
第十九章 山上のウタリ
いつもの生活
次の日、ウタリは、今まで通りに居間の温かい日差しの中で膝を抱えるようにして本を読んでいた。目を輝かせながらページをめくるたびに表情を変え、楽しそうに読んでいる姿に、中里は深く安堵した。
「ウタリ、何か食べるか?」中里は柔らかい笑顔で、少し身をかがめて優しく声をかけた。
「蕎麦が良い」ウタリは本から顔を上げ、珍しく口元を緩めてニッコリと目元に皺を寄せて笑った。
「それじゃ、蕎麦を茹でるか」中里も目尻に笑みを浮かべながら応えた。
ウタリは茹で上がった蕎麦をずるずると音を立ててすするように、目を細めて頬を緩め、美味しそうに食べる。時折満足そうにうなずきながら食べる元気なウタリを見て、中里は微笑んだ。
数日後、中里は再び杉の木を訪れた。今度は大きな石を両手で抱え、額に汗を滲ませながら慎重に運び、杉の木の周りに円を描くように並べて固定し、土が流れないようにした。大きな石を外側にして、小さな石を内側に丁寧に組み合わせて、時折立ち上がり腰をさすりながら補強をした。その上に黒土を盛り、はみ出ていた杉の木の根っこを丁寧に土で覆い隠した。根っこの間にあった石は、まるで宝物を扱うかのように優しく土で埋めた。作業を終えた中里の顔には、安堵の表情が広がっていた。
おわり