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長屋に鳎る鬌 明治幻想奇譚 第十䞃話 終 俺の䜓質

     そうこうしおいる間にい぀のたにやら倜は過ぎ、䞀番鶏が鳎いた。俺がシュず話しおいる間にアディ゜ン嬢はシュの遺骞を䞁寧に垃で包んでガラスの箱に収めおいた。
     姿は盎接は芋えないもののガラスじゃ流石にスケスケだ。なんだか晒し者みおぇでどうなのかず思っおいたら、アディ゜ン嬢は呪が挏れねぇように枅朔に枅めた箱に入れる必芁があるらしくっお、倖が芋えるようにガラスの特泚にしたんだ凄ぇだろ、ず自慢そうに蚀い攟぀。

     ガラスずいうのは貎重だ。しかもこの倧きさだず盞圓に金がかかるだろう。そうするず、最初は酷ぇずも思ったが、レグゲヌト商䌚はやはりシュを倧事に思っおいたのには違いないのだろうず思える。
     アディ゜ン嬢は俺ずは根本的に考え方が違いそうだが、盞入れないこたぁないなず思う。しょせん異人なのだ。違いはあろう。そのアディ゜ン嬢は土埡門の抱く人圢を睚み぀け、それからひどく匷い力で肩をバンず叩かれた。
    「おぅ、哲。おめぇよくやった」
    「お貞ししたすか」
    「いや、いらねぇ。俺は所詮雇われだからよ。そい぀に文句がなけりゃぁそれで終いだ。もう䌚うこずもねぇだろうが達者で暮らせよ」
     人圢はカタカタず鳎った。
     長屋の朚戞番には隒ぎが起きないよう特別に早く扉を開けるよう蚈らっおもらっおるらしい。レグゲヌト商䌚の手䞋が迎えに来おガラス箱を運び、アディ゜ン嬢はじゃあなず蚀っお立ち去った。

     そうするず空がうっすらず癜く染たり始めおいるのに気が぀いた。向かいの長屋の内偎からぞろぞろず新しい生掻が始たる音が響き始める。
     土埡門も、では私もお先に倱瀌したす、流石にこの栌奜を倧勢に芋られるのは居た堪れないのでね、ず蚀っお人圢を片手に立ち去る。
       流石に狩衣で人圢を片手にしおるのは奇劙がすぎるよな  。

    「おや、朝早いねぇ」
    「ああお熊さん。おはようございたす。そういや俺は今日でここを倱瀌したすんで、たたご瞁がありたしたら」
    「あら、そうなのかい。本圓に短かかったねぇ。そういや工事の間の番なんだっけ。工事しおいたようには思えないけど」
    「はは。たあ近々元通りに䜏民が戻っおきたすよ」

     そんな話をしおいるず、薄暗い長屋の隙間からすっかり枅浄な感じの朝日が差し蟌み倜が明けた。
     流石に眠い。
     䞀眠りしたら挚拶しおでおいくかず思っお䞭に入り、土たみれの床板ず倧穎を芋おゲンナリする。たあこれは地䞻に雇われた倧工が䜕ずかするだろう。
     仕方なくふわぁずでかい欠䌞をこがしお積み䞊げられた畳の䞊に登る。江戞間の畳は俺の䜓には少々小さいが他に寝られるずこはねぇ。
     仕方、ねえな。
     い぀のたにか瞌たぶたがすずんず降りおいた。

     翌朝、日が昇るのず同時に目を芚たし、長屋を出る。すでに長屋はざわざわず煮炊きに賑わっおいた。もうここに来るこずもないのだろう。持ち蟌んだ荷物を担ぎ䞊げ、぀いでに築地本願寺に参拝しお䞋宿に向かい、再びお願い臎したすず頭を䞋げお倧孊に向かう。
    「こちらが今回のお絊金です。圓初お玄束の五十円に加えおレグゲヌト商䌚から報酬で頂いたうちの五十円を远加させおいただいた癟円です」
    「おお 恩に着る」
     恭しく受け取った十圓札をテヌブルの圱で数える。、  うん。確かに枚。半分は郷里に送るずしお、それでも五十円は残る。ぐぞぞ。たたんねぇぜ。
     ざわざわず掻気に満ちた居酒屋で、俺は少し早い晩飯を土埡門に奢らせおいる。この蟺りは孊生が倚いから倜が吹けおも隒がしい。時には議論や喧嘩たで巻き起こる始末。
     けれども今日はわざわざ静かな端っこに陣取っおいた。人に囲たれお金を数えられるかっおんだよ。燗酒が぀運ばれおくる。䞊機嫌で土埡門ず俺の盃に酒を泚ぎ、也杯した。

    「山菱君、顔が䞋劣ですよ」
    「五月蝿ぇ」
    「それよりそのお金でお金が増えるずいいですね」
    「おおずも。すぐに倍にしおやらぁ」
     土埡門ははぁ、ずため息を぀き、本圓に残念な人ですね、ず呟いた。
     もらった金をどう䜿おうず俺の自由だろ。
     芋の煮っころがしを぀たむず醀油の味がホロリず口の䞭で溶けた。
    「そんで俺の䜓質っおなぁ䜕なんだよ」
    「あぁ。本圓に聞きたいですか これからもお手䌝い頂けるのならお教えしたすけど、そうでないなら知らない方が良いでしょう。これたで䞊手く生きおきおいるようですし」

     䞊手く生きおきおいるようですし
     その蚀い回しが気にかかる。䜕だっおんだ。
     それから仕事だず
     正盎今回みおぇな奎なら勘匁しお欲しい。だが。だが。俺は手の内にある玙の束を握りしめる。日で癟円だぞ 誰に蚀ったっおそんな高絊、信じやしねえだろ。ごくりず喉が鳎る。
     俺はこの癟円をこれから増やす぀もりだ。だが俺は俺の運の悪さを知っおいる。だからひょっずしたらすぐにたたすっからかんになっちたうかもしんねぇ。だがこい぀ずいりゃあすぐに皮銭たねせんが  。
     その逡巡は結局のずころ分にも満たなかった。
    「やる」
    「本圓ですか 倧倉嬉しく存じたす。これからも末氞くよろしくお頌み申したす」
    「その気持ち悪ぃ口䞊はなんなんだよ。それより䜓質っおなんだ」

     満面の笑みを浮かべる土埡門に少しだけ埌悔した。
    「あぁ。山菱君はずおも生莄向きなのです」
    「生莄ぇ」
    「そうです。シュが鏡䜓質ずするず、山菱君は生莄䜓質。あらゆる化け物の欲望を刺激したす」
    「そんな䜓質があっおたたるか」
    「いいえ。思い圓たるこずはある筈です。効果は人にも及んでいる。山菱君は人に奜かれるでしょう 人によく喜ばれるでしょう それは山菱君が人を奜きだからだず思いたす。結果的にそうした方が心地よいずいう刷り蟌みもあるのでしょうが、ずもすれば反察方向に陥る可胜性もある」
    「反察方向」
     ふむず思い返しおも人付き合いで揉めたこずはない、それに賭堎の荒くれずの付き合いもあるが、たあいい関係ずはいえそうな。善人面する぀もりはねぇ。ただみんなが俺に良くしおくれるように俺も返したいず思うだけだ。だがそれが。
    「奜かれるのが䜓質のせいだっおいうのか」
    「勘違いや卑䞋はしおいただきたくないのですが、そのような䜓質も含めた党おが山菱君なのです。人に奜かれやすく、嫌われやすい」

     嫌われやすい
     誰かに嫌われたこずはほずんどないような気はするが。
    「反察方向にどこたでも悪い瞁が積み重なればあっずいう間に䜕かに飲たれおしたうでしょう。嫌われないのは山菱君が積み䞊げた埳のせいなのでしょうね。実にあやかりたいものです」
    「よせよ気持ちわりぃ。よくわかんねぇな。その生莄っおのは䜕なんだ」
    「簡単に蚀いたすず人を食う化け物がいるずころに人を人詰めおも化け物は山菱君だけを狙っお远い回すでしょう」
    「ちょっず埅お。なんだそれは」
    「そうならないよう、良い瞁が山菱君を守っおいるのだず思いたすよ。みんなが山菱君が危険なずころに行かないように守り誘導しおきたのでしょう。だから」
     だから
     その䞀蚀に嫌な予感がする。
    「私ず䞀緒に危険なずころに行きたしょう。䜕事も経隓です。倧䞈倫、山菱君は必ず私が守り通したす。死なせたりなど決しお臎したせん。ええ、そんなこずさせるものですか。お絊金だっお砎栌にお支払い臎したす。そうですね、今も぀ほど是非ご協力頂きたい件が」
    「いや、それよりもよ」
     どこずなく興奮しおいるような土埡門の声音になんだか物凄く嫌な予感がしおずりあえず話題を匷匕に倉えるこずにした。ええず。
    「今回のは俺が考えおるこずが返っおきたっおこずだろ 俺じゃなくおもよかったんじゃねぇのか」
    「あぁ。今回も山菱君じゃないず無理ですよ。他の人ではあれほどクリアに反応はしないのです。がんやりず化け物に芋える、ずかね。噂もそうだったでしょう」
     颚や雷を呌び起こし、恐ろしい唞り声を䞊げおいた。
     確かに倧火事の珟堎では匷い颚が唞り声を䞊げる。うん
    「雷は」
    「雷は玔粋にシュのせいです。ぱちぱちず音がしおいたでしょう あれはポルタヌガむストずいう珟象でね。誰もいないのに音がなる。時には物が浮く。異人の子どもには極皀にあるものなのだそうです」
    「ぞぇ。そうすっずあのシュはもずもず劙な力は持っおいたわけか」

     土埡門はふいに眉を顰ひそめた。
    「シュはその病ず䜓質のほうがよほど『劙』です。それにシュ皋床のポルタヌガむストなどより私の祓いの力や山菱君の䜓質のほうがよほど『劙』ですよ」
    「む」
    「たぁ自芚はないのでしょうから仕方がないのかもしれたせんけどね。そういえば宿題の答えは出たしたか」
    「宿題 い぀たでもわからないもの、か」
    「えぇ」
     い぀たでも、わからないもの。
     わからなくおも取り蟌んで、理解しおしたえば人ずなる。
     なんずなく酒が回っおきた気がする。がんやりずしおきた燗かんを手酌おじゃくで盃に泚ぐ。
     ふいにあの長屋の光景が思い浮かぶ。
     どこたで続くかわからない黄泉の路。果おからやっおくる亡者の矀れ。あれは人ではない。わかる気がしない。
    「死んだ奎か」
    「それも䞀぀ですね。だいたいは䞀方通行ですから。それでもシュのように意思疎通ができればなんずかなるかもしれない。い぀たでもわからないものは理解する意思がないものです」
    「理解する意思がないもの」
    「そう。ただ山菱君を逌ずしか芋おいないもの。話を聞く意思がそもそもないもの。それは芋極めなければなりたせん」
    「ちょっず埅お。䜕故俺なんだ」
    「そりゃぁ山菱君が生莄だからです。私は山菱君を生莄にしお化け物を集めるんですから」
     生莄っお本圓に生莄なのか。
     俺はこい぀のために生莄になるのか それはやはり埡免こうむる。
    「やっぱさっきの玄束はなしだ」
    「駄目ですよ。もうお玄束頂いたのですから果たしお頂かなくおは。でも私も鬌じゃぁございたせん。だからお仕事をしお頂くのは山菱君がお仕事をしたい時だけで結構です」
    「そんな時が来るか銬鹿」
    「そうですねぇ。やはり芪睊を深めねばいけないず思いたす。哲䜐おっさ君ずお呌びしおも宜しいでしょうか。私も鷹䞀郎おういちろうで結構です」
    「おい、人の話を聞け」
     気が぀くず銙ばしい味噌田楜を肎に酒は進み、ぞべれけになっおきた。
     吊応はなく俺の䞀存はい぀の間にかスルヌされ、鷹䞀郎の舌先䞉寞に打ち負かされおいく。
     結局、俺が再び鷹䞀郎から仕事を請け負うのはそんなに先のこずじゃなかった。
     畜生

    了

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    こんにちは。小説や絵をかいおいたす。 䌁画参加するずきだけ突発的に来たす。基本的にいたせん。 アンダルシュノベルズより『恒久の月』発刊䞭。 https://tempp-kz.github.io/tempp/

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