独歩にて
僕は自宅周辺の畦道を、特段考えることもなく歩いていた。
そこは、知る人ぞ知る散歩道だった。
犬を連れた女性とすれ違った。
犬種には興味もない。ただ小さい、いわゆる可愛い系の子犬だった。
その犬が、僕を呪わしく吠え立てた。
執拗に。今にも噛み付かんばかりの勢いで。
僕は心の中で「…………」と思った。
また別の日、僕は田んぼの一本道を歩いていた。
ふと、雲に目が留まった。
その日は雲の流れが、妙に早かった。
僕は心の中で「…………」と思った。
ふいに、あの犬に抱いた感情を思い出した。
「これを踏み潰せば、あの飼い主は鳴くのだろうか」