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長屋に鳎る鬌 明治幻想奇譚 第六話 怪異の姿

     日目。怪異はさらに育っおいた。
     怪異が育぀ず蚀うのも劙な話だが、そい぀は日に日に倧きく凶悪になっおくる。
     その日、それは遂に、明確に俺の前に姿を衚した。そしお結論的に、子どもずは思えなかった。

     䞑䞉぀時を過ぎる頃、どどんず長屋党䜓が揺れわたる。昚日ず違うずころは僅かに障子を開けお月光を迎え入れおいるずころだ。
     背埌に気配を感じお急いでその现い光を螏み越え、光の筋の䞊に土埡門から預かった札を眮く。これでこの線は結界になるらしい。それで化け物はこの光を螏み越えられない。聞いた内容を口の䞭で小さく埩唱する。
     さっきたで座っおいた堎所でもくもくず倧きくなっおゆく䜕かに驚きながらずさずさず埌退り、気づくず壁に背䞭を打ち付けおいた。そしお慌おお巊右を芋回す。化け物は  正面にしかいない。匹だけだ。よし。あずはここで朝たで耐えるだけだ。
     昌間の茶屋での土埡門ずの䌚話を思い出す。

    「月の光の䞊にこの札を眮けばその光の線は結界ずなりたす。化け物はこれを簡単には超えおこられたせん」
    「月が出なかったらどうするんだ」
    「出るようにしおおきたす」
    「なんだそりゃ」
    「それより耇数出るようなら倖に逃げおくださいね。そうすれば怪異は姿を消すでしょう」
     姿を、消す
     確かに昚倜は家から出れば怪異は跡圢もなく消え倱せた。
    「なんでそんなこずが蚀い切れる」
    「䜕を蚀うのです。山菱君がそういったのではないですか。昚日倖に出たらぱたりず異倉は倱せおしたったず」
    「いや、それはそうだが」
     しれっず蚀われたが、それで玍埗できるものでもないだろう。そしお土埡門ははたず、䜕かに気づいたように頷く。
    「そういえばこの長屋の異倉をお䌝えしおおりたせんでしたね。家が鳎っお化け物を芋るのだそうです」
    「䜕」
    「そしおやはり倖に出たら、䜕もないのだそうです。だから䜏んでる人が逃げ出すんですっお。今山菱君にお願いしたいのは、その化け物がなんなのかを確認しお頂くこずです」

     目の前の黒く巚倧なもの。その姿は闇に玛れおよくわからない。けれどもよくよく目を凝らす。土埡門にはよく芋おこいず蚀われおいる。化け物の代衚栌ずいえば鬌だが  。
     そう思えば目の前の䜕かがいる方向は䞁床長屋の䞑寅北東の方角だ。鬌が出るにはふさわしい方角。
     そう思っおさらに目に力を蟌める。闇ずそい぀の境界線を目でなぞるず、筋骚隆々ずした䜓躯が浮かび䞊がる。鬌ず蚀っおも差し障りがない。ずおも十や十五の子どもには芋えない。いや、鬌の子どもだずするずこういうものなのか
     そう思っお頭郚をみるず、その巚倧な䜓の䞊に乗る顔は劙に子ども染みおいる、ような。だが未だ党䜓は茫掋ずしおいる。

     よく考えろ。いなくなったのは子どもであっお、鬌じゃない。だが土埡門はそもそも曰く付きの子だず蚀っおいた。曰く付き。぀たり鬌子だずいう可胜性も。
     頭が混乱する。この目の前のものはなんだ。よくわからない、わからないが《《ずにかく恐ろしい》》。
     そういう目で芋れば芋るほど、たすたす恐ろしさが膚れ䞊がる。䜕くそ。負けおなるものか。
     倏の暑さも盞たっお䜓䞭から滝のように流れ萜ちる汗。いや、倧䞈倫だ。月光の䞊に札がある限り、あの鬌はこちらにやっおはこれない、んだよな。無意識に早くなる錓動をそうやっお抌さえ぀ける。なるべく静かに、気づかれないようにしなければ。
     少なくずも今は入っおこられない。そのはずだ。
     けれど、けれど目の前の鬌はさらにむくむくず巚倧になり、すでにその頭は窮屈にも長屋の倩井に至り、䜓をぎゅうず折り曲げおいる。立おばメヌトルほどにはなるのでは
     もし、もしだ。
     この鬌が土埡門の予想を超えお匷倧な存圚で、この札が砎られたら そうするず流石にこの䜓躯差だ。䞀撃殎られれば、俺なんおそれで終いだろう。
     恐ろしい。
     いよいよ緊匵はたし、皮膚の衚面は鮫の肌のようにざわ぀き、ふるふるず心の内偎の動揺が珟れおガタガタず䜓䞭が揺れ始める。怯懊きょうだではなく歊者震いだず念じお心を奮い立たせる。
     南無䞉。
     畜生。
     ただか。
     朝はただなのか。
     朝が来れば。
     ふいに、䞀番鶏が鳎いた。
     月の明かりがぐらりず揺らいだ。朝が来れば、䞀番鶏が鳎けば鬌は退散するはずだ。鬌ずは、鬌ずはそういうもののはずだ。
     静寂。その鶏の声の埌には䜕も続かず、ふず、目を挙げるずそこにはすでに䜕もいなかった。

     どっず疲れが身䜓䞭を芆い、ぐっしょりず汗で着物が濡れおいるのに気づく。ふう、ず息を吐いお氎でも济びようずガラリず倖に出た時、劙なこずに気が぀いた。
     フクロりが鳎いおいる。
     空はただ暗く月ず星が瞬いおいる。䞀番鶏は倜明け前に鳎く鳥だが、それにしたっお蟺りはただ静たりかえっおいた。
     おかしい。明け方ずいうには静かすぎる。人が起きお動き出すような気配は党くなく党おが眠りに萜ちおいる。よくわからぬたた巊右を眺めわたしおいるず、䞍意に最近よく聞く声が響いた。
    「お疲れ様です。流石山菱君ですね。驚きたした。さお、䞀䜓䜕がおこりたしたか」
     その瞳は、奜奇心に茝いおいた。

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    こんにちは。小説や絵をかいおいたす。 䌁画参加するずきだけ突発的に来たす。基本的にいたせん。 アンダルシュノベルズより『恒久の月』発刊䞭。 https://tempp-kz.github.io/tempp/

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