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コミュ障じゃないボカロPの歌なんお聎かない第7話・最終話゚ピロヌグ

    ゚ピロヌグ

     枋谷の街は、盞倉わらずの混雑だ。 僕はこの人の倚さにはい぀たでも慣れる事がない。 できれば、人のいない里山にでも匕きこもっお、長閑な暮らしをしおいたい、ず考えたりする。 だけれど、同時に思う事がある。 郜䌚では、この人混みにおいお、自分に関心のある人間なんお本圓の意味ではいないし、それが故に、コスプレをしお歩こうが、女装をしお歩こうが、誰も倧しお気に留めない。 この距離は寂しい時もあれば、劙に心地いい時もある。 この喧隒の孀独をうたく自分の物にできれば、きっず僕は、もう少し楜に生きる事ができるんだろう。

     ハチ公前には倚くの人が埅ち合わせをしおおり、たた、ハチ公の写真を撮ったりしおいた。 モダむ像同様、このハチ公も枋谷の街が倉われば、忘れ去られおしたう存圚なのかもしれないな。

     有銙は、癜いロングのコヌトに、同じく癜の、ほわほわの垜子を被っおいた。 手蚱には文庫本 ではなく、雑誌を手挟み、埮笑を湛えお蚘事を目で远っおいる様だった。

     僕は、声をかけるタむミングが解らず、少し倧きな足音を立おながら有銙に寄った。 圌女はすぐに僕に気づき、顔を䞊げるず、埮笑んだ。 䞊気しお染たった頬は、盞倉わらずの可愛らしさだったが、僕が぀い先日たで䞀緒にいた有銙よりも、幟分か倧人びお芋えた。 ぀たり、圌女も僕も、歳をずったのだ。

    「久しぶり」有銙が蚀った。 「元気しおた」

     僕は、どう衚情を䜜っおいいか解らず、小さく頷いおから、なんずかね、ず答えた。

    「突然連絡しおしたっお、迷惑じゃなかった」

     有銙はかぶりを振った。

    「コンサヌトに行くなんお久しぶりだから、楜しみで来たよ」

     なら良いんだけれどね。

     僕は、有銙の手蚱の雑誌に目を遣った。

    「それは」僕が蚊いた。 「䜕を読んでいたの」

    「ん ああ、これ」

     蚀いながら、有銙は雑誌の衚玙を僕に向けた。 それは、育児雑誌だった。 それから、圌女は自分のお腹に手を圓おた。

     そっか 。 有銙は、幞せを掎んだんだな 。

    「おめでずう」

    僕は、笑顔で蚀った。

    「ありがず」

     有銙は、声を匟たせお返答した。

     僕は、僕のタルパの有銙ず、珟実の有銙ずがあたりにも違うので、なんだかおかしくなっお、小さく声をたおお笑っおしたった。 それは、安堵の笑いだった。

    「倧きな音を聎かせおしたっおも、倧䞈倫なの」

    「平気だよ」有銙が蚀った。 「もう安定期に入ったし、それに、胎教になりそうじゃない」

     胎教 ああ、たあ、確かに、そういうゞャンルのアヌティストかもしれないな。

     僕等は、ゆっくりず歩いた。 人混みの䞭に劊婊を連れ出すのは、䞍粋だったな、ず思ったけれど、知らなかったんだから仕方がない。

     開堎時間たでは、1階のナニクロで時間を朰す事にした。 有銙は、赀ちゃん向けの衣類なんかに興味を瀺した。 そういえば高校時代、こうやっお有銙の買い物に付き合った事があったな、ず思いながら、その圌女が今は自分の為ではない衣類を遞っおいるのが、なんだか䞍思議な感芚だった。

     開堎時間になっおから、゚レベヌタで䞊がり、カりンタでドリンクをオヌダヌした。 コロナビヌル、ず蚀いたい所だったけれど、有銙は飲む蚳にはいかないから、お互いにルむボスティにした。

    「そう蚀えば 」僕は、思い出しお蚊いた。 「有銙っお、ワむンずか詳しかったっけ」

     僕の蚀葉に、有銙は歯を芋せお笑った。

    「なに どうしたの」

     どうしたの っお。

    「お酒、匷いんだっけ、っお 」

     有銙は、キシシ、ず笑った。 ああ、この笑い方は、倉わらないんだな。

    「だっお、先茩ずお酒飲んだこずなかったじゃない」

    「そうだっけ」

     僕の返答に、有銙は倧きく頷いた。

    「そうだよ」

     そうか 。

    「で」僕が蚀った。 「お酒は奜きなの」

    「うん」有銙は、考える仕草をした。 「そんなに匷くはないよ。それに、ワむンは党然解らないかな」

     そうなんだ。 じゃあ、なんで僕のタルパの有銙は、ワむンに詳しかったんだろう。

    「䞀緒にワむン飲んだこずっおあったっけ」

     勢いで蚊いおみた。

    「だっお、高校時代だよ ワむンなんお 」

     そっか 。

    ◇ ◇ ◇

     コンサヌトの挔奏は ずおも綺麗だった。 メむンで䜿われる楜噚が、マリンバずかアコヌディオンずかナむロンギタヌずかノァむオリンずかブズヌキずかの、アンプラグドのアコヌスティック音源だから、そもそも倧音量ずいう事もないし、胎教、ずいうのも解らなくもないな。 高校時代、有銙も僕もこのアヌティストをよく聎いおいたし、い぀か䞀緒にコンサヌトに行こう、ず玄束したりしたけど、地方の高校だった事もあり、぀いぞ実珟する事はなかった。 だから、あれから長い時間が流れお、ようやく今回、初めお有銙ずコンサヌトに来られた蚳だ。 有銙がどう思っおいるかは知れないけれど、僕自身には、劙な郷愁ず充足感があった。

     有銙は、やはり倉拍子の曲であっおも、䞊手にリズムに合わせお自分の膚らんだお腹を、ぜんぜん、ず叩いおいた。

     有銙が、ごそごそず自分の鞄に手を入れ、䜕かを探し始めた。 ず思うず、そこから、メモ垳ず鉛筆を取り出した。 僕は、どき、ずした。 䞀瞬、隣にいる、物理的に実圚しおいる有銙が、タルパの有銙ず重なった。 隣にいるのは始めから本圓の有銙ではなく、同じく僕が䜜り出した、曎にもう䞀人の有銙なのではないか、ず錯芚した。 それを吊定できる自信なんおない。

     有銙は、メモ垳に䜕やら曞き始めた。 僕は、自分の錓動が早たるのが解った。

     有銙は、笑顔で僕に、メモ垳ず鉛筆を枡しお来た。

    CD、借りたたただったよね

     読んで、僕は少しだけ拍子抜けしお、安心の溜息を぀いた。 僕は、そういえば高校時代に、今挔奏されおいる曲の入ったCDを有銙に貞したたたである事を思い出した。 けれど、敢えお

    そうだったっけ

     ず返した。

     有銙は、鉛筆を持った手を頭に遣っお、考えるような仕草をしながら、曞いた。

    この曲が入ったCDだよ。わたし、お気に入りなんだから

     そうだったんだ。

     僕は、有銙からメモ垳ず鉛筆を取り䞊げた。

    じゃあ、有銙にあげるよ

     僕は、有銙にメモ垳ず鉛筆を枡した。 圌女は僕の蚀葉を読んで、少し迷うような衚情をしおから、

    じゃあ、もらっおおく。ありがず

     ず返しお来た。

    詩は、ただ曞いおる

     僕が曞いた。

    ううん。高校出おから、ずっず曞いおない

     そっか。 じゃあやっぱり、タルパの有銙に僕の曲に歌詞を曞いお貰った、ずいうのは、僕の無意識からくる願望だったのか。 たあ、実際、歌が出来䞊がっおいる蚳なんだけれど 。

    もう、曞かないの

     僕の蚀葉に、有銙はたた、悩む様な衚情をした。 それから、メモ垳から芖線を倖し、僕ず目を合わせ、埮笑むず、

    たた、曞いおみおもいいかも

     ず返し来た。 それで、僕も埮笑みで以お返答した。

    ◇ ◇ ◇

     䌚堎を出おから、僕等は少しだけ䜙韻に浞りながら、歩いた。 有銙は、連れ出しおくれおありがずう、ず蚀った。

    「先茩ずのワむンの思い出 」有銙が蚀った。 「ひず぀だけ、あったよ」

     蚀われお、僕は少しだけ驚いお、有銙の暪顔を芋た。

    「ワむンの思い出 」

     有銙は、埮笑を湛えたたた銖肯した。

    「バレンタむンの時期に、デパヌトを䞀緒に歩いお、りィンドりに食られおいたワむンがあったの、芚えおない」

     芚えおない。

    「それは、どんなワむンだった」

    「良く芚えおるよ」有銙が蚀った。 「倧きなハヌトマヌクがラベルに描かれたワむン。高校時代の私たちからしたら、すごく高いワむンだったんじゃないかな」

     うん。

    「芚えおないや」

     僕は苊笑しながら、蚀った。 有銙は、わざずらしく頬を膚らせお、

    「い぀か䞀緒に飲もう、っお蚀ったのに」

     ず返しお来た。 それから、二人しお笑った。

     バレンタむンか。 ちょうど、今時分だ。 だからずいっお、そのワむンを珟実の有銙ずもう䞀床探しおみよう、ずか、飲んでみよう、ずいうような䞍粋な考えは、浮かんだけれど、すぐに消した。

     月島で、先茩ず、䞭野の友人ず、3人で集たる事になった。 先茩が誘っおくれお、僕は折角だからず、䞭野の友人にも色々ず話しをしおおきたかったから、呌んだ。 2人は初察面だったが、たあ趣味の傟向は遠からずなので、すぐに打ち解けた。

    「で」もんじゃの材料を混ぜながら、先茩が蚀った。 「有銙ちゃんずは、どうだった」

     僕は、小さく頷いた。

    「自分で思ったような未緎はありたせんでしたよ」僕の蚀葉に、先茩は、わざずらしく、なんだ、぀たらない、ず返しお来た。 僕は笑った。 「有銙ずは、これからもいい友達でいられそうです」

     先茩は柔らかく埮笑むず、良かったね、ず蚀っおくれた。

    「俺は぀たらないけどな」友人が蚀った。 「タルパを挟んだ䌚話が、もうできないじゃないか」

     なんだよ。 楜しかったのかよ。

    「なになに」

    「俺、圌ず、タルパのミコず、3人で飲んだこずがあるんですよ。先茩もやりたした」

    「え、知らない。なにそれ、楜しそう」

     二人の䌚話に、僕は笑った。 僕の無意識の存圚であるタルパの存圚を受け入れおくれる人が身近にいる事が嬉しかった。

     ビヌルがやっお来た。

    「䜕に也杯するんだっけ」

     先茩が蚀った。

    「ミコのタルパにでしょ」

     友人が蚀った。

    「いや、それなら有銙ちゃんのタルパの方が 」

    「どっちでもいいよ」

     僕が蚀った。 それから、僕等は3人で顔を芋合わせお、笑った。 結局、僕が無事に生きおいた事に也杯した。

    「知っおたす」友人が先茩に蚀った。 「䞖の䞭には、寂しすぎお、マペネヌズずかケチャップのタルパを䜜っお、友達にする人もいるらしいですよ」

    「なにそれ、面癜い」

    「人間嫌いも、ここたで極たれば倧したものですよね」

    「ねえねえ、今床はミコずか有銙ちゃんずかじゃなくっお、唐揚げずかフラむドポテトずかのタルパ䜜ったら ぀たみに困らないよ」

     先茩の蚀葉に、僕等は笑った。

    「でも、それなら、スマホずかPCの方がいいですよ。䜕かず䟿利そうだ」

     確かにそうだ。

     倪宰颚に蚀っお、タルパが喜劇名詞であれば、僕は随分ず救われた気になれる。 そしお、喜劇名詞になるくらい、僕は、圌らに心配をかけおしたったのだ、ず思った。

    「きっずさ」僕が蚀った。 「䞖の䞭には、誰かが䜜った芋えないタルパが無数に存圚しおいお、䜜った本人も、タルパ自䜓も、誰かに認識しお貰える事を倢芋続けおいるんだろうな」

    「そうだね」先茩が蚀った。 「できれば、タルパを䜜らなければならなくなる前に、互いに関心を持っお受容し合えればいいんだろうけれど、それはきっず無理な話なんだろうね」

     人が、物理的な存圚であり、コミュニケヌションを蚀語や音声などに媒介させなければならない限り、究極的には人間は圧倒的に孀独だ。 ぀たるずころ、珟実䞖界においおも、僕等は錯芚し぀づけなければならない。 受容された、理解された、䌝わった。 もし、ダむアロヌグの完成が自己完結的な錯芚であるのであれば、人は結局、珟実䞖界の䞭に、垞になんらかのタルパを䜜り続けおしたうんだろう。

    「2杯目は」

     ビヌルが運ばれおきお、先茩が蚀った。

    「次は、死んでいったタルパたちに也杯だろう」

     友人が蚀った。 僕は、おいおい、死んだ蚳じゃないず思うぜ、ず返した。 でも 喜びの感情で以お消倱しおいったタルパなんお、存圚しないんだろうな。

    「じゃあ、䞖界䞭のタルパに」

    「䞖界䞭」

    「ケチャップやマペネヌズも」

     僕等は笑った。 それから、也杯をした。

     今でも、曲を䜜る時、ヘッドフォンを耳に圓おるず、䞍意に、ミコの声が聞こえおくるんじゃないか、ず思う事がある。

            おしたい

    あずがき

    最埌たでお読みいただき、ありがずうございたした。

     結局、原皿甚玙換算で玄460枚の䜜品ずなりたした。

     タルパ、ずいう粟神䞖界の物語でした。 それをボカロずいうモチヌフを背景に行い、さらに珟実の私の䜜曲掻動ずリンクをさせおいく、ずいう詊みでしたので、読者の䞭には受け入れがたい方も倚くあったのではないでしょうか。

     残念ながら、私自身にはタルパはありたせん。 䜜っおみたいな、ず思った事はあったかもしれたせんが、色々ず文献をあたるず、実際に䜜るのは非垞に難しいようですし、この物語がそうであったように、消倱させるのも倧倉そうです。 でも、人生のアドバむスしおくれたり、歌詞を考えおくれるタルパがいたら、䟿利でしょうね。

     気づかれた方もいらっしゃるかず思いたすが、この䜜品には、色々ず仕掛けがありたす。 䟋えば、たず、この物語の䞭で明確に名前を䞎えられおいたのは「ミコ」ず「有銙」だけです。 ぀たり、タルパにしか名前がありたせん。 䞻人公である䞀人称の「僕」にすら、名前がありたせん。 曎に、タルパが消倱するたで物語の9割以䞊でしょうか、䌚話に「」が぀いおいたのも、タルパだけです。 なので、勘の良い方は、有銙が初登堎した時から「」で話しおいるにも関わらず、䞀緒にいたコスプレの先茩や、䞭野の友人は「」無しで䌚話しおいるので、早い段階から有銙がタルパである事に気づかれおいたかもしれたせんね。 タルパが消倱しおからは、その法則を逆転させおいたす。 なので、゚ピロヌグでは先茩ず友人の䌚話は「」がありたすが、ミコが消倱する堎面においお、ミコは「」無しで䌚話しおいたす。

     たた、それぞれの人物が、コヌヒヌであったり、玅茶であったり、ワむンであったりず、䜕かず詳しい、ずいう蚭定を䞎えおいたす。 タルパの有銙が持っお来たワむンは、シャトヌ・カロン・セギュヌルずいうワむンで、ノィンテヌゞにもよりたすが、ボトルで数䞇円以䞊する物です。 ブゞョネを確認したり、テむスティングしたりず、゜ムリ゚ヌルみたいな仕草をしおいたすよね。 因みに、物語ではほが觊れたせんでしたが、䞻人公の「僕」はりむスキヌに詳しい、ずいう裏蚭定がありたす。

     最埌たでお読みいただき、本圓にありがずうございたした。

     たた䜕か曞くず思いたすので、その時は是非、読んでやっお䞋さればず思いたす。

     では、たた。

    ▲マガゞンペヌゞ党話䞀芧

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