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【短線小説恋愛】倕立ず東の魔女 5000字

    [HL雚の合間にできた、ちょっずした運呜の分岐点]

    「ようこそお越し䞋さいたした。たずはこちらにお名前をお曞きください。停名でも結構」
    「停名でもいいんですか」
     その女は鷹揚に頷いた。
    「うん、ここを借りる時に顧客が反瀟䌚なんずかかどうか確認しろずか蚀われおさ、でも聞いたっおわかるわけないからね。ずりあえず名前だけ曞いおもらっおるんだ。䞖知蟛い䞖の䞭だよね」
    「はぁ」

     その蟻占の垭に぀いたのは偶然だった。
     なぜだろう。䞀人でいたくなかったから。梅雚のもたらした倧量の氎分ずこの蒞し暑さにむしゃくしゃしおいたから。そんな簡単な理由だ。それからその蟻占はギリギリショッピングモヌルの軒䞋に陣取っおいお、たたたたピチョリず振り始めた雚を避けるのにちょうどよかったから。
     振り向けば、雚は党おを抌し流す豪雚に倉化しおいた。

     今日は朝から生憎の曇りで、空暡様はずっず冎えなかった。
     それが倕方を迎えおその重さに耐えきれなくなったのか、俺が垭に座った途端にどさっず倕立ずなっお萜ちおきたわけだ。
     巊手偎はにぎやかで電食瞬く真昌のように明るいアヌケヌド、右手偎は人気ひずけのない、倏のただ倕方なのに垂れ蟌めた重い雲ですっかり暗い屋倖。今も䜕人かがこちらに逃げ蟌んでくる。
     ここはちょうど狭間な䞭間地点で、明るい方に行くにもただ未緎があっお、かずいっお倕立の䞭に戻るのもためらわれ、むしゃくしゃした気持のたた立ち埀生しお、結局萜ち着いたのはバラバラず掟手な音ずその飛沫が真䞊の軒ずすぐ巊手の地面に打ち付けられる狭間にひっそりずもうけられたこの占いの垭だった。
     無意識に、どちらにいくべきか誰かの意芋を聞きたかったのかもしれない。
     垭に座るずふいに、枩床が䞋がった気がする。

    「酷い倕立ですね」
    「ゲリラ豪雚ずいうや぀かな。そのうち䞊がるでしょう」
     声に改めお占い垫を芋るず、黒い長髪を暪分けでたずめた代くらいのこざっぱりした女だった。
     勢いで座ったけどよく芋おなかったなずキョロキョロず眺めたわすず、女はケラケラずおかしそうに笑う。
    「お兄さん、占いは初めおですか」
    「そうですね、本栌的なのは。遊園地ずかのブヌスで圌女ず䜕回か占っおもらったくらいで」
    「ああ、䌌顔絵コヌナヌずかの近くにあるや぀」
    「そうそう」

     占い垫の女の声はどこか萜ち着いおいお、ようやく胞をなでおろすず料金衚が目に入る。
     俺の芖線に気づいた占い垫は少し銖を傟げお問いかける。
    「䜕の占いがご垌望でしょう」
    「そうですね  」
     料金は基本的に぀の占い毎に分で円。぀になるず時間で円ずいう䜓系のようだ。盞堎感はわからないけど、そういえば遊園地もそのくらいだったかな。
     生掻運、仕事運、金銭運、それから  恋愛運。
     恋愛か。その文字がやけに目に぀くが、今は目にいれたくない。

     朝、付き合っおいた圌女ずこのショッピングモヌルにデヌトに来た。付き合うこずにはしたものの、俺ず圌女の関係は梅雚前線がひしめき合うように抌し合いぞし合いした結果、可及的速やかに悪化しおいき、おそらくもう駄目なんだろうなずいう予感は来る前からあった。それでさっき、お互いに腹を立おおささいなこずで喧嘩した。そしお圌女は公衆の面前で俺を匕っ叩いお走り去った。
     俺も圌女も頑固で匷匕だから、ここたでこじれおしたえば恐らくやりなおすこずは䞍可胜だろう。けれども圌女の気が匷いずころ自䜓は結構奜きで、だけど俺も折れるこずはできなくお、匵り合っお  どこで間違っおしたったんだろうな。
     今も隣で降り続ける倕立のように気持ちは晎れない。
     するずふいに倏の颚のような蚀葉が耳に入る。

    「今日の倩気でも占いたす」
    「倩気 今日はもう雚でしょう 予報では朝からずっず曇りだったけれど。今週いっぱいは曇か雚で、晎れ間は来週たでお預けらしい」
    「きっずこれが梅雚の最埌なんでしょうね。明けるずきっず、カラッず晎れる。でもたぁ、今日は晎れるかどうかが肝心な特別な日なので」
     特別。特別か。
     いろいろな思いが去来する。けれど今日はもう、恋愛のこずなんお考えたくない。
    「いえ、そうですね、仕事運をお願いしたす」
    「仕事運。わかりたした。ではお手を拝芋いたしたす」
    「あれ 手盞占いなんですか」
    「他にもありたすよ。芳盞ずか四柱掚呜ずか。タロットでも。こだわりはありたす」
    「いえ、特に」

     なんだか劙に適圓だな。
     そう思っおいるず、占い垫の女は俺の巊手銖を掎んでしわをなぞる。
    「アレルギヌはありたすか」
    「アレルギヌ」
    「そう、アロママッサヌゞやるから」
    「アロマ」
    「リラックスした方がいいでしょう 䜓が固たっおるず頭も運呜も固たるからね。どの匂いが䞀番奜きかな」
    「運呜」
    「そう。倉えられないなら占いなんお䜕の意味もない」
     占い垫は机の䞋から玠早く本ほどの色ずりどりの小瓶ず癜い陶磁の䞞いポッドを出した。
     その途端にフワリず耇雑な銙りが挂う。オレンゞのような、バラのような、ミントのような、そんな色々な銙りがたざりあう銙気。
     本ず぀順番に軜く錻にあおるず、嗅ぎなれた爜やかな銙りがした。
    「これは、りんご」
    「そう、青りんご。よくわかったね」
    「ええ、たぁ」
    「ちょうど季節だよね」

     占い垫は青りんごのアロマをずり、甚意されたオむルに数滎垂らすずふわりず銙りが広がった。なんずなく淀んで垂れ蟌めた雚の湿床がそこだけ霧散した、気がした。
     それからポットの䞊郚にペットボトルから氎を入れおそこにも数滎。ポットの䞋にキャンドルを入れるず、ふうわりずした銙りがたた広がる。その空気の塊が呚りの雚の湿めったい臭いを抌し出しお、青りんごの銙りのシャボン玉のなかにでもいるような枅涌な気配に包たれた。

    「火を䜿っおもいいんですか」
    「たあ、駄目なんだけどね、でもこんな雚だからバレないだろ」
     占い垫は口の端っこだけで笑う。
    「そう、でしょうか」
    「そうそう。それでお兄さん、仕事はわりずうたくいっおるだろ」
    「ええ、たあ」
     仕事  。
     仕事運を頌んだけれど、特に䜕か気になるこずがあるわけでもなかった。うたくいっおいるような気はする。少なくずも倧きな倱敗はない。比范的順調に生きおきお、このたたうたくいけばそれなりには  。
     がんやりず将来のこずを考えおいる間にも占い垫は俺の手銖やら指を順番に揉みほぐしおいく。慣れないぬるぬるした気持ち悪さず、マッサヌゞの気持ちよさ。でもこの銙りで少しだけリラックスしたような心持ち。
     将来か。
    「お兄さん、占い興味ないだろ」
    「はい、あっ」
     こがれた肯定はこの銙りに油断したからだろう。
    「くふふ、いいさいいさ。たあここに来たのも䜕かの運呜の気たぐれだろ」
    「はぁ」
    「そうだなぁ。お兄さんはこのたただずそれなりに出䞖しお、それなりに幞せに結婚しお、それなりに幞せな老埌を過ごすだろうさ」
    「やけにざっくりですね」

     少し呆れた気分になる。
     占いずいうのはこんなにざっくりしたものだろうか。誰にでもいえるような、そしお誰にでも圓おはたるような。でも前に占っおもらった占いも確かにもっずもらしく蚀い繕っおはいたけれど、それっぜいこずを蚀うだけだった気がする。
     なんずなく特別な気分だったのが、なにか少しバカバカしくなった。
     そんな空気を読んだのか占い垫は続ける。
    「ふふふ、困っおない人にはあたり蚀わない方がいいのさ。占いなんざ、ちょっずした歯車の掛け違いで結果が倉わっちたうもんだからね」
    「そんなものですか」
    「そうだよ。そうだな、さっきのは色々隠さず蚀っちたったずこもあるが、䟋えば私が『あなたはこれから時間以内にバスに乗るでしょう』ず蚀ったずする。でも聞いちゃった以䞊、予定になくおもこのぞんで時間時間を぀ぶすこずができおしたう。聞かなきゃ乗っおたはずなのにね。本圓に圓たる占いっおいうのはそんな量子力孊みたいな埮劙なもので、本圓に必芁な時以倖は真実を聞かせちゃだめなんだよ。ねじ曲がっちゃうからね」
    「量子力孊、ですか」
    「そうそう、芳枬するず未来が倉わるのさ。だからどうでもいいこずはなんだかよくわからない蚀葉で煙に巻く。ほら、反察の手も」
     腑に萜ちない気分で巊手を差し出す。
     けれどもこころなしか、右手は先皋よりは随分柔らかくぜかぜか枩たっおいお、少しだけ緊匵が解れたように思えた。

    「じゃあ占いっおのは圓たらないものなんですか」
    「いいや、圓たるよ。でも人生なんおたいおいの堎合は圓おおも意味がないのさ」
    「ふふ」
     占い垫なのにその物蚀いはなんだか面癜かった。
    「信じおないね」
    「たぁ、圓たるのでしょう」
     占い垫の女は怒るでもなく優しげに口角を少し䞊げおに俺の目を芋た。
    「じゃぁ、圓たる占いをしおやる」
    「圓たる占い」
    「そのかわり、圓たったら、私の蚀うこずを䞀぀聞くこず。これは仕事運の話じゃないからお代はいらない」
    「圓たったら」
    「そう、圓たったらでいい。䞖の䞭にはね、明らかで告げおもいいものっおいうのはたたあるものさ」
     占い垫は悪戯っぜく笑っお、さあどうする ず問いかけた。
     そしおぱちりず青りんごの銙りが匟けた気がした。
    「いいですよ。䜕を圓おるんです」
    「倩気さ」
    「倩気、ですか」
    「最初に蚀っただろ じゃあ圓たったら、私の蚀う通りにするかい」
    「いいですけど、明日晎れる、ずかはなしですよ。䞀日䞭空を芋匵っおはいられないんですから」
    「ふふ、もちろんだ」

     占い垫はそう笑っお俺の巊手から指を離し、パチリず䞀拍手を叩く。劙に真剣な、党おを芋通すような芖線で目の前の䜕もない空間を睚み぀けおから䞡手のひらで顔を塞いでその隙間から䜕かを祓うようにスゥず息を吐き出した。
     わずかな時間だけれども、その所䜜の矎しさず神々しさは劙に俺の心を打った。
    「分埌に雚がやんで、分埌にきっちり晎れ䞊がる。そしおキレむな橋が描けられお男女は再び巡り合うだろう。東の魔女オステンスが倩地神明に誓っお」
    「は え」
     面食らう。分埌 分埌 さきほどのふわふわずのれんに腕抌しな返答ず違っお劙に具䜓的なその時間。困惑しおいる間に魔女は続ける。
    「ちゃんず晎れるから。晎れたら玄束通りお兄さんはすぐにこのアヌケヌドを出おたっすぐ進んで、最初の倧通りでバス停の方に向かわずに右に行くんだ。これが最埌のチャンスだから。そうしないず、お兄さんはい぀たでもぐじぐじず埌悔するよ」
    「右に」
    「そう。右」

     ふいに、音がやんだ。
     振り向いた。
     背䞭にぞわりず䜕かが駆け抜けた。
     雚が、あがった。
     倖を芋るずただ雲はもくもくずしおいたけれども雚は確かに止んでいた。さっきたで絚毯爆撃のように雚が降り泚いでいたのに。呆然ずした。
    「さお、もうあたり時間がないから粟算を枈たせおしたおうか」
    「粟算」
    「そうそう、私は占い垫で、お兄さんはお客。でも困ったね。時間ずしおは分くらいだから円ず思っおいたのだけど、ご䟝頌のお兄さんの仕事運はろくに占っおないな。うヌん」
     魔女は现い眉毛をあげおりンりン唞っおいる。
     仕事運。仕事運ずいうかさっきの占いにはお金を払う気持ちにはならないけれど、雚が䞊がったのは圓たった。占いは圓たったのだ。
     それに、分埌、぀たり分埌なんおすぐに来おしたう。そしおきちんず晎れるなら、俺はすぐにアヌケヌドを出ないずいけない。そうするず、確かに粟算時間はない。
     これが最埌のチャンスならば。

    「あの」
    「ううん、どうしたものかねぇ。ここは䞀぀、お兄さんのお気持ちでっおこずでどうだろう」
    「俺の気持ち」
     圌女ず別れおぐじぐじした気持ちで俺はこの怅子に座った。誰かず話がしたかった。この気持ちを、これからを、どうしおいいのかわからず心にどろどろずした枊を巻いおいた。
     でもさっきからこの魔女ず話しおいお、アロマの効果もあるのだろうけど、青りんごの銙りず盞たっおなんずなく気持ちが少し萜ち着き軜くなっおいた。雚が䞊がっお爜やかな倏の颚がその衚面を吹いたように。

     きちんず雚がやんだなら、そしおきちんず空が晎れたなら、急いでいけば、間に合うのかもしれない、バス停の方に向かわなかった圌女に。なんずなく、そう思えた。
     わぁ、ず小さな歓声があがった。
     思わず再び振り返るず雲は匷い颚に次々ず吹き飛ばされ、芋る間に星の瞬きに塗り替えられおいく。たるで魔法のようだ。そしおその真䞭にきれいな倩の川がみえお、今日必芁な぀の星が癜く明るく茝いた。
     そう、今日は䞃倕で、ずおも特別な日だ。圌らは幎埌に䌚えるかもしれないが、今䌚わなければ俺は圌女にもう䌚えない、床ず。
     倕立が䞊がっお晎れたからには、䌚いに行かなくおは。
    「ほら、もうお代はいいから早くいきな」
     あわただしく財垃を開く。䞀䞇円札を机の䞊に投げ぀けおアヌケヌドの倖に飛び出すず背䞭から、お代は確かに、ずいう声がきこえた。

    Fin


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    衚玙
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    神接地図

    オステンスの占い屋は画面北東郚の再青川沿いのGalleria神接にありたす。郊倖型の倧型ショッピングセンタヌで、神接駅からシャトルバスが出おいる。MAPでオクテンスになっおいるのは、魔女がいい加枛で間違っおるのを修正しなかったから。

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