
歌になる前の物語。第八話「夢は叶った。でも、隣にあなたはいなかった。」
夢を叶えたら、
幸せになれると思っていました。
ずっと憧れていた場所。
ずっと目指していた未来。
そこへたどり着けば、
きっと、
何も後悔しないと思っていた。
だから私は、
あなたの手を離した。
Departure gate。
行き交う人たちの中で、
あなたが笑っている。
「頑張って」
「夢、叶えてね」
そんな言葉を、
あなたはくれた。
私も笑った。
大丈夫。
これでいい。
自分で選んだ未来なんだから。
そう、
何度も自分に言い聞かせた。
でも本当は、
あのとき、
あなたに言ってほしかったのかもしれない。
「行かないで」
って。
そして私も、
言いたかった。
同じ言葉を。
それでも私は、
夢を選んだ。
あなたを残して、
前へ進んだ。
新しい場所。
新しい景色。
少しずつ、
夢だったものが
現実になっていく。
誰かが名前を呼んでくれる。
拍手をしてくれる。
「おめでとう」
と言ってくれる。
ずっと欲しかったはずのものが、
ひとつずつ、
手に入っていった。
なのに——
どうしてだろう。
こんなに、寂しい。
夢は、
ちゃんと叶った。
でも、
その景色を
一番見てほしかった人がいない。
嬉しいことがあったとき、
真っ先に伝えたかった人。
「やったね」
って、
隣で笑ってほしかった人。
それが、
あなたでした。
成功すればするほど、
思い出してしまう。
もし、
あの日に戻れたら。
私は、
同じ選択をするのだろうか。
それとも、
あなたの手を、
今度こそ離さないのだろうか。
答えは、
今でも分からない。
だって、
あのとき夢を選んだから、
今の私がいる。
でも、
あなたを失ったから、
今の私がいる。
どちらも、
私が選んだ人生だから。
空港のロビー。
大きな窓の向こうに、
滑走路の灯りが見える。
ひとつ、
またひとつ。
滲んでいく光。
それを見ていると、
過去と未来が、
同じ場所にあるような気がする。
あの日の私と、
今の私。
夢を追いかけた私と、
あなたを愛していた私。
どちらが本当の私なのか。
きっと、
どちらも私なんだと思う。
夢咲姫愛(Teara)
『Runway of Memories』
この曲で描いているのは、
夢を諦めた人ではありません。
むしろ、
夢を叶えた人です。
だからこそ、
切ない。
欲しかった未来を手に入れたのに、
そこに、
大切な人はいなかった。
Success means nothing without you.
成功したからこそ、
初めて気づいてしまった。
本当に欲しかったものは、
成功だけではなかったことに。
人生には、
選ばなければならない瞬間があります。
夢か。
恋か。
仕事か。
家族か。
今か。
未来か。
そして、
そのときの自分なりに、
一生懸命選ぶ。
だから私は、
過去の自分を
責めなくてもいいと思っています。
あのときは、
あの選択しかできなかった。
ただ、
選ばなかった未来を、
時々思い出すことはある。
「あのとき違う道を選んでいたら」
って。
飛行機が、
滑走路を走り始める。
少しずつ速度を上げて、
やがて、
地面を離れる。
もう、
戻れない。
でも、
窓の向こうには、
まだ見たことのない空がある。
だから、
前へ進むしかない。
あなたとの記憶も、
あの日言えなかった言葉も、
全部、
胸に乗せたまま。
もし、
もう一度だけ会えるなら。
今度は、
強がらずに言いたい。
「夢を叶えたよ」
そして、
もうひとつ。
あの日、
どうしても言えなかった言葉を。
「行かないで」
って。
もう遅いのかもしれない。
それでも、
あなたは今も、
私の記憶の中で、
一緒に飛び続けている。
夢は叶った。
でも、隣にあなたはいなかった。
それでも私は、
あなたとの記憶を乗せて、
また未来へ離陸する。
夢咲姫愛(Teara)
『Runway of Memories』
また次の、
「歌になる前の物語。」で。✈️🌙