
後悔にも種類がある
昨日、母と妹と共に服を買いに行った。
わたしは服をめったに買わない。
おしゃれに興味が薄く、行動範囲が狭いのもあって、必要とする服があまり多くないのだ。
十年、二十年、同じ服を着ている。
中には「この服、小学生の頃から着ているよな……?」なんてものもあるほどだ。
これは物持ちがいいとは言わない。無精だ。
しかし困らないのだからいいではないか。
多少シワやくたびれはあるけれど、洗濯はきちんとしていて不潔ではないし。
やや他人に見られるのは気まずいネタTシャツもあるけど、出かける際は上着を着てしまえばわからないし。
しかし、近々『冠婚葬祭ほどフォーマルではないけれど、さすがに普段着ではよろしくないだろう』というイベントが発生することになってしまった。
ので、『きれいめカジュアル』みたいな服を求めて、買い物に出かけたのだった。
ここまでが前置き。長い。
目当ての服は買えた。
ついでに、夏用のズボンも買えた。
今履いてる夏用のズボン(部屋着)は気に入りすぎて、膝に穴が空いている。いや膝どころでなくボロボロなので、さすがに新しいものが必要だと思っていたのだ……
また脱線した。
とにかく、目当てのものも買えて満足していた矢先。
ついでにチラッと見たサンダル売り場で、少し気になるサンダルがあった。
別に高級ブランド品ではない、そう珍しくもないデザインで、セール品のサンダルだった。
サンダルが欲しかったわけではない。
ちゃんと見てなかったので断言はできないけど、たぶんサイズも合わなかっただろうし。
プライベートで出かけることが稀な出不精なので、履く機会がないのだから。
母と妹はもう店を出るべく先に進んでいるタイミングだった。
だからわたしもその後を追って、退店した。
その後も別の店で、その場で気になったもの、以前から欲しかったもの、満足のいく買い物ができた。
の、だが。
今現在、あのサンダルのことを引きずっている。
繰り返すが、欲しかったわけではない。
あの場を去った時点でめちゃくちゃ後ろ髪を引かれていたが、欲しかったわけではない。
必要ないものだ。欲しいものでもない。
ほんの少しだけ、その場で気になった。それだけのものだった。
『買わない後悔』というものがある。
「『買った後悔』より『買わなかった後悔』は引きずる」とも聞く。
「なんでこんな物を買ってしまったのか……ああ無駄遣いしてしまった」という後悔より「なんであの時買わなかったのだろう、ああ買っておけばよかったな……」という後悔の方がずっと引きずるというものだ。一理ある。
が、今わたしが抱えている後悔は、『買わなかった後悔』ではない。
これはそれよりも前段階での後悔だ。
強いて言うなら『試し履きをしなかった後悔』だろうか。
気になったなら、その場で試着(靴も試着というのだろうか?)すればよかったのだ。
試しに履いてみて「ああやっぱりサイズが合わなかった」とか「サイズは合ってるけど、なんかしっくりこないな」とか思ってから、棚に戻せばよかったのだ。
そこで「サイズも合ってるし、いいかもしれない。でも買わなくてもいいかな」と思って終わってもよかったし、買わなかったのに「やっぱあれ買えばよかったな……」と『買わない後悔』に苛まれてもよかった。いや後悔があるのはよくないが。
『試し履きをしなかった後悔』とは、言い換えると『チャンスを見送った後悔』だ。
母と妹がもう退店しようとしていたとしても、そこでサンダルを試しに履いてみてよかったのだ。いくらなんでも、わたしを店に置き去りにしてそのまま2人だけで次の店に行くなんてことはしないのだから。
満足のいく買い物をした直後だったから「いやさすがに、サンダルまで買うのは贅沢だよ」なんて気持ちがよぎったところはある。
正直に言えばお財布状況は厳しいものがあるので、その判断は間違いではなかったと思っている。
思っているけど、でも試してみてもよかったよね?それぐらいはやってもよかったよね?
明日も今日も、仕事がある。仕事帰りでは店はもう閉まっている。
じゃあ土日に出かけてみる?もう売れてるかもしれないのに?買う気もないのに?わざわざ行くの?
そこまでする情熱があるかといえば、ない。
ないけど、後悔だけがじわじわ背中に張り付いている。
どうしようもなくてこうして文章に綴って、ようやく少し気が紛れてきたところ。
後悔先に立たずではあるが、さほど損もないならやりたいと思ったことはやってみればいいもんだな……と思う深夜なのだった。