
手乗り文鳥ポワロの事件簿②『ポワロとキャラクター祭』【エピローグ 虎は死して皮を留め】
翌年十月下旬。
日子根城の城下町は、今年も大勢の観光客で賑わっていた。
空は高く澄み渡り、秋風が心地よい。
会場となったメインストリートには、色とりどりのキャラクターたちが並んでいる。
昨年と違うのは、その規模だった。
「みなさん、こんにちは!」
ステージ上で司会のお姉さんが元気よく叫ぶ。
「日本地元キャラクター祭 in 日子根、開幕です!」
会場から大きな拍手が湧き起こった。
「おい」
香川がパンフレットを見ながら首を傾げる。
「イベント名、変わってないか?」
「変わりましたね」
長谷部が笑う。
「今年かららしいですよ」
「そうなのか」
「はい」
長谷部はパンフレットをめくった。
「全国から二百七十五体のキャラクターが集まったそうです」
「二百七十五体!?」
香川が思わず声を上げる。
「去年より百体以上増えてるじゃないか」
「そうなんです」
長谷部は頷いた。
「全国持ち回りはやめて、今年から毎年日子根で開催することになったそうですよ」
香川はしばらく黙っていた。
視線の先では、子どもたちがキャラクターたちと写真を撮っている。
笑顔。
歓声。
祭の空気。
去年の事件が嘘のようだった。
「みんな」
長谷部がパンフレットを見ながら言う。
「西川実行委員長の意思を引き継ごうって集まったみたいです」
「そうか」
香川は小さく呟いた。
西川真一はもういない。
だが祭は残った。
そして去年よりも大きくなった。
香川は空を見上げた。
青く高い秋空だった。
「虎は死して皮を留め、人は死して名を残す……か」
「何ですか、それ」
「知らんのか」
「難しいこと言わないでくださいよ」
「これだから最近の若いのは」
「それ、ジェネハラですよ」
その時だった。
無線が鳴る。
『本部より会場警備へ。落とし物の届け出です』
香川と長谷部は顔を見合わせた。
「仕事だな」
「ですね」
長谷部が頷く。
二人は人混みの中へ歩き出した。
あんず湖から吹く風が会場を通り抜ける。
どこからか焼き鳥の香りが漂ってきた。
香川の肩の上では、ポワロが羽を震わせている。
香川が笑う。
「どうした」
ポワロは長谷部のバッグに揺れるきんとらくんのキーホルダーを見つめたまま動かない。
「チチッ」
不機嫌そうな声だった。
「まだ妬いているな」
香川が笑う。
長谷部が吹き出した。
会場では子どもたちの歓声が響いている。
秋空の下、今年も日子根の街には、祭の声が響いていた。
→To be continued…
BONUS あとがき
━━━━━━━━━━━━━━
手乗り文鳥ポワロの事件簿
シリーズはマガジンにまとめています。
過去作・最新話はこちらからどうぞ。