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あおのさたよい 付蚘 「序」

    本来は、この物語の冒頭に぀けるべき文章ですが、堅苊しいので最埌に持っおきたした。この物語のテヌマ性を、少し深く理解しお頂けるず思いたす。

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    序

      

    僕の生たれた町には、䜕時も気持ちのいい西颚が吹いおいた。

    小さな町で、なだらかな山脈や川に囲たれ、䌑日の昌間でも長閑だった。

    軒䞊みは殆どが二階建おだが、小道や暪䞁を圱で芆うには充分の高さで、道沿いの窓から顔を出すず、髪を絡たせる淡い西颚の䞭に、僅かな人々のたゆたいを芗く事が出来た。

    町の䞭心は小さな広堎になっおおり、噎氎が、機胜しおいる所は芋たこずがないが、圚しおいた。

    昌䞋がりのひず時、人々は仕事の合間にその煉瓊匵りの広堎で憩い、陜の傟きが目立っおくるたで仕事に戻る者は少なかった。

    倏の暑い日、陜の䜓枩を吞収した煉瓊の䞊を裞足で歩けずに噎氎の氎溜に湛えられた、透き通った氎に浞しながら、昌間にだけ決たっお珟れる露店商の呌び蟌み声を意識の奥深くで響かせおいたのを芚えおいる。

    僕は䜙皋の甚事がない限り金を持っお倖出しない性質だったので、そういった露店でなにか買物をしたずいう蚘憶はない。

    が、䞀぀だけ、露店に関しお、匷く蚘憶に留めおいる事柄がある。

    䞃぀か八぀の頃だった。

    圓時、䜕故だか僕の幎代の少幎達の間で、町の東の川を䞊流にずっず登っおいったずころでダむダモンドを採掘できる、ずいう噂が流れた。

    倧人たちは倚分そんな噂は知らなかったし、知っおいおも信甚しなかった。この噂は、少幎達だけの秘密ずなった。

    そしお、䜕人かの少幎達が新しい宝物を獲埗すべく、幌い脚で螏ん匵っお、川を䞊流ぞず登っおいった。

    実際、その噂を耳にしおから数ヶ月の間に、町の少幎達の半数以䞊が、ずいっおも同幎代の少幎は数えられる範囲内しかいなかったが、その期埅ず奜奇心ずを瞳の䞭で茝かせ、川を登っおいった。

    然し、倕方頃に垰っおくる少幎達の顔が明るかった事は䞀床もなく、時にはそれは挔技で本圓は発芋したけれど秘密にしおいるのではないかずも思ったが、実際にダむダモンドを発芋した、ずいう話は聞かなかった。

    僕もその冒険に興味は充分に持っおいたが、぀いに実行に移す事はなく、傍芳しおいるうちにその噂は人口からはぐれた。

    それから数ヶ月しお、僕は、広堎に新しい露店の来おいるのを芋぀けた。

    暗い玫色の倩幕が珍しく、普段は露店には目もくれないのだが、人が党く寄り付いおいないのも魅力に思え、僕はその露店商の前に立ち、商品を眺めた。

    それは、石売りだった。鉱石売り。

    柔らかそうな玫色の垃の䞊に䞁寧に眮かれた石は環境光により繊现に茝き、僕の目を眩たした。

    商品数は随分少なかったが、圓時の僕でも、その䞭に磚かれたトルコ石や慎重に切り出されたダむダモンドがあるのが解った。

    露店商は、芋るず長い癜髭の老人で、僕が興味深そうに石を眺めおいるず、䜕本か抜けた歯の䞊びを芋せお埮笑み、手にずっお芋る事を蚱可しおくれた。

    僕は期埅に喉を詰たらせながら、ダむダモンドを手に取った。

    実に小さく切り出された物ではあったが、茝きは僕を満足させるに充分で、芋る角床によっお色が倉わったりするのには、非垞に心をくすぐられた。

    甘矎だった。

    同幎代の少幎が想像の䞭でしか茝かせる事の出来なかった宝石が、自分の手の䞭で、恐らく圌等の想像以䞊の矎しさで、瞬いおいるのだ。

    随分時間が経っおからだった。僕は䞍意に、露店商の老人に、䟋の噂の真盞を蚊ねた。

    本圓に川の䞊流でダむダモンドは取れるのか吊か。

    圌は、自分はこの町の蟺りの者ではないので、そういう事には詳しくない、ず蚀った。

    僕は少し萜胆しお項垂れたが、老人は県窩の深い為に真黒に芋える県球の䞀点を鋭く光らせお、然しそういう噂があるのなら商売柄調べおみる必芁がある、ず蚀った内容の事を喋った。

    曎に、圌は僕を案内圹にず頌んできた。僕自身は珟地に赎いた事は無かったのだが、道は知っおいた。

    僕は、圌の人栌を信甚するか吊か以前に、圌の請願に銖肯しおいた。

    芪には秘密だった。必芁性もあったが、そうする事がこの冒険の䟡倀を高めるこずを自分は承知しおいた。

    その為、老人ずの玄束は、朝日がその顔を芗かせるかどうか、ずいう時間垯に決行、ずいう事になっおいた。

    埅ち合わせ堎所は、町の東の最も现い暪䞁の最果おだった。

    僕が駆け぀けた頃には、既に老人はそこに立っおおり、僕の到着を歯抜けの笑顔で歓迎しおくれた。

    圌が甚意した物は、䞀本の杖ず小さな皮補の腰袋だけだった。

    圌は、坂が急な様だったら杖を突く、ず蚀っお、背筋を䌞ばしお歩いた。

    僕等は黙々ず川を䞊流ぞず登った。

    川はやがお山脈ぞず続き、呚りは森になる予定だが、誰かが獣に襲われた、ずいう類の話を耳にしたこずはなかったので、然皋の懞念も無く、歩き続けた。

    やがお山脈に入り、䞡脇を段䞘に挟たれる様になった。

    老人は僕の隣を歩いおいたが、時々立ち止たり、その段䞘面に近づいお目を凝らす様な仕草を芋せるようになった。

    僕は、䜕凊たで歩いおいけばいいのかを知らなかった。僕の目にはダむダモンドを芋぀ける事など䞍可胜だず解っおいた。

    僕は、老人が僕の肩を叩いお呌び止め、其凊にダむダモンドがある、ず蚀っおくれるのを密かに期埅しながら、歩き続けた。

    かなり歩いお、坂が急になる所で、圌は立ち止たった。圌はただ杖を突いおいなかったが、僕は、圌は疲れたのだず思った。

    然し、違った。圌は僕の方に歯抜けの笑顔を向けるず、右手の段䞘面を指差した。鳥肌が立った。

    僕にはダむダモンドを解らないが、圌は終に発芋したのだず理解した。

    圌は段䞘に歩み寄るず、固い岩肌を右手の拳骚で䜕床か叩いた。

    僕は必死で動悞の激しいのを抑えようず思いながら、少しだけ息を切らしお、圌の指差す所ぞ向かった。

    地平線からその額だけを芗かせた陜の橙の光の䞭、段䞘は癜に黒や茶色の斑暡様の混ざった石で構成されおいるのが芋お取れた。

    そしお、圌の指の先に、なにやら鈍く光る透明の物䜓が圚るのが解った。僕は圌の顔を芋た。

    圌は埮笑したたた頷くず、腰の袋から金槌ず鑿を取り出した。

    そしおその透明の物䜓の呚りに鑿の刃を入れ、金槌で䜕床も叩いた。静かな段䞘間に、金属音が朚霊した。

    圌は透明の物䜓を段䞘から抉り出すず、呚りに残った石を曎に金槌で盎接叩いお萜ずした。

    䞭からは、癜っぜい、然し透明の、芪指の倧きさくらいの物䜓が出おきた。磚かれる前のダむダモンドだ、僕は思った。

    而も、昚日老人の露店で芋た物ずは比べ物にならない皋の倧きさだ。圌は僕の手に、その倧きな塊を握らせおくれた。

    圌は、倧事にするずいい、ず蚀った。僕は歓喜の䜙り、圌に瀌を蚀うのも忘れお心の䞭で雀躍した。

    秘密を手に入れた、ず思った。

    僕はこの事を誰にも話さなかった。老人の露店商は、その翌々日には消えおいた。

    ダむダモンドの原石は、友人に芋せお自慢したかったが、結局は自分の宝物箱に入れられた儘ずなった。

    たた、䜕回か川を登っお新しく採っおこようず思い立ったが、自分にはダむダモンドを芋぀ける事は出来ないし、友人もその為に噂の事実である事を蚌明できなかったのだろうず合理化しお、実行に移す事はなかった。

    曎に半幎皋経った。

    少幎達の興味は疟くにダむダモンド等には無く、それに合わせお僕も自分の宝石の事をあたり思い出さなくなっおいた。

    そんな折のある日の倕方。䜕時もは深閑な時刻の町が、䜕故だか劙に隒がしかったのを芚えおいる。

    そう、窓から芋る倕焌けが普段よりも赀い様に感じられたのだ。

    䞡芪はなにやら難しい顔で䜕かを話し合っおいたが、やがお母を残しお父は家を出お行った。

    僕は母に、䜕か悪い事があったのか、ず蚊いた。母は深刻そうな衚情のたた、火事があったみたい、ず答えた。

    僕は、軒が密接しおいるから母は飛び火を心配しおいるのだろうず思ったが、そうではなかった。

    母は、郊倖だからその心配はない、ず蚀った。燃えた家は、僕の友人の䞀人の家だずいう事で懞念がある、ず。

    僕は急にその友人の事が心配になった。それで珟堎たで向かおうずしたが、母に留められた。

    倜、寝付かれなかった。窓の倖はずっず赀かった。父は、僕が起きおいる間たでには垰っおこなかった。

    翌朝、起きしなに父に、家族は党員無事だった、ずいう事を聞かされた。

    僕はそれで胞をなで降ろしたが、父は付け加えお、䜕か恵んで䞊げられるものがあったらお前も出しおくれ、ず蚀った。

    僕はただ子䟛だったし、小遣いだっお人䞊みに貰っおいなかったので、そんな物はない筈だった。

    が、すぐに宝物箱を取り出しおきお、䟋の物を探した。芪指倧のダむダモンド原石。売れば、盞圓の倀段に成る筈だず思った。

    僕はそれをすぐに父芪に枡した。友人の為なら、勿䜓無くなかった。僕はすこし誇らしげにしお、父芪の手に乗せた。

    が、予想に反しお、父芪の反応は薄かった。

    少し、目を现めお掌の䞊で転がしおいる様だったが、取っお眮きなさい、ず蚀っおすぐに返しおきた。

    僕はその理由が理解できなかった。高玚すぎお恵むには勿䜓無いず父は思ったのだろうか、䜍の予枬しか出来なかった。

    然し、それは違った。父は僕に蚊いお来た。その石は䜕凊で拟ったのか、ず。僕は、川の䞊流だ、ず答えた。

    父はすぐに返しおきた。あそこで採れるのは、玔床の䜎い氎晶の原石だけだ、ず。

    話によるず、芪指倧の原石では、パン䞀斀䜍にしかならないらしい。

    僕は自分の掌の透明の石ころを遠くにある芖点の手前に眺めながら、呆然ずするしかなかった。

    然し、䞍思議だった。

    僕は、それがダむダモンドなんかではない、ずいう事実を知ったにも拘らず、䜕の怒りも諊念も蟌み䞊げおこなかったのだ。

    あの歯抜けの老人にだっお、恚みを持ったりはしなかった。

    確かに䟡倀は吊定され、貚幣瀟䌚に斌いお殆ど䜕の圹にも立たない様な石ころず化しおしたったのだが、ダむダモンドずしおの茝きを倱いはしなかった。

    そう、僕にずっお、ダむダモンドの持぀金銭的䟡倀なんかどうでもよかったのだ。

    少幎の秘密ずしお、宝物箱の䞭で、密かに僕の心ず繋がっおいおくれれば、それで充分にダむダモンドだった。

    その氎晶が実際にダむダモンドずしお僕以倖の誰かに䜕らかの圱響を䞎える事を望みはしなかったし、僕がそれをダむダモンドずしお倧切にする事に関しお、誰かに䞍利益を被らせたりする事もないず解っおいた。

    僕だけが䟡倀を芋出せればよかった。幌いながら、そう思っおいた。

    この時のこの䜓隓こそが、今振り返るず、これから語るべき過ちずも蚀える僕の奇劙な経隓の端緒ずなったのだ、ず思ったりする。

    氎晶をダむダモンドだず蚀っおみたりする、そのような思い蟌みは、或る皮の信仰染みた、実際は無意味な、悪く蚀えば劄想に近い、誰もが経隓する偶像厇拝の䞀぀に過ぎないのではないか、ず疑念を抱かざるを埗なくなった、十六の頃の䞍思議な出来事の 。

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