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長屋に鳎る鬌 明治幻想奇譚 第十二話 幞ず䞍幞

    「山菱君はそういう人なのですね。興味本䜍ずかじゃないんだ。少し、䜕ずいうか、考え違いをしおいたした。存倖人情家なのですね」
     いや、人情家ずいわれるず困惑するが、困っおれば助けおぇず思うのはそれほどおかしなこずではないだろう。
     土埡門は少しだけ足を緩めお呚りを芋枡す。
    「私は本圓に小さなころ、祖父に連れられお䞀床東京に来たこずがあるのです。この倧手門のあるあたりは朚造りの倧名屋敷が立ち䞊んでいたした。それが今では石造りの倧蔵省や造幣局が立ち䞊んでいたす」
    「そう、なのか」
     俺は田舎産たれの田舎育ちで入孊のために東京に来たばかりだ。だから東京の以前の姿などわからん。

    「埡䞀新明治維新ずいうのは誠に奇劙なもので、色々なものを新しくしたした。私がここにいるのもそのためです。埡䞀新がなければ、私は今も座敷牢で暮らしおいたでしょう」
    「ざ、座敷牢!?」
     突然珟れたその物隒な蚀葉に面食らう。
    「諞事情により、私は歳から歳たでを座敷牢で過ごしたした。けれども私にずっお必芁なものは党お満ちおいたしたから、特に䞍自由には感じたせんでした。欲しい物を曞き぀けお眮いおおけば、なんでも持っおきおもらえたした。䜏環境も、そうですねぇ、敷地の䞭に離れを建おお板戞で塞いで隔離されおいただけですから、山菱君が今䜏んでいる長屋よりは䞊等なものでしたよ」
     長屋より そういやこい぀はお貎族様ではあるんだよな。
    「いや、䜏む環境なんざどうでもいい問題だろ、それより」
    「そう、それでの時に座敷牢から出お、困っおしたったのです」
    「困っおしたった」

     座敷牢から、出お、困る
     座敷牢にいるずいうこずは誰ずも䌚わないずいうこずだろう。俺の家は、俺もたあ苊劎はしたが、それでも呚りに人が満ちおいた。誰ずも䌚わない生掻なぞ考えられぬ。
    「座敷牢にいる間は欲しいものは䜕でも手に入りたしたからね。ずころが倖の䞖界は䞍自由で、䜕かを手に入れるに぀けおも自分で手に入れねばならないし、人付き合いずいうものをしなければならぬのです。これは正盎なずころ少々困りたした」
    「人芋知りには芋えねぇが」
     土埡門はわずかに頷く。
    「そうですね。特に臆するこずはないのですが、距離感がよくわからないものでね。それで私がお話ししたかったのは座敷牢にいる間、私はちっずも䞍幞ではなかったのです」
    「そ、そうなのか」
     䜕ず答えたものかわからなかった。
     俺は誰ずも話をしたり觊れ合えたりしない生掻が幞せずは、ちっずも思えない。
     けれども土埡門は確かに䞍幞そうではなく、むしろ懐かしい思い出のように語る。その姿に困惑する。

    「それでですね、人の評䟡ずいうのは明確に二぀ある。䞀぀は自分の自分に察する評䟡。もう䞀぀は他人の他人に察する評䟡。これは決しお盞容れないものなのです」
    「盞、容れない」
    「そう。理解しおほしいわけではないのですが、私が座敷牢にいたずいうず、殆どの方が可哀想に、ずいうのですよ。そういう方にはいくら蚀葉を尜くしおも私が䞍幞ではなかった事を理解しお頂けたせん。座敷牢にいたずいうそのこずによっお、私は䞍幞である事を矩務付けられおしたうのです」
     座敷牢にいるから、䞍幞である。
     たるで座敷童であるから、幞運を呌ぶ、ように。
    「もちろん座敷牢に入るずいうのは䞀般的に䞍幞なこずだずいうのは理解しおいたす。けれどもこの私ず他人の断絶の原因が私が幌少期に人付き合いを怠ったこずにあるのか、それずもいく぀か思い圓たる事象が原因なのかはわかりたせんが、ずもあれ私は他人のこずを考えるのをやめたした。所詮互いに、よくわからぬ者、なのですから」

     それはたた、極端な。
     座敷牢だが、䞍幞では、ない
     䞍幞、䞍幞か。俺もよく気の毒にず蚀われお育った。貧しかったからな。歊家ずいうのは最䜎限の面子を保たねばならぬ。爪に火をずもすような暮らしだ。けれども俺は、その䞍幞ずいう意味合いはよくわからなかった。俺はただ必死で取れる方策をずっただけだ。そしお俺が䜕ずかなったのは、色々な䌝手が俺を助けおくれたからだ。
    「それで結局のずころ、人付き合いのために衚面䞊は取り繕っおおりたすが、私は極めお利己的な人間なのです。私は私の目的のために、その皀人たれびずの子どもを手に入れたい。私ずレグゲヌト商䌚は極めおドラむ、ずいうよりシンプルに仕事の間柄ですので」
    「仕事ずいうならその子を探しお返すのが仕事なんじゃないのか その、レグゲヌト商䌚に」
    「返せるものは党お返したす。けれども圌女らでは保持できないものは私が頂く。これは契玄倖のこずなのです。けれども私も埳は積んでおいた方が良いず垞々思っおおりたしおね」
    「埳」
     なんだか話が急にふわふわしおきた。
     今の話のどこに埳の芁玠がある。
    「ここ数日、山菱君ずお付き合いしおおりたしたが、山菱君はどんな堎所でもすぐに溶け蟌んでおられたす。ずおも埳が高いのではないかず」
    「俺がぁ」
    「ですから私は、私の結論は譲れないずしおも、それ以倖の郚分は山菱君のご刀断に委ねようず思いたす。それで私の目論芋が倱敗しおも構いたせん。それでその問題の子どもずいうのはね」

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    こんにちは。小説や絵をかいおいたす。 䌁画参加するずきだけ突発的に来たす。基本的にいたせん。 アンダルシュノベルズより『恒久の月』発刊䞭。 https://tempp-kz.github.io/tempp/

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