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ブルームーン

    1年でいちばんうつくしいのは5月だと思う。透明感のあるひかり、それを受けてきらめく新緑、咲き誇る花々、祝福されているみたいなみずみずしさをたたえた世界。春の眠たげなひかりと夏のまっしろなひかりのあわいにある、圧倒的に透明なひかりの瞬間。



    太陽系でいちばんうつくしい惑星は地球だと思う。ダイヤモンドの雨が降るという土星も、宵闇にきらめく金星も、青い夕焼けがみえるという火星も魅力的だけど、地球の青と白にはかなわないと思う。海や花や緑があんなふうにきらめくなんて、雲がこんなふうに流れて風がこんなふうに通りすぎてゆくなんて、信じられないことだと思う、うつくしすぎる、ひかりは色を束ねれば束ねるほどあかるくなる、地球上のすべての色をだきしめたらひかりになるんだと思うと胸まで透き通ってゆく心地、地球って視覚的にも概念的にもうつくしくてすごい、地球のしくみそのものがひとつのおおきな芸術。地球以外の地面に立ったことがないから比較できないとも思うけれども。



    うつくしいものをうつくしいと思えるひとみとこころで生活してゆきたい、しぬまでいきなきゃいけないのならうつくしさに胸をときめかせていたい、絶望は絶望のまま存在しているけれど希望は希望のまま存在していてほしい。さいきんようやくそう思えるようになった、なったのに、わたしのからだの外側では、いままでとは異なる性質のおそろしさが膨らんできているように感じる。



    たとえば退廃的な文学をうつくしいと思うのはそれが文学だからであって、二十一世紀を生身のからだで生きるわたしたちの生活は実存的にうつくしいものであってほしい。トカトントンなんて聞こえない方がいいし、人間は恋と革命のために生まれてきたとはわたしは思わない。


    ずっと地球や宇宙にうっとりしていたい、地球のこと、太陽系でいちばんうつくしい惑星だと思っているのに、人間がうつくしくなさすぎて(本質的にはうつくしいのかもしれないけどあらゆる選択を間違えている気がして)くやしい。今夜はブルームーン、みたらしあわせになれるらしい、月、地球の衛星でいてくれてありがとうと思う。

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