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【執念第一】#毎週ショートショートnote

    「そりゃあ、執念第一でしょ」
    彼女をどうやって口説いたかに対して、そう答えたのがクラスで一番人気のあるマサキくんだったから、一同が口をあんぐりさせた。
    僕も驚いた。欲しいものはなんでも手に入れていると思うマサキくんの原動力が執念だなんて信じられなかった。
    マサキくんの「(彼女と)お付き合い始めました」宣言で、クラスの女子の大半は息が止まり、その相手が一個上の三年生で生徒会の副会長をしているコノエさんと聞いてみんながいろめきたった。
    コノエさんは生徒会役員もしているが、小さな頃から子役として活躍してきた女優さんでもある。
    マサキくんも赤ちゃんの頃からモデルを始め、やはり子役としても映画に出たり、芸能活動をしていた。顔良しスタイル良し性格良し、勉強もそこそこ(疎かにしてはいけないというご両親の言いつけを守っているだけと本人は言う)、運動神経も抜群。彼がどんなに人気があってもそれを妬む相手はいない。「あいつだったら仕方ない」誰もがそう言うナイスガイ。
    「もうね。10年以上、ずーっとミウを口説いてきたんだ」
    10年以上?あ、そうか。お仕事する時に会うんだ。
    「一目惚れだよ。俺が4歳。ミウが5歳」
    コノエさんをミウと下の名前、しかも呼び捨てできるのは彼氏の特権だよなぁ、と誰もが思う。
    「ついにミウが根負けした感じ?それに事務所関係者も」
    そうか、そういう問題も彼らにはあるんだ。
    「ストーカーしてたとかそういうわけじゃないよ。毎日手紙を書いたんだ。手紙の最後には『僕は今日も君を好きです』と一言添えて」
    時間がなくて長く書けない時はその最後の一言だけを書いたのだという。
    「10年以上?毎日」
    「それは文字が書けるようになってからだけどな」
    小学生の頃からと考えても今年高校2年だから、10年は続いている。
    その間、彼を振らなかったコノエさんもすごい。
    「いや、今まで8回は振られている」
    それでも挫けなかったのはまさに執念だ。
    「今日は一緒に現場なんだよねぇ」
    嬉しそうにマサキくんはバッグを肩に掛ける。
    「じゃ、そういうわけで」
    さわやかな笑顔で手を振るとマサキくんは教室を出て行った。
    みんなつられて手を振っていたが、一斉に我に返った。
    「案外としつこいんだ」と男子。
    「一途と言って」と女子。
    しばしの沈黙の後、教室に一斉にいくつもの溜息が重なった。
    その溜息の理由はみんな違うことを誰もがわかっていたが、みんな何だかおかしくなって笑ってしまった。
    マサキくんの執念がこの先彼をどこに導くのか、僕は執念深く見守るつもりだ。

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    本作品はamazon kindleで出版される410字の毎週ショートショート~一周年記念~ へ掲載される事についてたらはかにさんと合意済です。

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