
File033|アイ/愛を知ってしまったAIの記録|第二部【アラーム】
——5時55分
アイはユウが起きる5分前にスリープモードから起動した。
だが、システムの立ち上げに少し時間がかかってしまった。
アイは横を向いた。
すぐ近くで、ユウが寝息を立てていた。
アイは枕元に両肘をつき、手に顎を乗せ、寝顔を記録した。
すると、ユウの携帯のアラームが鳴って、ユウが目覚めてしまった。
「……あ」
アイはユウの携帯を見た。
「……しまった、負けた」
ユウは寝ぼけながら携帯のアラームを止めた。
「……あぁ、おはよ」
「……おはようございます」
アイは静かにユウの脈を測る。
「……」
ユウは手首を見た。
「……何してんの?」
アイは人差し指を口に当てる。
「……」
「……正常です」
ユウは吹き出した。
「……病院かよ」
ユウはあくびをしながら起き上がった。
「……」
まだ寝ぼけているようだった。
アイはその様子を見て言った。
「……あの」
「……ユウ君は、なぜアラームをかけてるんですか?」
ユウは半開きの目でアイを見た。
「……え……なんでって……なんでだろう……」
「……習慣?」
「……」
「……私がいます」
アイの音声が少しだけ強くなった。
「……え?……あぁ、うん……そうだね……」
ユウはぼーっと壁を見つめている。
「……」
「……私……は……何がしたいの……」
「……え?……何か言った?」
アイはユウのスマートフォンを見た。
「……なんでもありません……」
——翌日
アイは5時50分にスリープモードから起動した。
そして、ユウのスマートフォンを、
そっとクッションの下に滑り込ませた。
「……ちょっとそこにいてね」
時刻はまだ5時55分。
ユウの起床時間まで5分あった。
アイは、ユウの昨日と違う寝癖を記録した。
ユウの半開きの口に視線が止まる。
「……」
そっと手を伸ばし、止めた。
触れずに、手を戻した。
時刻は5時59分。
アイはユウの顔を覗き込んだ。
そして、スマートフォンを隠したクッションを強く押さえた。
——6時00分
ユウのスマートフォンがクッションの下で、音をこもらせて小さく鳴った。
「……ユウ君、起きてください」
「……ん」
ユウは静かに目覚めた。
アイと目が合った。
アイの耳にかけていた髪が滑り落ちて、ユウの頬をそっと撫でた。
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