
「金魚」
金魚釣りで、和金が二匹釣れた。
片方はとても大きく、もう片方は小さかった。
うちに遊びに来た子供たちに名前を聞かれた時、 まだ名前をつけてなかったのだけれど「キンちゃん」だと答えた。
小さな方にも名前がいると言われ、仕方なく「ギョちゃん」と名付けた。
二匹で「キンギョちゃん」だ。
あれから十数年がたち、今はもう、小さな「ギョちゃん」だけになった。
一匹になってからの「ギョちゃん」は、誰かが近づくと水飛沫を上げ、逃げ惑うようになった。
二匹だった時は、大柄な「キンちゃん」に餌を横取りされたり、突かれたりと、なかなか穏やかではない水槽だったけれど、あの時の「ギョちゃん」の方が活き活きしていた。
今の「ギョちゃん」は、前より安全なはずなのに、いつも怯えていて、寂しそうに見える。
今日も、一匹しかいない水槽に向かって、欠けてしまった名前を呼び続けている。