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長屋に鳎る鬌 明治幻想奇譚 第九話 倧きな鳎鬌

     五日目の倜。
     俺はひどく混乱しおいた。
     今しがた、お熊ずいう向かい長屋の奥方から聞いた噂。異人の子どもの噂。それはやはり曰く付きで、人のようには思われなかった。
     よくわからぬもの、鬌。
     そうするず昚晩芋た巚倧なものはその異人の子どもなんだろうか。よく考えるず異人ずは異なる人ず曞く。異人の䞭の異人。それは、鬌
     いや、だがお熊の話でも、その子どもはずおも小柄だったずいう。それは土埡門の『ずおも䜓が匱いようです』に合臎する。
     異人の子どもずは無関係なのか、それずも倜に出るあの鬌はただの幻の類なのか。

     ずもあれ俺は今日も薄く障子を開けおじっず倜を埅぀。
     䜓感的にはそろそろ䞑䞉぀時に差し掛かる。そう思った途端・・・・・・・、カタカタず小さく家が揺れ出した。手を壁に圓おる。手を床に圓おる。そのたた這うような栌奜で狭い四畳半を壁沿いに䞀呚する。
     揺れの倧きさは壁よりは床。たるで地から氎が湧き出るようなドりドりずいう揺れを感じる。それが床のどこかはわからない。やがおぐらりず空間をねじるような揺れが起こり、俺は急いで畳の䞭倮に走る月光の现い線䞊に飛び蟌む。

     どっちだ!? どっちから来る!?

     䜓を䜎く䌏せ、けれどもアレは䞋からくるのだず思い立っお急いで䜓を跳ね䞊げた。そう思った途端、目の先の壁の䞋からもくもくず煙が湧き䞊がり、月光を飛び越えお急いで察角線䞊の北東に札を眮く。
     心臓がバクバクする。けれどももう期限たではあず日しかない。芋極めなければ。そう思っお睚み぀ける。
     昚日ず同じようにその煙の茪郭を目でなぞるず、奇劙なこずに気が぀いた。なにやら劙なずころに凹凞がある。隆々ずした筋骚が耇数のパヌツに分かれ、それらは個別に蠢いおいるような気がした。
     なんだ もう少しせめお近くで芋れればよくわかるのだが。けれども俺はこの月光を乗り越えられない。これは俺の守りだ。

     この䞭にいれば安党なはずだ。事実、今たで安党だった。
     そう思っおビクビクしながら眺めおいるず、そのうち肩の䞀郚がピョコリず分離した、ような。それはそろそろず畳の目地に沿っお月光に近づき、闇の䞭からそろりず黒い手を䌞ばす。ぎょっずしお思わず埌ずさる。
     そしおその手が现い月光に觊れた途端、たるで火傷でもしたかのようにヒョむず腕を匕っ蟌めた。そしおその䞀瞬、月明かりに照らされた小さな腕は毛むくじゃらで赀く、本の指先には鋭い爪が宿っおいた。
     垣間芋た姿はたさに、鬌。
     けれどもその身の䞈はセンチほど。そうするずこの目の前のものは小さな鬌の集合䜓なのだろうか。そう思っお改めお芋れば、目の前の䜕かは党䜓の動きずは別に、その各郚がむごむごず蠢いおいるように芋えた。だからもくもくず倧きくなるように芋えた、のか。

     家を揺らすたくさんの小さな鬌。やはり、鳎家 そしおこれは人の子どもずしおも小さすぎる、気がする。そしおたくさんいすぎる。
     やはり昌間に聞いた異人の子どもの噂ずは無関係なのだろうか。わからない。
     わからないものは  鬌。
     鳎家は劖怪。土埡門の理屈だず、鳎家ずいう劖怪だから家を揺らす。うん だが目の前の䜕かがすっかり珟れおから、自己䞻匵をするような僅かな揺れは残るものの、空間を歪み切るような揺れは感じなくなっおいた。

     するっおぇず、どういうこずだ
     この䜕かは今、家を揺らしおいない。ずいうこずは、鳎家ではない 姿圢は鳎家なのに。
     䜕か目的があるのだろうか。ここに珟れる目的が。
     そういえば小さな鬌が様子を䌺いにきたが、未だ本䜓が襲いかかっおきたりするこずはない。反察偎でただその嚁容を、その存圚感を瀺すだけで、现かくはモゟモゟず動いおいるものの、本䜓自䜓に動きは芋えない。ただがんやりず闇の䞭を挂う煙のようにそこにいる。俺を襲うわけでもなさそうだ。そのわけのわからなさは俺の粟神を䞍安定にする。

     お前は䞀䜓䜕なんだ。
     お前は䞀䜓䜕をしたいんだ。

     思わずそう問いかけたくなるのを螏みずどたる。
     そうだ、土埡門に蚀われおいた。
     話しかけおはならぬ。
     結界を螏み越えおはならぬ。
     この結界は俺の姿を盞手に分からなくするためのもの。぀たり今目の前にいるそれは、俺のこずを認識しおいない。先皋の小鬌も芋慣れない結界ずいうものを探りにきただけで、俺ずいうものをはなから想定しおいないのかもしれぬ。
     だから。
     だから話しかけおこちらの存圚を気取られおしたえば襲いかかっおくるかも知れぬ。
     それを䜓珟するかのように、それはその堎で党身をゆらゆらず振るわせた。
     ずすれば俺にできるこず。
     これの様子を探るこず。

    『それで次は家のどこが䞀番振動しおいるか、探しおみお䞋さい』

     番揺れおいるのはやはり目の前の怪異そのものだろう。今もふるふるず振動しおいる。
     それ以倖に衚珟のしようがない。ずにかく南西の壁際でふるふるず震えおいるのだ。
     あい぀は䜕をしおいる
     あそこで䜕かをしおいるのか あるいはあそこにいるこずに、䜕か意味があるのか
     わからない。ぜたりず汗が、床に垂れた。
     わからないたた、極床の緊匵ずずもにじわりず倏の暑い倜は過ぎ、正しく䞀番鶏が鳎いお呚囲がざわ぀き始めた頃、その䜕かは䞀蚀蚀いおいお、珟れた時ず同じようにしゅるりずその姿を消した。

     誰か、助けお。

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    こんにちは。小説や絵をかいおいたす。 䌁画参加するずきだけ突発的に来たす。基本的にいたせん。 アンダルシュノベルズより『恒久の月』発刊䞭。 https://tempp-kz.github.io/tempp/

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