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ピクサーに行きたくて、CIAに呼び出された話

    ピクサー映画が大好きなんです。

    初めて観たとき、あのCGで描かれる滑らかな動きや豊かな表情には本当に驚かされました。全編CGなのに「映画」として見事に成立している。あの映像美とクオリティには、言葉にできないほどの衝撃を受けました。

    そんな思いが高じて、いつか本社に行って制作現場を見てみたいと、まずはピクサーにメールを送ってみたんです。

    当時、ピクサーのディレクターがジブリと交流があるって噂を聞いていました。ちょうど三鷹に住んでいたので、メールには「ジブリ美術館のある三鷹から、そちらに伺いたいです!」と、ほんのりジブリとの縁を匂わせる一文を盛り込んでみました。

    英語はさっぱりなので、英語ができる先輩に英訳してメール作成してもらったあと、ドキドキしながら送信…。

    数日して返信が来た!

    1通目は自動返信。便箋のような形で、おしゃれなメールの右下にウッディとバズが。史上最高の自動返信メール。翻訳機能を使って日本語訳にしてもらうと、メールくれてありがとう的な文章が書かれていました。

    その後、しばらくして届いた2通目はなんと制作スタッフさんからの丁寧なメール。「個人を一人だけ招待するのは無理だけど、定期的なスタジオ見学会があるから機会があればぜひ」という内容でした。

    結局、イベントの時期が合わなくて見学は諦めたのですが、せめてサンフランシスコまで行って、カニを食べたり、名物の路面電車に乗ったり、いろいろな楽しい思いをしたあと、ピクサー本社前で「ありがとう」と叫んで帰ろうと思いました。

    本社前で叫ぶなんて迷惑な話ですね。

    旅行代理店でチケットを取ったのですが、ここでトラブル発生。アメリカ入国に必要なエスタ(ESTA)が、ネットで何度申請してもエラーで通らない。代理店に相談して調べてもらうと、驚きの事実が発覚しました。

    どうやら自分を騙っている「偽者」がいたみたいで、その人のせいで申請がブロックされていたんです。

    改めて申請するには大使館へ行って、自分は無実だという面接が必要で、その後、申請が通るのが数ヶ月かかると言われ、「それは無理だわ……」と断念。行き先をエスタ不要の国に急遽変更しました。

    こんな事例は誰も聞いたことがないらしく、誰に話しても信じてもらえず「申請方法ちゃんと読んだ?」とか「操作間違えたんじゃない?」とよく言われました。

    で、旅行当日。空港で飛行機を待っていたら、突然アナウンスで名前を呼ばれた。エスタの件があったから、なんとなく「あ、来たな」と思っていました。

    カウンターへ行くとCAさんに待機を命じられ、しばらくして奥からアジア系の男性二人が登場。小柄だけどガッチリとした体格で、スーツをビシッと決めていました。

    そのうちの一人が見せてきた手帳には、なんと「CIA」のロゴが。映画好きだからロゴは知っていたけど、本物を生で拝めるとは思いませんでした。ピクサー映画には出てこないであろうロゴ。

    本当は写真を撮りたかったくらいです。不謹慎ながら、このままFBIの人も来ないかな、なんて少し期待してしまいました。

    偽者の存在、通らないエスタ、そして目の前のCIA。ピクサーにお礼を言いたいだけなのに、自分が映画のような非日常になってる。

    CIAの人は自分を見るなり、「違うよな」という顔をしながら、スマホに映ったスキンヘッドの白人男性の写真を見せて「この男はあなた?」と聞いてきた。

    あまりに似ても似つかないので「(そりゃもちろん)違います」と答えると、そこにいたCIAの方々も、通訳してくれたCAさんも、全員が、「だよね…」というような表情で苦笑い。

    CIAは「了解」って感じで、あっさり帰っていきました。これで良かったのでしょうか。

    今になればCIAの人ともっと話せたらよかったなと思いますが、当時は完全にパニクっていたし、そもそも言葉も通じなかったしで、そんな余裕はありませんでした。

    CIAが登場したのだから、エスタ申請ができなかったことは間違いではなかったことがわかった。もしかして壮大なドッキリ?

    旅行は無事に行って帰ってこれたのですが、帰国後の日本の空港でまた呼び出されました。今度はCAさんだけで、「今後、あなたのエスタ申請は通るようになるそうです」と伝えてくれました。

    あのスキンヘッドが捕まったのか、ただの人違いだったのか、結局よくわからないまま一件落着?です。

    結局、ピクサー本社には行けずじまい。

    でも、あのとき予約していたサンフランシスコのホテルのエリア、後で調べたらかなり治安が悪い場所の近くだったんですよね。それを知って、「あのとき行かなくて正解だったのかもな」なんて思っています。

    そんな十数年前にあった、お話でした。

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