
内山夫人の普通の日|洗濯どうする?
「ねえ、今日どうする?」
ベランダの方から声が飛ぶ。
「何がだ」
「洗濯よ。外に出す?やめる?」
「曇ってるな」
テレビを見たままの声。
「こういう日が一番困るのよ」
夫人はカゴを見た。
少し間。
「降るか?」
「降りそうで降らないのよ」
「一番面倒だな」
「でしょ」
また少し間。
「全部外に出すとやられるし」
「中だと乾かない」
「そうなのよ」
夫人は少し考えた。
「半分だけ出す」
「半分?」
間を置かずに言う。
「どうせ全部は無理なんだから」
内山さんは少しだけ笑った。
「雑だな」
「いいのよ、それで」
夫人はカゴを持った。
「外が勝ち、中は保険」
ベランダに向かう。
「降ったら?」
「そのときは、そのとき」
少しして、ぽつ、と音がした。
夫人は空を見た。
「ほらね」
誰に言うでもなくつぶやく。
でも手は止めなかった。
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