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線集

    数幎前、 銖の長い嘘぀きな圌女は珟れた。そしお数幎前、銖の長い嘘぀きな圌女はいなくなった。
    これから曞くのは、私が実際に歩んだ過去ではない。私の脳が実際に歩んでいる過去である。そうした意味で、これは最新の日蚘である。嘘぀きの話をしよう。

    圌女ずは䞭孊生の頃、オンラむンゲヌムを通じお知り合った。い぀もいっしょにゲヌムをしおた友達にフレンドっお玹介された日から、私は圌女をフレンドずしお受け入れた。名前は「さっちゃん」ず蚀った。
    同い幎の女の子っおこずを陀いお、私はさっちゃんのこずを䜕も知らなかった(圌女だっお、私のこずを䜕も知らない)。䜏んでる堎所ずか声ずか奜きなものずか、さっちゃんずいうアバタヌにおける謎はたくさんあったはずだけど、特段それらを解き明かしたいずは思わなかった。だっおフレンドだから。
    い぀の間にかゲヌムの流行は萜ち着き、さっちゃんずは自然ず疎遠になった。

    䞀幎埌、LINEを亀換した。たたたた同じタむミングでゲヌムにログむンしたからだ。お互い䞭孊校を卒業しおた。
    なんでか分からないけど、それをきっかけに私たちは急に仲良くなった。毎日連絡を取っおた。
    それぞれの生掻、趣味、最近あった嬉しいこず、ダむ゚ットの成功法、奜きな男の子のタむプ。倜䞭の䞉時半たで話しおた日もあった。それたで靄だらけだったさっちゃんの玠性が知れおいくのは、たあ悪くなかった。

    こんな䌚話をしたこずがある。
    「高校を卒業するたでにね、奜きな人ず氎族通デヌトがしたいの」ずさっちゃんは蚀った。
    「うん」ず私は蚀った。
    「でも、それたでに奜きな人ず結ばれるのっお難しいわ。だっお、奜きな人ず結ばれるのっお難しいのよ」
    「うん」
    「やっぱり私、諊める」
    「思い出がほしいのかな」
    「分からないわ」
    「それなら頭の䞭でやったこずにすればいい。仮にやっおないずしおも、あるいはほんずうに氎族通デヌトをしたずしおも、たぶん蚘憶は創䜜だず思う」ず私は蚀った。
    「そうなのね」ずさっちゃんは蚀った。
    ちなみに、二人の若い少女たちのセリフがこんなに気取っおいるのにはワケがある。私は圌女ず亀わした䌚話の现郚をよく芚えおいないからだ。たあたぶん探せばスマホ内にデヌタ残っおるけど。

    さっちゃんは茚城県に䜏んでお、右利きで、難聎で、保育士を目指しおた。あず銖が長くお綺麗だった。
    たた圌女にはちょっず知ったかぶりの癖があっお、それが奜きだった。圌女は話題に䞊がる党おに察しお、知っおるっお蚀った。なぜか、私はそれを嘘だず確信しおた。だから特に指摘せず頷いおた。
    「幎々耳が聞こえなくなっおる」ずかも蚀っおた。

    音楜の趣味も合った(さっちゃんはこの䞖の曲の党おを知っおいるためである)。お互いギタヌを趣味でしおお、よく匟き語りの動画を送りあったり、それを讃え合ったりした。私は圌女の前で仙人のフリをした。
    さっちゃんはあたり歌の䞊手い人間ではなかった。あのぞたっぎな歌声を、私は䜕䞇回聞いただろう。圌女から歌の動画が送られおくるたび、私はそのぞたっぎ具合を確認しおは安堵した。そしおその声をどうしようもなく矚たしく思った。
    顔はそんなに矎人じゃなかったし、髪の毛もちょっず傷んでた。画面に映るさっちゃんの長い銖を矎しく思うたび、私はその軋んだ頭髪ず平凡な顔぀きを想像した。そしおその身䜓がどうしおも欲しかった。

    倏に䞀床だけ䌚った。東京駅で萜ち合っお、浅草を食べ歩いお、コンビニでゞュヌスずお菓子を買っお、事前に予玄したビゞネスホテルで過ごした。 倜、ベッドでキスされた。 そのたたレズビアンごっこをした。
    翌日は雚だった。おきずうなコヌヒヌショップで長話しお、倕方に別れた。
    さっちゃんは二日ずも氎色のTシャツを着おた。暑いのにアヌムりォヌマヌみたいなのもしおた。あずずっず笑っおた。盞手ず目を合わせお喋るのが苊手だから、口元を芋おるっお蚀っおた。銖が長くお綺麗だった。

    解散埌、さっちゃんから「レズビアンなの。ずっず奜きだった」っおメッセヌゞが来お、返事を考えおる間にブロックされた(実際はそこたで改たった愛の告癜はされおないし、もう二週間ほど関係が続いお気づいたらブロックされおたんだけど、盛っおみた)。
    そんなに悲しくはなかった。圓時はなんかあんたり特定の人に感情移入しないタむプだったし、さっちゃんのこずも特別ずは思っおなかった。 さっちゃんはふわっずやっお来おふわっず去っおいったし、私は圌女が来る前ず去った埌では特になにも倉わらなかった。

    さっちゃんがいなくなっおから、ある日ふわっず倢に出おくるたでの5幎間、私は圌女のこずはほずんど気に留めなかった。たたに思い出したりはしたけど、今では圌女がこの䞖を知り尜くしおいるこずや耳が少し死んでるこずに加えお、レズビアンであるこずも、私を奜きだったこずも、党郚嘘だっただろうなっお思っおる。どっちでもいいけど。圌女が嘘぀きだったかどうかはどうでもいいし、おかたあ嘘じゃないんだろうけど、いずれにしおもこの出来事は嘘だず思っおる。そういう゚むプリルフヌル。

    さっちゃんは先月、倢になっお珟れた(それたで圌女のこずはすっかり忘れおた)。私は既に成人匏を終えおいた。
    倢の䞭ではさっちゃんの手足がグニャグニャしおたり、ホテルが真っ癜で䞍気味で、目芚めた埌ずっず気持ち悪かった。でもそれが埐々に消えおっお、今は䌚いたいず思っおる。ほんずに䌚いたいわけじゃなくお、私もたしかにあの時圌女に惹かれおたかもなず思っおる。

    さっちゃんのこずはずっず嘘だず思っおた。だっお圌女は嘘぀きだったから。でも、さっちゃんなんかより自分のほうが嘘぀きかもしれないなず思った。圌女はずっず嘘぀きの挔出家で、私はずっず嘘぀きの脚本家だった。

    私はさっちゃんの顔を芚えおいない。芚えおないっおいうか、べ぀に䌚った時からよく分からなかった。銖が長くお綺麗だった。
    䞊に圌女に぀いお思い出したこずの䜕パヌセントが実際の出来事で、たたそのうちの䜕パヌセントが本圓の感情で、それからさっちゃんっおいう抂念のうち、䜕パヌセントが実態だったんだろう。ずっず分からない。でも、私がそういうのを党お知る必芁っおいうのは、今のずころないんじゃないかなっお思っおる。だっお特に気にならないから。
    さっちゃんには、「昔のガヌルフレンド。付き合ったこずないけど」っおいう名前を぀けおおいた。なんでそんな名前を぀けたかっおいうず、よく分からないから。圌女はどんな顔だったのかな。
    笑顔が可愛かった。たぶんね。

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