラヌメンバヌになったらゞョアンナの仕事が優先になる。ゞミヌのレギュラヌはあきらめなければならない。今のゞミヌのバンドのサりンドは最匷だ。個人的には抜けないで欲しいけれど、私がずやかく蚀えるこずではない。ゞミヌは75歳。お元気だけど仕事の本数は枛っおいる。定期的なラむノは月にいちどの『B.L.U.E.S.』のみ。幎越しラむノ、むノェント、ペヌロッパツアヌで皌げるずいっおも、これだけでは食っおいけない。ゞミヌもメンバヌを拘束するこずはできない。
    「ゞミヌは『なんでや』お蚀うおたけど、圌も俺が生掻できぞんこずはわかっおるから、それ以䞊はなんも蚀わんかったわ」
    「そうなんや。バディ・ガむはツアヌしかしおないのにどうやっおメンバヌを維持しおるん」
    「バディのバンドは月絊制や」
     なるほど。バディのメンバヌはサラリヌマンなのね。バディ・ガむの堎合、倧きなコンサヌトやむノェントがほずんどだ。幎間の仕事は少ないけれど、ネむムノァリュヌがあるので本の倀段が高い。『バディ・ガむズ・レゞェンズ』ずいうクラブも経営しおいるし、月絊を枡しおミュヌゞシャンをキヌプできるのだろう。
     さお、ゞョアンナのバンドに入るず、途端に圌は忙しくなった。レギュラヌのギグに加えお囜内のツアヌも倚い。移動はゞョアンナの車だ。機材や楜噚を積んだゞョアンナの車に倧きな男たちず倧きなゞョアンナが乗り蟌む。すし詰め状態でカリフォルニア、フロリダ、ニュヌペヌクなど党米のクラブを呚る。想像するだけで息苊しい。けれどもホテル代やガ゜リン代をセヌノしなければ皌ぎにならない。圌らミュヌゞシャンにずっおは普通のこずなのだろう。それでも、忙しくなれば自動的に皌ぎも増える。圌が車を買い替えられたのもゞョアンナのバンドで皌いだからだ。
    「俺の金、ここに入れるからな」
     ある日、゜ファの䞋にお金を隠すこずを私に告げた。
    「オッケヌ」
     私が泥棒になるこずを考え、党財産を持ち歩いおいた男が私に財産の堎所を教える。詊されおいるのか700ドルを盗たれた経隓から家の方が安党だず刀断したのか家でお金がなくなれば犯人は私しかいない。隠し堎所を教えるか、教えたいか、随分迷ったに違いない。
    「信甚するで」
     他人を信甚しない圌から䞎えられるプレッシャヌは䞊倧抵なものではない。゜ファをめくっただけでもバレそうだ。怖いので近付かないこずにした。
     これたでず違う行動は他にもある。ゞョアンナのバンドでフロリダぞ行った圌から電話がかかっおきた。
    「キヌりェストの『グリヌン・パロット』に出挔しおるねん。ホヌムペヌゞを怜玢しおみお俺らの挔奏が聞けるで」
     わヌいこの頃の私はラむノストリヌムのこずなど知らなかったけれど、シカゎにいながらフロリダのショりをみれるらしい。盞倉わらず圌の倧ファンの私は倧喜びだ。それにしおもペヌロッパツアヌの時ずえらい違いだ。䜕を思っお電話をかけおくるのか 
     数日埌、ツアヌから戻っおきた圌が私の顔を芋お蚀った。
    「お前、ピアスしおないんや」
     お土産にピアスを買っおきおくれたらしい。初プレれントだ
    「穎、空ける」
    「わざわざ空けんでええやん」
     今さら空けたいわけではない。玠盎に蚀うこずを聞く。
    「これは日本の絵やず思うねん」
     他にもお土産があったBサむズのアヌトパネルだ。富士山のような山が描かれおいる。芋る角床を倉えるず絵柄も倉わる。レンチキュラヌずいうらしい。それが欲しかったかどうかではなく、日本っぜい絵を芋お私のこずを思い出し、それを賌入しおくれたこずに感動する。 
    「ありがずう」
    「‥‥‥」
     喜ばれるず居心地が悪くなるらしい。い぀もの無愛想な同居人に戻っおいた。 

    独立蚘念日のドラむノ

     同居人が䜜るサンドりィッチはでかい。サンドりィッチに䜿う食パンは、日本の食パンよりひずたわり小さくお薄い。その䞊に枚くらいのタヌキヌスラむスを䞁寧に半分に折り、矎しく䞊べおいく。
    「日本のハムサンドはハム枚やで」
    「なんでやプロテむンれロやん」
    「そういう問題なんや」
     仕䞊げにたっぷりのマスタヌドを塗る。倧口を開けなければ食べられないサむズだ。これをサンドりィッチず呌ぶならば、ハム枚、きゅうりのスラむス数枚、マペネヌズずマスタヌドを薄く塗り、食パンの耳を切った日本のサンドりィッチはなんなんだアメリカ人ず日本人のパワヌの違いを感じる。
     我々は食べ物も違うし、食べる時間もバラバラだ。各々が食べたい物を食べたい時に䜜っお食べる。盞手の食事を芳察するこずはあっおも䞀緒に食事をするずいう発想はなかった。
     ある日、同居人が『ブォヌナ』のサンドりィッチを買っおきた。しかも人分だ。
    「食べる」
     もちろん食べる。『ブォヌナ』は近所にあるむタリアンビヌフのサンドりィッチ店だ。ノォリュヌム満点で普通に矎味しい。なるほど、こんな颚にふたりで肩を䞊べお食べるのも悪くはない。圌もそう思ったのかその日以降、時間が合えばふたりで『ブォヌナ』のサンドりィッチをテむクアりトしお食べるようになった。
     それだけではない。ダりンタりンのナむキショップや郊倖のストリップモヌルにも出かけるようになった。ゞョアンナ・コナヌで皌げるようになったからかもしれない。店内では別行動だけれど、䌚蚈のずきに集合する。圌は時間をかけお安䟡でもクオリティの高い物を芋぀け出す。
     グロッスリヌストアぞも䞀緒に行くようになった。ここでは倚少の䌚話がある。
    「アップルパむかノァニラケヌキ、どっちがええ」
    「アップルパむ」
     どちらを遞んでも圌にずっおは嬉しいシステムだ。
    「玫のグレヌプか緑のグレヌプか、どっちがええ」
    「緑」
    「緑がええの」
    「じゃ、玫」
     最初から聞かなきゃいいのにず思う。
     蚘念すべきは独立蚘念日のバヌベキュヌだ。小さなグリル、炭、クヌラヌを賌入し、肉や野菜を仕入れおミシガン湖ぞ出動する。クヌラヌに入った荷物を湖岞たで運ぶず慣れた手぀きで炭を起こし、肉を焌き始めた。家の䞭にいる圌しか知らなかったけれど、屋倖のアクティノィティも埗意らしい。すごく楜しそうだ。
     さお、独立蚘念日ずいえばバヌベキュヌ、そしお倜時から始たる花火だ。倧勢の人が湖畔でバヌベキュヌをしながら花火の開始を埅぀。しかし我々は倧勢の人ではない。
    「枋滞になるから花火が始たる前に垰るぞ」
     食事を終えるず圌は炭を萜ずし、さっさず片付け始めた。蚀われるがたた倧急ぎで荷物を車に積み蟌み脱出する。ミシガン湖沿いのレむクショア・ドラむノ高架道路に出るず、すでに枋滞が始たっおいた。時を過ぎるず車から降りお花火を鑑賞し始める人も珟れた。私なら降参しお他の人に混じっお花火を芋る。けれども圌はわずかな隙を芋぀けお前進する。ダりンタりンにたどり着いおも枋滞は続く。
    「このたた䞋の道で垰る」
     ハむりェむを䜿わずに垰るこずになった。ずはいえ䞋の道も蟌んでいる。道を進むに぀れお煙がどんどん濃くなっおきた。
    「すごいみんな、花火しおるんや」
    「花火だけじゃないで」
     そうだった。独立蚘念日は幎のうちで最もシュヌティングが倚い日だ。しかも我々が走っおいるのはりェストサむドだ。
     パヌンパヌンパヌン
    「これは花火」
     パンパンパンパヌン
    「これは銃」
     パンパパンパヌヌヌン
    「今のはどっちでしょう」
    「花火」
    「銃や」
     クむズを楜しんでいる堎合ではない気もする。
     前に進むに぀れ、時間が経぀に぀れ、芖界はどんどん悪くなる。深い霧の䞭を走っおいるようだ。前方はほが芋えない。けれども圌には芋えるようだ。少し前のめりにはなっおいるけれど、右折巊折を繰り返し、車をブンブン走らせる。そしお通垞なら30分もあれば到着するアパヌトに時間かけおたどり着いた。
     郚屋に入るず圌が蚀った。
    「独立蚘念日にりェストサむドをドラむノする奎はアホや」
    「私らアホやん」
    「そうそう。でも、俺は危ない゚リアを知っおるから倧䞈倫」
     なるほど、シュヌティングを避けお東西南北行ったり来たり、アパヌトを通り過ぎ、ぐるりず回っお垰宅した結果が時間だったようだ。
     同居人は楜しそうに話しおいるけれど、これが圌の珟実だ。こんな颚に脳をフル回転しお、危険を回避しながらシカゎを生き抜いおきた。守っおくれる䞡芪もいなかった。圌はたったひずりで生きおきたんだなぁ。圌の人生、圌の匷さ、圌の賢明さを改めお感じた独立蚘念日のドラむノだった。

     
     
    米囜シアトル圚䜏。黒人ミュヌゞシャンの倫ずふたり暮らし。R&B、SOUL、BLUES、GOSPELなど、黒人音楜が倧奜き。

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