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大変とは、自分が大きく変われるチャンス ・小さなお店が仲間と乗り越えたコロナ禍の記録 ―

    2020年。
    新型コロナウイルスによって
    私たちの日常は突然止まりました。

    店を続けられるのか。
    家族を守れるのか。

    不安の中で始めた小さな行動が
    やがて仲間を増やし、地域を動かし
    思いもよらない出来事へと
    つながっていきました。

    これは、地方の小さなお店が
    仲間と力を合わせて困難を
    乗り越えていった実話の記録です。

    珏1獠

    コロナで日常が止まった日
    ― どうしたら家族を守ることが出来るのか ―
    2020年。
    これまで経験したことのない出来事が
    日本中を覆いました。

    それは
    あの新型コロナウイルスです。

    テレビをつければ
    感染者数のニュースが流れ

    外に出ること自体が
    恐ろしく感じられる日々が続きました。

    豪華客船の乗客が隔離され
    何日間も降りることが出来ない。
    有名芸能人が次々に命を落とす。
    学校も一時的に行けなくなりました。

    世界に目を向ければ
    死者数が多すぎて火葬が追い付かない。

    日本中、いや世界中が
    得体のしれないウイルスに翻弄され
    何が起こっているのかとテレビからの
    情報を必死に収集していました。

    次から次に起こる負の連鎖に
    世界中がパニック状態です。

    仕事への影響
    私達への仕事への影響も甚大でした。

    特に飲食店は、お客様が激減し
    廃業に追い込まれるお店が続出。

    来店客を相手に仕事をしている
    すべてのお店が甚大な影響を受けました。

    当店の場合はもともと予約採寸を行っていたため
    他のお客様との接触は避けることが出来たので

    学生服の採寸件数自体は
    大きく減ることはありませんでした。

    しかし、追加注文や普段の来店は
    明らかに減っていきました。

    街の雰囲気そのものが
    重く沈んでいくように感じられたのです。

    新規のお客様の売上は、
    思ったほど落ち込まなかったのが
    不幸中の幸いでした。

    それは
    学生服という特殊な商品を扱っているという
    幸運にも恵まれていたのです。

    それでも
    世の中全体の不安や自粛の空気の中で、
    店の売上は少しずつ減っていきました。

    何よりも怖かったのは、
    得体のしれないウイルスでした。

    夫婦で感染してしまったらどうなるのか。
    家族を守ることができるのか。

    特に、もし夫婦で同時に感染してしまったら、
    店はどうなるのか。

    お客様に迷惑をかけてしまうのではないか
    そんなことばかり考えていました。

    その不安は
    常に心の中にありました。

    私はできるだけ外出を控え、
    人との接触を避けるようになりました。

    外出した時は
    人との接触は出来るだけ避けるようにし

    スーパー等でレジに並ぶ時も
    安全だと思われるような距離を取っていました。

    どこに行っても
    感染の恐怖がつきまとっていたのです。

    しかし
    私にとって一番不安だったのは、
    別のことでした。

    もし採寸そのものが
    出来なくなったらどうなるのか。

    学生服で通学しなくてもよい。
    そんな雰囲気が
    広がってしまったらどうなるのか。

    そうなれば、
    この商売は成り立たなくなってしまいます。

    長年続けてきた店が、
    ここで終わってしまうのではないか。

    そんな思いが
    頭をよぎることもありました。

    そして私は
    何度も自分に問いかけていました。

    どうしたら家族を守ることが出来るのか。

    一番つらかった日
    家族の無事を祈るしかできなかった日々

    コロナ禍の中で
    一番つらかったことは
    売上が落ちたことではありませんでした。

    それは、親戚や友人と
    気軽に会えなくなってしまったことです。

    これまで当たり前だったことが
    突然できなくなる。
    その寂しさは、想像以上に大きなものでした。

    特に心配だったのは
    東京に住んでいた二人の子供のことでした。

    ニュースでは、
    毎日のように感染者数が報道され、
    医療体制のひっ迫や重症化の話題が
    繰り返し伝えられていました。

    そのたびに、
    「大丈夫だろうか」という思いが
    頭から離れませんでした。

    コロナ禍が始まった当初は
    幸いにも感染することはありませんでした。

    しかし、
    それから一年ほど経ったころ
    長男が感染したという連絡が入りました。

    電話を受けた瞬間
    胸が締めつけられるような感覚を覚えました。
    「症状はどうなのか」
    「熱はあるのか」
    「呼吸は大丈夫なのか」

    次から次へと
    不安が押し寄せてきました。

    その後、長女も感染しました。
    区からの食料の配布はありましたが
    それで安心できるものではありません。

    本当に心配だったのは、
    重症化しないかということでした。

    もし、急に具合が悪くなったらどうしよう。
    もし、入院が必要になったらどうしよう。

    遠く離れた場所にいる子供たちに、
    すぐに駆けつけることもできない。

    そんな状況が
    もどかしくて仕方ありませんでした。

    妻も同じ気持ちでした。
    心配で、仕事が手につかない様子でした。

    看病に行こうかどうか
    何度も話し合いました。

    しかし
    もし自分たちが
    感染してしまったら、どうなるのか。

    お店を閉めなければならないかもしれない。
    お客様に迷惑をかけてしまうかもしれない。

    そんな思いが頭をよぎり
    簡単には動けませんでした。

    結局、私たちにできることは、
    電話で様子を聞きながら
    無事を祈ることだけでした。

    あの頃は、戸惑いながら
    毎日を過ごしていたように思います。

    先の見えない不安の中で、
    家族の健康を願い続ける。

    それが、私にとって
    コロナ禍で最もつらかった時間でした。

    珏2獠
    孤独の中で始めた「他己紹介」
    ― 不安を分かち合う仲間がいた ―

    コロナ禍の不安は、
    私一人だけのものではありませんでした。

    全国の商人たちが、
    同じように先の見えない状況の中で
    不安を抱えていたのだと思います。

    私はコロナ前から、
    「ワクワク系実践会」と呼ばれる
    勉強会に長年参加しており
    少人数ですが、全国に知り合いがいました。

    しかし、それまでは
    年に1~2回会う程度の薄い関係です。

    コロナが始まったことで、
    その関係は大きく変わってしまったのです。

    この不安を一人で抱え込むのではなく
    私は同じような客層を持つ
    気の合いそうな仲間と情報交換をしたい。

    そんな思いから
    Zoomを使った交流を始めたのです。

    最初は「情報交換をしませんか」の
    たった一言から二人の情報交換から始まりました。

    最初のZoomが終わった夜
    ― 不安の中に光が見えた瞬間 ―

    最初にZoomで仲間と話し合いをした日のことも、
    忘れることができません。

    その日の会話は
    午後九時ごろに終わりました。

    パソコンの画面を閉じたあと
    私はしばらく椅子に座ったまま
    ぼんやりしていました。

    そして、ふとこんな感覚が
    胸の中に広がっていきました。

    なんとなく、心の「もやもや」が
    取れたような気がしたのです。

    なぜなら、
    それまで一人で抱えていた悩みや不安を
    誰かと共有することができたからです。

    同じように悩み
    同じように困っている人が
    いることを知っただけでも
    心が少し軽くなりました。

    そのあと
    妻と話をしました。

    「相談できる相手が見つかったかもしれない。」

    そう伝えると
    妻もほっとした様子でした。

    これまでは
    家族同士で話し合うと、どうしても
    意見がぶつかってしまうこともありました。

    しかし、
    第三者としての相談できる相手ができたことで
    気持ちの整理がしやすくなったのだと思います。

    この日の会話は、
    たった二人でのやり取りでした。

    しかし、その中で
    「仲間を増やしていこう」
    という前向きな話ができたことは
    とても大きな意味がありました。

    愚痴を言い合うだけでは、何も解決しません。

    これから何ができるか。
    そのことを
    一緒に考えることができたことで
    私は小さな安心感を手に入れることが
    出来たのです。

    2人は最初何か特別なテーマで
    話し合ったわけではありません。

    不安の共有をすることで
    少しでも安心感を得たいという感じで
    始めたのです。

    すると自然に仲間が集まりだして
    いつのまにか10名以上が
    私達の情報交換の輪の中に
    入ってきてくれたのです。

    それだけ不安を抱えている方達が
    多かったのだと思います。

    仲間の大切さをこれほど
    かみしめた時はありませんでした。

    そして、この小さな一歩が、
    その後の大きな活動へと
    つながっていったのです。
      
    定期的な情報交換

    Zoomでの情報交換は
    最初は不定期で行いましたが

    仲間とつながっていたいという思いから
    月に三回ほどの頻度で行いました。

    今まででは考えられないような頻度です。

    そして不思議なことに
    毎回のZoomの日を楽しみに
    してくださる方が多かったのです。

    最初は、ただ各自の情報を
    確認しあうだけでした。

    大変なのは自分だけではないのだ
    という事を知っただけでも
    気持ちが軽くなったのを覚えています。

    しかし、情報共有をするだけでは
    前に進むことはできません。

    そして私は、もう一歩踏み込んだことを
    やってみたいと思うようになりました。

    せっかく集まったのだから
    世間話ばかりでは道は開けない。

    もっと有意義な情報交換は出来ないのだろうか?
    そして、考え付いたのが「他己紹介」でした。

    他己紹介とは、
    自分ではなく、仲間のことを紹介する取り組みです。

    その人の強みや魅力を、
    別の人が言葉にして伝える。

    そんな試みです。

    しかし正直に言えば
    最初はとても不安でした。

    皆さんが
    本当に付いて来てくれるのだろうか。

    人数も多かったため
    全員分を行うには何日もかかります。

    それでも、やらずに後悔するよりも
    失敗してもやり直せばよいのではないかと
    思い切ってやってみることにしたのです。

    他己紹介のやり方

    まずはお互いの強みを見つけるために
    質問項目を13個用意して各自に配布。

    その質問事項に
    各自書いてもらう事から始めました。

    質問事項は大きく分けて2種類

    まずは目に見える強み
    つまり店舗や駐車場
    印刷機やコピー機等の書き出し

    それから、目に見えない強み
    たとえば、知名度のある人脈
    今使っているSNSの種類
    フォロワーの数、お客様の数
    ブログやメルマガ等の書き出し
    趣味や、得意な事

    これらを書き込んで頂く事で
    その強みの掘り出しを行いました。
    本来なら、自己紹介という時間を設けて
    これらの発表をすればよいのですが

    自己紹介だと
    単なる自慢話に
    聞こえてしまう可能性があります。

    それに
    自慢話だと思われたくないので
    あえて控えめに自己紹介する方も
    いらっしゃると考えました。

    それでは
    その方の得意分野がぼやけてしまいますし
    皆さんに詳しく伝わりません。

    そこで、自己紹介ではなく
    他人から自分を紹介してもらう
    他己紹介という方法を
    取らせていただきました。

    この方法の良い所は
    他人の魅力を皆さんに話すわけですから
    思いく切り誉めることが出来る事です。

    この方は
    こんなすごいことをやっている方で・・・。

    この方は
    こんなすごい特技を持っている方で・・・。

    この方は
    こんな有名な方とつながりがある方で・・・。

    この方は
    こんな素晴らしい施設を持っている方で・・・。

    この方は
    こんなアイデアを持っている方で・・・。

    等々、質問事項に書かれた回答を深堀すると
    思わぬ得意分野を発掘することが出来ました。

    本人は
    得意な事とは思っていなくても、人からみると
    ・是非教えてほしい
    ・もっと詳しく知りたい
    ・是非伝授してほしい

    という項目がいくつも発掘できたのです。

    大きな課題

    他己紹介には1つ大きな課題もありました。
    それは、大人数では時間がかかりすぎるという課題です。

    この当時15人前後集っていたので
    限られた時間の中では
    全員の得意分野を深堀する時間が足りません。

    そこで4人グループ数組に分け
    各自が書き込んでくれた質問事項の回答欄を
    それぞれのグループ内で
    深堀りしてもらう事にしました。

    この作業は
    全員での情報交換の中で行うのではなく
    各グループに分かれて、別途Zoomで
    行っていただきました。

    そして、数日後に全員会議を開き
    各自の強みを発表する時間を作りました。

    この作業はいっぺんにはできないので
    最初はAグループからという感じで
    数回に分けて行いました。

    実践結果
    1回目の他己紹介では
    やはり問題点が出てきました。

    他己紹介をすること自体は
    皆さん理解していたのですが

    深堀作業の途中で
    雑談になってしまったのです。

    聞いている方が
    自分との共通点が見つかると

    深堀作業ではなく
    別の方向に話が向いてしまい
    本来の目的とは
    かけ離れて行ってしまいました。

    そこでルールを設けました。

    その人の魅力を
    深堀することを目的としますので
    雑談にならないようにして下さい
    というルールです。

    もう1つの課題は
    せっかく面白そうな
    得意分野を持っているのに

    あまり魅力のない回答に
    焦点を当ててしまった事です。

    13項目も質問と回答があると

    それを見た他の方は
    本当に書いてくれた方の魅力は
    どこに隠れているのかという事が
    分かりません。

    回答してくださった方も
    深堀してほしい項目があるのに
    その回答欄に視点を当ててくれないと
    詳しく話すことが出来ないのです。

    そこで
    もう1つのルールを追加しました。

    自分が深堀してほしい回答欄に
    赤線を引いてもらう事にしました。

    この事を実践したら
    その方の本当の魅力を引き出すことが出来たのです。

    例えばこんな感じです。(実例)
    質問事項・あなたの趣味はどんな事ですか?
    回答  ・イラストを描く事

    実際にあった話なのですが

    この方の本当の魅力は
    イラストの描き方を教えることが
    出来るという事だったのです。

    この魅力(得意分野)を引き出した私達から

    イラストの描き方を皆さんに
    教えてもらえますか?という投げかけに
    この方のイラスト講座が立ち上がったのです。

    それ以降色々な方の得意分野が発掘でき
    4名の講師がこの会の中から出現したのです。



    他己紹介が自己紹介より優れているところ

    他己紹介は他人の紹介なので
    思い切り相手を褒めることが出来ます。

    その為、自慢話には聞こえないという
    大きなメリットがありました。

    誉め上手という言葉がありますが
    まさに他己紹介は、この言葉に
    ピッタリのやり方だったと思います。

    そして
    他己紹介がすべて終わったとき、
    私は大きな手応えを感じました。

    仲間一人ひとりの強みが、
    皆の中で共有されたのです。

    「こんなことができる人だったのか」
    「こんな思いを持っていたのか」

    それまで知らなかった仲間の魅力が
    次々と見えてきました。

    長年付き合ってきた仲間でも
    思ってもいなかった強みが発見できたことは
    大きな成果でした。

    あのとき
    私は心の底から思いました。

    やってよかった。

    そして今振り返ると、
    この他己紹介を行ったことが
    その後に起こるさまざまな出来事の
    出発点だったのだと思います。

    珏3獠
    仲間が増え、支え合いが生まれた

    ― 強みを共有することで未来が動き出した ―
    他己紹介を行ったことで、
    仲間一人ひとりの強みが見えてきました。

    それまでは、
    「どんな仕事をしている人か」
    という程度の理解だったものが

    「この人はこんなことが得意なんだ」
    「この人にはこんな経験があるんだ」
    「この人にはこんな知り合いがいるんだ」
    と、より具体的に分かるようになったのです。

    そして
    ある変化が生まれました。

    それぞれの強みを
    皆で共有しようという考えが、
    会の中で広がっていったのです。

    そこで私は、ある提案をしました。

    その強みに興味がある人を募り
    ユニットを組んでもらうことにしたのです。

    そして、ユニットの中で
    小さな勉強会を始めることになりました。

    最初に行ったのは
    先ほど書かせていただいた
    かわいいイラストを描ける方にお願いして
    そのコツを教えていただく
    Zoomでの勉強会でした。

    その講座は、とても温かく
    和やかな時間だったことを覚えています。

    コロナ禍では味わえないような
    雰囲気だったことを思い出します。

    「こんなことができる人がいるんだ」
    「私にもできるかもしれない」

    そんな前向きな気持ちが
    少しずつ広がっていきました。

    この勉強会をきっかけに
    各自の強みを参考にした活動は
    さらに広がっていくことになります。

    七つの習慣講座、
    片付け講座、
    プレスリリース講座、
    医療従事者への感謝の処方箋講座

    さまざまなテーマの学びが、
    次々と生まれていったのです。

    こうした講座を通じて、仲間同士の絆は、
    確実に強まっていきました。

    そして、以前よりも頻繁に
    情報交換が行われるようになったのです。

    私はその様子を見ながら
    心の中でこう思っていました。

    人は一人では不安になる。
    しかし、仲間がいれば前に進める。

    あのとき私たちは、
    ただ不安を語り合っていたので
    はありません。

    お互いの強みを生かしながら、
    未来に向かって歩き始めていたのです。

    弱みや、困っている事の共有
    あるとき
    仲間同士で「今、何に困っているのか」
    を出し合う機会がありました。

    その中で、和菓子屋さんの仲間が
    どら焼きの売り上げについて
    私たちに相談をしてくれました。

    どうしたら
    ありがとうという焼き印がしてある
    どら焼きがもっと売れるようになるのだろうか。

    どうしたら、
    お客様に喜んでもらえるのだろうか。

    そんな悩みを、真剣に話してくれたのです。

    私はその話を聞きながら
    ふと、あることを思い出しました。

    ひょっとしたら、
    私が学生さんにプレゼントしている
    ポエムが役に立つかもしれない。

    そう思ったのです。

    そこで私は、和菓子屋さんに
    一つのポエムをプレゼントしました。

    「自分の誕生日は、親子の絆記念日
    親に感謝の気持ちを伝える日」

    というメッセージのポエムです。

    和菓子屋さんは、
    そのポエムをとても気に入ってくださり
    さっそくお店でこのポエムを
    飾る段取りをしようとしたのですが
    まだ何かが足りません。

    単価が低すぎるのです。

    そこである方が
    どら焼きの大きさをもっと
    大きくしたらどうだろう
    という意見を出してくださり
    単価を上げることにしました。

    巨大どら焼きが二つ箱入りで
    約千円だったと思います。

    親にプレゼントするわけですから
    ある程度豪華にして
    販売することにしたのです。

    これだったら
    販売の動機付けにもなりますし
    売り上げ増にもなるという一石二鳥です。

    もちろん、箱入りどら焼きの横に
    プレゼントしたポエムを飾って頂きました。

    全国制覇への野望
    そしてそこから次の
    新しいアイデアが生まれました。
    全国に郵送するという
    販売方法です。

    店内に手書きの日本地図を張り出し
    ふるさとの親に郵送した場合
    その県のところに
    星印を貼っていったのです。

    このイベントは
    おかみ自身のアイデアでした。

    このイベントが
    来店するお客様の目に留まり
    多くの方が協力してくれるように
    なったのです。

    1つそしてまた1つと星印が増えていき
    このイベントが盛り上がり、いつのまにか
    日本地図が星印で埋まっていったのです。

    あと三つ、あと二つと
    カウントダウンが始まると
    来店客は興味を持ち、自分の知り合いで
    埋まっていない県の出身者(親)を
    探してくれたと言います。

    そして、ついに全国制覇達成。
    多くのお客様から祝福されたようです。

    私はこの出来事を通して
    やり方によってはお客様を
    巻き込むことが出来る事を知りました。

    今でも
    この和菓子屋さんのどら焼きは
    進化を続けています。

    サイクリストの聖地に
    この頃、和菓子屋さんのおかみは
    こんなことを言っていました。

    「お店には
    よくサイクリストが寄ってくれるのです」

    サイクリストが
    よく通る道沿いにこのお店があったので
    休憩地として利用するサイクリストが
    ある程度の割合でいたのです。

    この言葉を聞いた私は
    「だったらサイクリストの
    聖地にしたらどうだろう」と思い
    おかみに伝えました。
    「自転車置き場を作ったらどうだろう」と。

    すると早速お店の近くの空き地に
    自転車置き場を作ってくれたのです。

    このおかみは、やる事が早い・・・。
    とその時思いました。

    後日、自転車置き場への
    導線がないと気が付いた私は

    その事を伝えると
    店舗から自転車置き場までの矢印を付け
    サイクリストに伝わるように
    工夫をしてくれました。

    このような様々な工夫をして
    このお店は
    やがてサイクリストの聖地となり
    今では多くのサイクリスト仲間が
    来店するお店になりました。

    今では、「どらちゃり」という焼き印と
    自転車のイラストの焼き印を押した
    どらやきまで販売することになっています。

    親子の絆記念のありがとうどら焼き
    どらやきの全国配布
    サイクリストの聖地
    サイクリスト用のどら焼き作成

    と次々に新しいアイデアを実践してきたおかみは
    本当に尊敬に値する方です。

    しかし、考えてみると
    ここまでいろいろなことが出来た要因は
    多くの仲間のアイデアの
    掘り起こしがあったからです。

    もちろんそれをすぐに
    実行に移すおかみの行動力も
    見逃すことはできません。

    これらのいくつもの力が融合し
    この和菓子屋さんは
    大きな変革をしたのだと思っています。

    仲間の力や思いは
    お店の方向性さえ変えると
    思った出来事でした。

    人の思いには、人を動かす力がある。
    そして、
    その思いが形になったとき、商いは大きく変わるのだと
    つくづく思いました。

    医療従事者への感謝の処方箋
    ― 小さな気づきが、地域を動かした ―
    ある日、テレビのニュースで、
    とても印象に残る場面を目にしました。

    ごみ収集の際、ごみ袋に
    「いつもありがとう」
    と書かれたメモが貼られていたのです。

    普段なら、こんな些細な出来事は
    ニュースにはならないかもしれません。

    しかし、コロナ禍では違いました。
    その仕事が
    命がけになっているという現実が
    そこにあったからです。

    その光景を見たとき、私は思いました。
    自分にも、何かできることはないだろうか。

    そうして生まれたのが、
    「医療従事者に
    感謝の処方箋をプレゼントしよう」
    というアイデアでした。

    いつも
    お医者様から処方していただく処方箋袋。
    この逆バージョンを考えました。

    つまりコロナ禍
    命を懸けて患者さんの為に働いてくださる
    お医者様を元気づけるための処方箋を

    患者さんからお医者さんに
    プレゼントする取り組みです。

    どうせやるなら、一人ではなく、
    仲間を巻き込んで取り組みたい。

    そう思い
    勉強会仲間の皆さんに声をかけました。

    そして、次のような内容が決まりました。
    一つ目は、処方箋袋を作ること。
    二つ目は、その中に入れるものを
    「ありがとう飴」
    「あまびえ缶バッチ」
    「感謝状」
    の三つにすること。

    三つ目は
    この処方箋を各店舗のお客様にお願いして
    かかっているお医者様へ
    プレゼントしていただくこと。

    四つ目は
    感謝状にお客様からの感謝の言葉を
    一言書いていただくこと。

    こうして
    具体的な取り組みが動き始めました。

    あまびえ缶バッチは、
    私の店にある
    缶バッチ制作機を使って作りました。

    処方箋袋も、
    店のプリンターで印刷して作りました。

    問題は、「ありがとう飴」でした。

    特注品だったため
    最低ロットが四千個近くだったのです。

    とても一人ではさばききれる量では
    ありませんでした。

    そこで私は
    仲間に協力をお願いしました。

    すると、五名ほどの仲間が
    手を上げてくれました。

    この仲間以外にも、地元の知り合いも
    この取り組みに協力頂きました。

    ここまで、色々な情報交換をして
    協力し合ってきたため、絆が強くなり
    賛同いただけたのだと思います。

    ― 仲間の存在を実感した瞬間 ―
    ある日、注文していた「ありがとう飴」が
    我が家に届きました。

    届いた箱は、四十センチ四方ほどの
    大きめの段ボールでした。

    宅配の方から受け取った瞬間、
    ずっしりとした重さが
    手に伝わってきました。

    その重みを感じたとき、私は思いました。

    この飴が、
    医療従事者の方々のもとへ届けられるのだ。

    そう考えると
    胸の中にわくわくした気持ちが
    広がっていきました。

    さっそく段ボールを開けてみると、
    中きは
    「ありがとう」と書かれた飴が
    ぎっしりと詰まっていました。

    その数は、約四千個。

    一つひとつの飴を見ながら
    私は改めてこの取り組みの
    大きさを実感しました。

    同時に、ふとこんな思いも浮かびました。

    本当に、
    すべて配り切ることができるだろうか。

    わくわくする気持ちと同時に、
    少しだけ不安な気持ちも
    芽生えてきたのです。

    しかし、
    その不安はすぐに消えていきました。

    なぜなら
    すでに仲間が「協力するよ」
    と言ってくれていたからです。

    私は、五名の仲間にそれぞれ五百個ずつ
    配る手配をしました。

    それでも、まだ千五百個ほど残ります。

    さすがに
    我が家だけで配るのは少し大変だと感じました。

    そこで私は
    地元で親交のあった仲間にも
    協力をお願いしました。

    事情を話すと
    その方も快く引き受けてくださいました。

    それだけではなく
    このイベントの事を
    とても評価してくれたのです。

    そのおかげで、時間はかかりましたが、
    最終的にはすべての飴を
    配り終えることができたのです。

    最後の一袋を手渡したとき、
    私は心の底からほっとしました。

    そして同時に
    強く感じたことがありました。

    もし仲間がいなかったら、
    この取り組みは実現できなかっただろう。

    一人では難しいことも、
    仲間と力を合わせれば実現できる。

    この出来事は、私にとって
    仲間の大切さを改めて実感する
    忘れられない経験となりました。

    処方箋袋の配布結果
    協力してくれた仲間の店頭に
    処方箋を置いていただいたところ

    一袋ずつではなく、
    複数持っていかれるお客様も
    多かったと聞きました。

    中きは
    十袋以上を頼まれたお店もあったそうです。

    年配のお客様ほど
    多くの医療機関に通っていたからです。

    そのとき私は、思いました。

    きっと、受け取った医療従事者の方は
    喜んでくださったに違いない。

    そして、この運動を
    もっと広めたいという思いが
    自然と生まれてきました。

    そこで私たちは、メディアに向けて
    プレスリリースを出してみよう
    ということになりました。

    同じテーマで各地域の仲間が
    それぞれプレスリリースに挑戦しました。

    四名が挑戦し、私を含めて二名が
    大きく新聞に取り上げられました。

    さらに、私はこの時期、全部で五回
    新聞に取り上げていただき

    NHKからも
    取材依頼が飛び込んできました。

    しかし、私にとって大切だったのは、
    掲載された回数ではありません。

    この取り組みを通して
    地域の人たちが誰かを思いやる気持ちを
    形にしてくださったことでした。

    新聞に載った朝
    ― 小さな行動が社会に届いた瞬間 ―
    医療従事者への
    感謝の処方箋の取り組みが
    新聞に掲載された日のことは
    今でもはっきりと覚えています。

    その朝
    真っ先に連絡をくれたのは、義母でした。

    朝刊を見てすぐに
    電話をかけてきてくれたのです。

    「新聞に載っているじゃない!」
    受話器の向こうから
    驚いた声が聞こえてきました。

    まさか、自分の息子が
    新聞の紙面に載るとは
    思っていなかったのでしょう。

    その驚きが、声の調子から
    ひしひしと伝わってきました。

    その後、妻も新聞を手に取り
    じっと紙面を見つめていました。

    今回の取材は、マスクをしたままの状態で
    受けたものでした。

    そのため、一目見て私だと分かる方は
    少なかったのかもしれません。

    しかし
    名前はしっかりと掲載されていました。

    その姿を見て、少しだけ
    誇らしい気持ちになったのを
    覚えています。

    しばらくしてから
    お客様が来店されました。

    店に入るなり
    笑顔でこう言ってくださいました。
    「新聞に載っていましたね。」

    その言葉を聞いたとき
    私は改めてこの取り組みが
    多くの方に届いているのだと
    実感しました。

    そして
    そのお客様は処方箋を
    購入してくださいました。

    さらに驚いたことがありました。

    娘が以前通っていた保育園の園長先生が
    新聞を見て来店してくださり
    処方箋を十袋も購入してくださったのです。

    そのとき私は、強く感じました。
    小さな行動でも
    続けていけば、必ず誰かの心に届く。

    この経験は
    私にとって大きな自信となりました。

    このような反応の大きさを見て
    私はさらに考えるようになりました。

    地域の方に
    もっと喜んでいただける方法は
    ないだろうか。

    合格祈願神社の名称変更

    そこで思い出したのが
    十年前からお店の駐車場に設置していた
    「合格祈願神社」でした。

    受験生の為の
    寄りどころとして設置して
    毎年多くの受験生が
    お参りに来てくれる神社です。

    私はこの神社の名称を、
    期間限定で変更することにしました。
    「コロナ撃退神社」という名前です。

    のぼり旗も作り、神社の中には
    コロナ撃退の思いを書いていただく
    短冊を置き投函用のポストも設置しました。

    するとどうでしょう。
    次々に短冊に思いを書き込んでくれる方が
    出てきたのです。

    その多くが、子供達でした。

    短冊の書き込みの中で
    最も印象的だったのは

    志村けんさんが亡くなったのを
    忍ぶ書き込みでした。

    ひらがなが多かったので
    たぶん小学校の低学年の子供さんが
    書いたものだったと思います。

    その短冊を見て
    私は思わず涙ぐんでしまいました。

    子供達にもコロナの影響が
    大きく広がっているんだ・・・。

    だったら
    この思いを志村けんさんにも
    届けてあげたいと

    届いた短冊をすべて竹にくくりつけ
    七夕までの期間
    お店に飾ろうと思いました。

    そして
    店内に短冊の付いた笹の木を飾りました。

    この間
    次から次に届く多くの方の思いが
    そこに集まりました。

    あのとき私は、改めて感じました。
    人の思いは、人を支える力になる。

    そして、小さな行動が、
    大きな希望につながることもあるのだと。

    やらなければ何も変わらない
    そんな思いを強く感じた出来事でした。

    珏4獠

    競争から共創へ

    コロナ禍で経験したこれらの出来事は、
    私にとって単なる思い出ではありません。

    一つひとつの出来事が
    私の商売に対する考え方を
    少しずつ変えていきました。

    不安の中で仲間と出会い
    力を合わせて行動した経験は

    これからの商いの在り方を
    改めて考えるきっかけになったのです。

    ここからは
    これらの経験を通して
    私自身がどのように変わり

    これから何を目指していきたいのかについて
    お話ししたいと思います。
     
    ― ライバルが仲間になった瞬間 ―
    この話は、コロナ禍の少し前に遡ります。

    私の職業は学生服の販売です。
    ライバル店が何店舗もある地域で
    長年商売を営んでいます。

    すべての小売店が
    メーカーから仕入れた
    新品の学生服を販売する
    形態をとっていました。

    そんな時、突然全く違う販売方法の
    お店が出店してきたのです。

    卒業生の学生服を買い取り
    その学生服を新入学の方に安価で販売する
    いわゆるリユース店です。

    他県ではこの方法で販売するお店は
    聞いたことがあったのですが

    まさか自分の販売地域に出店してくるとは
    思っていなかったので
    正直驚きました。

    私のお店のライバル店はじめ
    各メーカーも同じような
    危機感を抱いていたようでした。

    「新品の学生服が売りにくくなるのでは」
    「新規予約の方が減るのでは」
    という声があちこちから聞こえてきたのです。

    私も一時期同じように感じたのですが

    「いや、ひょっとしたら
    手を組むことが出来るのでは・・・。」
    と思ったのです。

    そこで私はあるとき、
    一つの行動を起こしました。

    それは、
    新しく地元に出店してきた学生服の
    リユース店を訪ねることでした。

    いわゆる多くの方が
    感じたライバル店へ、です。

    しかし私は、
    競争するために
    訪ねたわけではありませんでした。

    「まずはご挨拶をしよう」
    そんな軽い気持ちでした。

    そのとき私は
    手ぶらで行くのもどうかと思い

    いらなくなった
    学生服関連の物をいくつか持参し
    プレゼントする事にしました。

    すると、そのお店の方は
    まさかのライバル店の店主が来るとは
    思ってもいなかったらしく

    驚いたとともに
    とても喜んでくださいました。

    私自身も
    「けむたがられるのではないか」
    と、思っていましたが

    結果は逆で
    すぐに受け入れてくれたのです。

    そして実際に会って話をしてみると
    お互いの距離は少しずつ
    縮まっていきました。

    そこから
    自然と信頼関係が
    築かれていったのです。

    私は、雑談の中で地元中学校の情報を
    いろいろとお伝えしました。

    どのような制服が採用されているのか。
    どのような特徴があるのか。
    どの時期に動きがあるのか。
    今後どんな変更があるのか。

    こうした情報は
    新規参入のお店ではなかなか入りません。

    その為、地元の情報は
    ことのほか喜んでいただけたのです。

    品質の違いを説明
    各小売店が販売している学生服は
    それぞれ耐久性が違い、品質もそれぞれです。

    その特徴も様々だったので
    正直にその特徴まで教えてあげました。

    その事を教えてあげたのは
    どの程度の販売価格にするのかの
    判断基準にしてもらう為です。

    このメーカーの学生服の耐久性は・・・。
    このメーカーの学生服のしわのなりにくさは・・・。

    と事細かに教えてあげる事で
    販売価格だけではなく

    卒業生からの買取り金額にも
    影響をしたと後々教えてくれました。
     
    そして、信頼関係は
    さらに深まっていきました。

    やがて
    相手のお店からも情報が入るようになり

    新しい制服を探しているお客様を
    紹介していただけるようになったのです。

    その結果、ある年には
    新規のお客様を二十名ほど
    紹介していただきました。

    売上にして、
    約百五十万円の増加でした。

    それまでまったく
    販売実績のなかった地域だったため

    そのリターンの大きさには
    私自身も驚きました。

    さらに
    その中には弟さんがいらっしゃる
    ご家庭もあり別の年の売上にも
    つながりました。

    これは、単なる一度きりの成果ではなく
    未来につながる関係だったのです。

    今回の協力関係は
    もともとコラボを意識したものでは
    ありませんでした。

    何か新しい展開があるかもしれない
    といった軽い気持ちから
    接触したというのが正直な気持ちです。

    しかし
    結果的にコラボに発展したことは
    大きな気づきになりました。

    私はこの経験を通して
    一つの大きな学びを得ました。

    視点を変えれば
    ライバル店でさえコラボ相手になる。

    この気づきは、
    その後の私の商いに
    大きな影響を与えることになったのです。
     
    第5章

    コラボの神髄を知る
    ライバル店でも
    コラボが出来る事を知った私は

    あらたなコラボ相手を
    見つける事になります。

    学生服の販売店同士の競争は
    どうしても値引き合戦に
    なってしまいがちです。

    あるいは
    いかに魅力的な
    サービス品を付けるかの競争です。
     
    その為、私のような小さなお店は
    大型店とは同じ土俵では戦えません。

    どんな付加価値を付けるのか
    という事を考えなければ
    生き残れないのです。

    その為、いろいろな事を考えました。

    値引きは出来るだけ抑えて
    お客様が来てくれる方法です。

    そこで思いついたのが
    他業種とのコラボレーションでした。
     
    しかし、コラボといえば
    大手の専売特許だと思っていた私は
    なかなかアイデアが浮かびません。

    たまたま
    ライバル店とのコラボに成功しましたが

    異業種となると
    別の方法を考えなければなりません。

    そこで考えたのが
    コラボ相手に私たちのお客様を紹介して

    そのお客様に
    少し値引きをしてもらう方法でした。

    この方法なら
    私どもの出費はほとんどありません。

    お客様に喜んでいただく為だけの
    コラボだと思っていたのです。

    しかし
    この方法は大失敗に終わりました。

    なぜかというと
    信頼関係が築けていない相手に
    いきなりこの提案をしたからです。

    相手の利益率も分からず
    値引きの話をしてしまったのも
    一因だったようです。

    そこで1つ学んだ私は

    まずは信頼関係を築く事から
    始めようと思いました。

    では何をすれば
    信頼関係が築けるのでしょう?

    そこで思い浮かんだのが

    相手が断る理由がないような
    条件を提示する事と

    時間をかけて
    情報交換をする事でした。

    靴屋さんへの条件提示
    私の商売のターゲットは
    小学校6年生の子どもさんです。

    その為、中学に入学する際に
    どうしても購入しなければいけないものを
    販売しているお店と
    コラボできないかと考えました。

    そこで思いついたのが靴屋さんです。

    以前失敗したことを思い出し

    靴屋さんが
    受け入れてくれる条件を色々と考え

    思いついたのが
    靴屋さんでの値引き金額を
    全てこちらで負担するというものでした。

    こんな感じです
    ①私どものお客様に
     上履きの半額券を配布する。
    ②半額券をもらったお客様が
     その靴屋さんに行って上履きを半額で購入
    ③後日、その半額券を
     当店ですべて同値で買い取り

    しかも、その宣伝から
    半額券の作成、配布まで
    全てこちらで行うので

    靴屋さんの負担やリスクは
    一切ないという方法でした。

    もちろん
    靴屋さんとの信頼関係を築く為に
    ある程度の時間を要し
    焦らずにこの仕組みを説明しました。

    そのおかげで
    このコラボはスタートすることが出来たのです。

    コラボの成果
    この当時、上履きの値段は
    1200円程度だったので
    半額券の割引金額は600円程度です。

    靴屋さんの周辺で
    学生服の予約を頂いた人数は
    100名程度で、配った枚数は約100枚。

    そのうち使っていただいたのは9割強でした。
    つまり私のお店での負担は

    90名分×600円=5万4千円ほどでした。
    この金額を靴屋さんに支払いました。

    普通に考えると
    5万4千円分を靴屋さんの為に
    支払ったという事になります。

    靴屋さんとしたら何の苦労もなく
    上靴の購入者が増えた訳ですから
    メリットだらけです。
     
    それに、半額券の裏面には
    住所と名前を書く欄を設けました。

    靴屋さんの顧客名簿を
    増やすお手伝いがしたかったからです。

    回収した半額券を分析して
    誰が使ったのかという事を
    知ることが出来るという目的もありました。

    このコラボは、私どものお店には
    何のメリットもないと考える方は
    多いのではないかと思います。

    しかし、私の考えは違いました。
    この方法は口コミになる
    と考えたのです。
     
    私のお店の顧客単価は、この当時
    6万円~7万円前後ありました。

    利益率はそれほど多くはありませんが
    5万4千円の出資金額のもとを取るには

    3名以上の新規客が
    増えればよいという計算でした。

    リスクはありましたが
    誰もやらないからこそ
    価値があるのではと考えたのです。
     
    このコラボの実際の成果は
    口コミにより、8名程度の
    新規客が増え大成功に終わりました。

    初年度が終わった後
    靴屋さんはこのようにおっしゃいました。

    「申し訳ないので半額券の
    買取りは半分の300円でいいよ」

    このように言ってくれたのです。

    当店の小冊子も
    お店においてくれるようになり
    更に絆が深くなっていきました。

    このやり方は、数年続きましたが
    靴屋さんの店主が高齢だったため、数年後廃業し
    この方法は終了しました。

    別の業種でも大成功
    私は、静岡で数名の方と
    毎年情報交換をしています。

    その中の一人に
    英会話教室を経営している仲間がいるのですが

    その方に、この靴屋さんとの
    コラボの事を伝えてみました。

    すると
    この方の英会話教室の仲間に伝わり
    面白い企画を考えて実践してくれたのです。
     
    それは
    地元のケーキ屋さんとのコラボでした。
     
    英会話教室と
    ケーキ屋さんとのコラボ実践事例

     
    この英会話教室には、およそ
    100名の生徒さんがおりました。

    その中には
    多くの子どもさんも含まれていたので
    子供さんが大好きなものは
    何かと考えたようです。

    そこでコラボ相手に選んだのが
    地元の有名なケーキ屋さんでした。

    私のやり方を学んでいた
    英会話教室の経営者の方は
    500円のケーキ引換券を作りました。

    そしてそのケーキ屋さんに出向き
    英会話教室の子供たちに
    こちらのケーキ券を配らせて頂くので

    ケーキ券を持ってきた
    お子さんやご家族の方に
    割引してくださいと頼みました。

    頼んだお店とは
    顔見知りだったという事もありますが

    この提案をすぐに受け入れてもらい
    早速コラボがスタートしました。

    ただ、単純にケーキ券を配ったのでは
    動機がありません。
     
    そこで、英会話教室がよく行う
    ハロウィンのイベントに合わせて
    配ったようです。
     
    ケーキ引換券は、子供たちは大喜びです。

    家に帰ってから家族に報告します。
    「ケーキの引換券もらったよ!」

    そんな光景が目に浮かびます。

    ケーキ引換券は
    ほとんどのお子さんは
    家族同伴で持って行くことになります。

    するとどんな現象が起きると思いますか?

    そうです。
    家族分の人数のケーキが売れるのです。

    しかも、持参した割引券は
    すべて同額で英会話教室に
    買い取ってもらえます。

    ケーキ屋さんのメリットは測りきれません。

    では英会話教室のメリットはどうでしょう?

    この社長は
    子供だけにケーキ引換券を
    配ったわけではありませんでした。

    英会話を教えてくれる
    外国人教師にも配っていたのです。

    外国人はノリの良い方が多いと聞いています。

    この先生たちも例外ではありませんでした。
    このイベントの事を自分たちのSNSで発信して
    多くの方達に伝わりました。

    そのおかげで
    数名の新規のお客様が獲得できたと
    おっしゃっていました。
     
    ここでも
    先に与えるという事を実践したおかげで
    あとからメリットが付いてきたのです。
     
    英会話教室と言えば
    特に仕入れがあるわけではありません。

    その為、一人の方が入会しただけでも
    生涯価値はかなりあるのです。

    そしてこのような取り込みは
    多くの子供たちを引き留める
    という意味合いもあるのだと思います。

    楽しい所には人が集まります。
    そんな方程式が当てはまるような
    イベントだったと思います。
     
    コラボは視点を変える事が
    重要だと改めて分かった出来事でした。

    第6章

    メーカーとのコラボ
    さまざまなコラボを体験した私は
    次なるコラボは出来ないか
    模索していました。

    そして考え付いたのが
    メーカーとのコラボでした。

    私のような小さなお店が

    はるかに規模の大きな
    メーカーとのコラボをやるには
    どうしたら良いのか色々と考えてみました。

    そして思い浮かべたのが
    情報の提供でした。

    過去のコラボの経験から
    まずは相手に与える
    という事が成功の1歩だと思い

    まず提案したのが、私のお店で

    ・お客様が喜んでもらえた事例
    ・お客様にしている思いがけないサービス
    ・小冊子の配布事例
    ・異業種とのコラボ成功事例

    等々を営業担当者に伝え
    その営業の方が他店に行くときの
    話の材料として使っていただく事でした。

    普通会社の営業マンと言えば
    自社の商品の売り込みが
    メインになります。

    それだけだと
    相手はどうしてもマンネリ化して

    喜んで営業マンを
    迎え入れるわけではありません。

    そこで、他店の成功事例を
    お土産話として来店すれば

    来店を心待ちにしてくれるのでは
    と思ったのです。

    この提案は、すぐにメーカーの社長に伝わり
    社長直々にお店に来て下さったのです。

    提案を受け入れてくれたのは良かったのですが
    私は1つ条件を付けさせてもらいました。

    私どもは地方の小さなお店です。
    その為、全国の優良店の考え方や
    販売方法を知りません。

    他の店舗の参考にもなると思いますので
    前向きな経営をしているお店を集めて

    勉強会を開いてもらえませんか
    と提案させてもらいました。

    この方法が定着すれば
    各店の売り上げアップの貢献にもなり

    結果メーカーの売り上げも
    上がると思ったからです。

    この提案はすぐに実行に移されました。

    そして、第1回の集まりが
    九州の福岡で行われることになったのです。
     
    この時に集まったのは
    全国から推薦された五店舗でした

    どのお店も
    私のお店よりもはるかに規模が大きく
    とても前向きな社長ばかりでした。

    この勉強会をきっかけに
    さらに多くの小売店が集まる勉強会も
    開催されることとなり

    毎年愛知県で30社近いお店が集まる勉強会が
    開催されることになっていきました。
     
    この勉強会は
    私のたった一言の提案から始まったと思うと
    とても感慨深いものがあります。
     
    この交流は数年間続いたのですが
    ある時面白い事例があったので
    紹介させてもらいます。

    有田さんが言うのなら・・・
     ある時私のお店の取引先である
    傘屋さんの営業の方が来店されました。

    その方の目的は
    面白そうな傘の売込みでした。

    ジャンプ傘なのですが
    開くと後ろ側がスライドして
    7センチほど伸びるのです。
     
    学生は大きなリュックを背負うので
    雨に濡れにくくする
    アイデア傘でした。

    この傘を一目見て
    これは売れると思いました。

    というより
    学生さんが喜ぶという
    思いの方が強くありました。
     
    営業マン曰く
    「他のお店では
    相手にしてもらえませんでした。」

    と言っていたので
    自信を失ったうえでの来店だったようです。

    問題は値段です。
    その時の営業マンが
    発した値段を聞いて驚きました。

    なんと
    1,680円という小売値だったのです。

    ふつうこのようなアイデア商品は
    4~5千円はします。

    私は傘メーカーの事を思い
    2千円以上の提案をしました。

    しかし
    販売価格に自信がなかったのでしょう。
    結局、メーカーが指定した値段で
    販売する事にしました。
     
    私はこの事も
    全国の仲間に教えてあげようと
    学生服メーカーの担当者に
    情報提供をしました。
     
    傘メーカーの担当者にも
    この事を伝えました。

    どの地域まででしたら
    販売できますかと聞いたところ

    近隣の県でしたら大丈夫という返事でした。

    その事を
    学生服メーカーの担当者に伝えたら
    愛知県のお店に伝えてくれました。

    その当時
    現物を見せることが出来なかったのですが

    そのお店の社長は
    「有田さんが言うのだったら・・・」と
    現物もみる事なく信用して
    傘メーカーから仕入れてくれたのです。

    まさに絆が信用を生んだのだと思いました。

    このような事例は、他にもあります。

    仲間との信頼関係が結ばれたおかげで

    私の知り合いからの紹介で
    この学生服メーカーと新規取引が
    結ばれたという事もありました。
     
    その他にも
    愛知県の知り合いの自転車屋さんに
    カッパの紹介をしたら

    取り引きが、今でも続いていると
    おっしゃっています。

    多くの方と知り合い
    絆関係や信頼関係が結ばれると

    面白い出来事に遭遇することが
    出来ると思った瞬間でした。

    第7章

    大変とは、自分が大きく変われるチャンス
    ― 仲間が教えてくれた、本当の商い ―

    この一連の経験を通して
    私の商売に対する考え方は
    大きく変わりました。

    それまでは、どうしても
    自分一人の力やアイデアで
    何とかしようとしていました。

    しかし、あるとき気づいたのです。

    自分一人の力にはどうしても限界がある。

    けれど仲間と力を合わせることで、
    そこに知恵が生まれ
    新しいアイデアが生まれてくる。

    つまり
    仲間と協力し合うことの大切さを
    身をもって学んだのです。

    そしてもう一つ
    大きな気づきがありました。

    それは
    売上だけを追いかけるのではなく
    「自分には何ができるか」を
    考えることの大切さです。

    誰かの役に立つことを考え
    できることを一つずつ行っていく。

    すると不思議なことに
    その積み重ねが、最終的には
    売上につながっていく。
     
    そんな経験を
    私は何度も重ねてきました。

    もちろん、こうした出来事は、
    そう頻繁に起こるものではありません。

    しかし、今の私は
    以前とは違う考え方を
    持つようになりました。

    それは
    大変なことが起こったとき、
    それは不幸ではなく
    自分が大きく変われるチャンスかもしれない。

    ということです。

    コロナ禍という
    誰も経験したことのない出来事の中で

    私は多くの仲間と出会い
    支えられ学び続けてきました。

    そして今、心から思っています。
    人は一人では生きていけない。

    だからこそ、仲間と協力し
    支え合いながら、前に進んでいく。

    それこそが、本当の商いの姿なのだと。

    そしてこれからも私は
    どんな困難に出会ったとしても、
    こう考えたいと思っています。

    大変とは、
    自分が大きく変われるチャンス 
    だと

    これからの商売
    ― 別次元のコラボを目指して ―
    コロナ禍を経験したことで
    社会の中には
    大きな変化が生まれました。

    その一つが
    リモートワークの定着です。

    以前は、人と会うためには
    同じ場所に集まることが当たり前でした。

    しかし今では
    離れた場所にいても、画面を通して
    顔を見ながら話し合うことが
    できるようになりました。

    私自身も、全国の仲間と
    Zoomを使って情報交換をするようになり

    距離の壁は思っていたほど
    大きなものではないと実感しました。

    そしてもう一つ
    社会の中に定着したことがあります。

    それは、災害への備えや心構えです。

    コロナという出来事を通して
    「もしもの時にどうするか」を
    考える習慣が、多くの方の中に
    生まれたのではないかと感じています。

    私自身も、この経験を通して

    一人で抱え込まず
    仲間と支え合うことの
    大切さを強く実感しました。

    だからこそ、これから私が
    挑戦していきたいことがあります。

    それは
    別次元のコラボです。
    せっかくリモートワークが定着した今

    コラボレーションの形も
    新しくなっていくのではないかと
    感じています。

    たとえば
    遠く離れた地域の商人同士が、
    リモートで知恵を出し合い
    一緒に企画を作る。

    あるいは、地域の枠を越えて
    全国の仲間と協力しながら
    新しい取り組みを生み出していく。

    そんなリモートコラボと
    いう分野があっても、
    面白いのではないかと考えています。

    そして私は
    これから商売を続けていく若い方々に、
    ぜひ伝えたいことがあります。

    それは
    困った時や大変な時こそ
    一人で悩まないこと。

    ということです。

    どうしても人は
    問題が起きたとき自分一人で
    何とかしようとしてしまいがちです。

    しかし、自分の知り合いに
    思い切って相談してみることで

    そこから
    大きく展開が変わることがあります。

    私自身が、何度も経験してきたことです。

    そのための下準備として、今のうちから
    仲間を多く作っておくことが
    とても大切だと思っています。

    そしてもう一つ
    忘れてはならないことがあります。

    それは
    自分の強みと弱みをきちんと
    把握しておくこと。
    です。

    自分の得意なことが分かっていれば
    誰かの役に立つ場面が見えてきます。

    また、自分の苦手なことが分かっていれば、
    助けてくれる仲間を見つけることができます。

    そうすることで
    目の前にあるコラボのチャンスを
    しっかり生かすことができるのです。

    私は、これからも
    アンテナを常に張りながら

    仲間とともに
    歩んでいきたいと思っています。

    なぜなら
    コラボのチャンスは
    実は身の回りにいくらでもあるからです。

    最後に

    コロナ禍を経て感じたお客様の変化
    ― つながりの価値に気づいた社会 ―
    コロナ禍を経験したことで
    お客様の意識にも
    少しずつ変化が見られるようになりました。

    まず感じたのは、
    多くの方が私たちの行動に
    驚いていたということです。

    これまでの取り組みは
    どちらかと言えば

    社会貢献の意味合いが強かったため
    直接的な感謝の言葉をいただくことは
    それほど多くありませんでした。

    しかし
    コロナ禍の中で
    活動を続けていたことに対して、
    「こんな時期によく頑張っていますね。」

    といった言葉を
    かけていただくことが増えていきました。

    多くの方が自粛している中で、
    行動を続けている人は
    少ないと感じていたのかもしれません。

    また
    防災に対する意識も
    大きく変わったように思います。

    コロナが流行し始めたころ、
    一番困ったのがマスク不足でした。

    それまでは
    一枚十円から二十円ほどで
    購入できていたものが
    百円を出しても手に入らなくなりました。

    その経験を通して、私は強く感じました。

    平時の備えがいかに大切か
    ということです。

    その後、超大型台風が
    上陸するかもしれないと報道されたときにも

    大型店舗では防災グッズや防災シートが
    次々と売り切れました。

    値段の問題だけではありません。
    そもそも物がなくなってしまうのです。

    だからこそ
    普段から準備しておくことが
    大切なのだと身をもって学びました。

    そして、もう一つ
    強く感じたことがあります。

    それは
    人とのつながりの大切さです。

    防災も、コラボも、
    すべてに共通していることは、
    人と人とのつながりです。

    自分一人のアイデアや実践だけでは、
    大きなことはできません。

    しかし
    人とのつながりを持っていれば
    困ったときに大きな力を
    発揮することができます。

    このことを
    私はコロナ禍の経験を通して
    改めて実感しました。

    私はこれまで、多くの仲間と出会い、
    支えられながら歩んできました。
    一人ではできないことも

    仲間と力を合わせれば、実現できることを
    何度も経験してきました。

    これからも
    どんな困難が訪れたとしても

    人とのつながりを大切にしながら
    前を向いて歩んでいきたいと思っています。

    なぜなら
    大変とは自分自身が大きく変われるチャンスだからです。

    #創作大賞2026 #ビジネス部門


     
     
     

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